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▼ 根は優しい人

※初.リヴァイ兵長夢



只今、壁外調査中。幸いにもまだ一体も巨人との遭遇は見られない。今回の任務も恐らく無意味に終わってしまうんだろうと思いながら私はまた、馬を走らせる。

巨人に合わない壁外は、今まであったことが夢見たいで。いや、夢と思いたくて。そんなに、平凡。平和。
此処からなら海にだって行けるかな?なんて遠くを眺めてみる。

「おい、何考えてんだ?任務に集中しろ。」

と、空想に浸ってた私を否が応でも引きずり戻す低い声がした。主は人類最強の男、リヴァイ兵長。この人に逆らったら削がれる。肉を削がれる。

私は、今までの空想、(妄想じゃなくて空想)を止めて少しピンッとした声で「すいませんでした!」と謝った。

「ったく、最近は奇行種が出てきてんだ。ちったあ、気をつけろ。」
「はい」
「分かったなら良いんだよ。……まぁ…それがお前の良いところでもあるが、今はするな。死んだら元も子もねぇからな。絶対、皆で生きて帰るぞ。」
「え…ぁ…ありがとうございます!」
「褒めたわけじゃねぇぞ。」

相変わらず兵長は真っ直ぐ向いたまま最新の注意を払っている。私は、そんな兵長の後ろ姿を見ていた。兵長は、常に皆の事を見ていて、知っている。不器用だけど、優しい。



***



地面に座り込んだ私の目の前に居るのは巨人。逃げなくてはならない、と本能は警告音をならしているのに足は一方に動かない。第一、逃げることも出来ない。既に私のガスは尽きていた。仲間も皆、皆、殺された。兵長途中別行動になったため何処に居るか分からなくて。
絶体絶命、万事休す。

巨人の手が伸びてきて私を掴んだ。あぁ、巨人に食べられて死ぬんだね。調査兵団に入った時点で覚悟してたけどやっぱり嫌だな。体バラバラとか女の子として嫌だから、一飲みに食べてよ。

なんて既に死に際考えてる私は何なんだろう。体がべきべきと鳴る。巨人の口まで―――30cm―20cm――5cm―…
もう、死ぬって思った瞬間、

「絶対、死ぬんじゃねぇって言っただろうが。」
「え…へいちょ…」

兵長?そう言い終わる前に体が巨人の手から離れて落下を始める。今から受け身を取るのは不可能でも無いかもしれないが、私の体は動かなかった。それもその筈、全身粉砕骨折してたから。
後ろで、低い大きなものが倒れる音がした。流石、兵長だなー…

その直後、私の体は地面に叩きつけられ、目の前が真っ暗になった。

***

暖かい、ぽかぽか日差しで私の意識は起きて…え?起きて?

バッと飛び上がって見ると私はベッドの上だった。うん、見たことある私の部屋。状況を整理しよう。確か私は、壁外調査に行ってて巨人に遭遇。ガス切れを起こし、食べられ…。そうだ、食べられかけたんだ。助けてくれた人も一人しかいない。そうだ…

「起きたか、死に損ない。」

不意に扉の方から声がした。そうだ、兵長だ。
兵長の手には底の深いお皿が握られていた。

「兵長……!」
「なんだ、その顔は。いつも以上に間抜けだな。」

そう言って、兵長は私の目の前までやってきてお皿を置く。中に入っているものはちょっと見えなかった。兵長はそのまま帰ろうとするから、私は思わず大きな声出して、呼び止めてしまった。不機嫌な顔をして振り向く兵長。

「なんだ」
「ありがとうございました」

伝えたい事は沢山ある。あるのに出た言葉はそれだけで。兵長は再び進行方向に向き直り、

「ありがとうと思うなら、死んだ奴らに餞出来るような生き方をしろ。」

そう言って部屋を出た。



~Fin.

(恋愛要素、ログアウト)

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