こんな宮地サン

最初から怖い先輩より面白い先輩だってのは分かってた。
それは俺がレギュラーになっても変わらない。
普通入部したばかりの新入生が部活でレギュラーなんて先輩からすれば面白くないに決まってる。秀徳高校バスケ部なんて三大王者の中でも別格の名門と呼ばれている事なんて知っていて当然。
選手層も厚い中で俺、高尾和成は春の練習試合からスタメンに選ばれていた。周りからは、つい最近まで中坊だった糞餓鬼が調子に乗るなって視線。
もう一人、俺と同学年でレギュラーになった奴はキセキの世代と呼ばれる緑間だ。
そちらはムカつくながら頷けるみたいだけど。
「あーらら、また聞こえるように言われてんのね俺。」
「名門バスケ部だと言うのに実力が及ばなかっただけと分からないのか」
「それ聞こえるよーに言うの駄目だかんな」
もう遅いかもしれないけどさ。部室から騒がしい廊下へと戻る。
俺は隣に並んで歩く緑間に釘を刺す。面倒事は極力避けたいじゃないの。
言いたい奴は言わせときゃ良いんだよ、横目で緑間を見れば眼鏡のブリッジを上げた。
お、やっぱりこいつ面白い。
どうやら面倒事は嫌いなタイプみたいで俺は話題を変えて教室まで戻っていく。
同じクラスだから一緒に行動する時間は多いから緑間の事が少しずつ分かってきた。
取り敢えず変わってる。それでいて面白い。からかう対象が出来た俺は今の学校生活が気に入ってる。男のくせにこそこそと影口を叩く奴はからかっても面白くない。
だから俺はなるべく関わりをもたないようにと努めてきた。
勿論これからもだ。
そんな中、俺たち二人のレギュラー入りを面白くないと言って二言目には轢くとか殺すとか物騒なことばかり、けどそれでも練習の時には人一倍真面目で何だかんだと面倒を見てくれる変わった先輩もいる。
同じレギュラーの宮地サンだ。
よく緑間に対してキレていて忙しくねーのかなって他人事。
最初はバスケは上手いけど口やかましい人って印象だったけど変わるもんだ。
同じ練習をこなして合宿やって過ごす時間が増えていく内に色んな事が分かってきて話して今では・・・うん、色々あって俺の恋人だったりする。
「ちょっと待て」
「へ?」
「なんでお前と緑間の馴れ初めみたいなもんを俺は聞かされてんだよ」
「宮地サンの事思い出してたら話が逸れたと言うか」
春先の事を思い出していたがいきなり話しかけられて現実へと引き戻された。
周りを確認しなくても此処は通い知った宮地サンの部屋で目の前にはとてもとても不機嫌な表情。分かりやすい。
「俺の部屋でこれからしようとする気満々な時に他の男を思い出すとかな…殺すぞ」
「きゃー怖い」
態とらしく声を高くしても青筋が増えるだけで機嫌は悪くなる一方。
今日は部活も無い休日で久しぶりに部屋でまったりしようとした時、不意に聞かれた話題に答えただけだと言うのにいつの間にか遡り過ぎてしまったようだ。
デコを思い切り叩かれてあまりの痛さに俺は悶絶する。
ベッドに背を預けてずるずると床に落ちていく。
これは痛い。
今日妹ちゃんからカチューシャを借りてふざけて付けてくるんじゃなかった。
俺のデコはいつも以上に無防備だ。本当に痛い。
「うぅ、いってー…暴力的な事は反対なんスけど」
「お前がふざけた事言うからだろ」
「そっちが先に聞いてきたのに」
「だったら俺の事を話しやがれ。なんで休みの日にもなって緑間の事聞かされてんだ」
高校に上がった頃はまだ宮地サンとそこまで親しくなかった気がする。
真ちゃんが面白くて勝手に張り合っていたから厳しくて口の悪い人って印象。
文句を言うくせに丁寧に教えてくれる面白い人になっていったのはいつ頃だったか。
と言うか宮地サン顔が近い。
身を乗り出したらキス出来そうなぐらいに近い。
そう言えば久しぶりだからやりたいとか言われて半ば無理矢理部屋に入った時に俺が意味もなく宮地サンなんか変わりましたよねーって話題を振ったんだった。
今思い出した。
で、そこからお前最初は俺の事どう思ってた訳だとか聞かれたから長々と語ろうとした時に真ちゃんについて話していた。
うん失敗だ。この人完全に機嫌が悪くなってる。
元々沸点の低い人だから気を付けてからかってたのに今回は完全に俺が悪い。
まぁ理由はあるんだけど。
「えー…面白い人」
「緑間よりか」
「おかしいっ。あんたの質問の仕方がおかしい」
そりゃこの返され方なら俺、真ちゃんの話をするに決まってる。
分かってて聞いてくるとか最悪だ、この人。
真ちゃんより面白い人がいるなら俺は会ってみたい。
あぁもう面白い人は駄目だ。
じゃあなんだ。怖い人?
いやいやもう怖いって思わなくなってきたからこれは却下だ。
背が高いって言うと俺の周り皆高いからな。
宮地サンも例外なく高くて見上げないと目が合わない。漸くデコの痛みも収まってきて相手を見ればふわふわとさらさらの中間ぐらいの髪が俺の視界に映る。
日に当たれば暖かそうな色をしていて実はその髪を見るのが好きだったりする。
口にした事はないけど。
じっと視線を向けていると顔が近付いてきて唇を塞がれた。
「んっ…」
いきなりだったから目を閉じる事も出来なくて今は閉じられた宮地サンの目の色を思い浮かべてみる。
一度離れた唇はまたくっついて何度も軽いキスをされていく内に床に落ちかけた俺の身体を撫でる手の存在に気付く。
まさかこの中途半端な状態でやろうとするなら待ってくれ。
「っ、ぷは…ちょ、タンマ」
「お前そればっかりだな」
「このままだと俺明日筋肉痛になりそう」
互いの吐いた息が擽ったく触れる距離でもお構いなしに話すから俺は姿勢を整えようと身じろぐ。
「鍛えてるやつが筋肉痛になるかよ、ったく」
言いながらも俺の腕を引いてベッドに上げてくれるから意外に紳士的と言うか何と言うか妙に余裕があって手馴れてて女扱いされるから俺は羞恥と何か別のものが混ざった感情で胸の辺りが気持ち悪くなった。
キスが再開されて俺の言葉は自然と奥に引っ込んでいく。
熱い舌で唇をなぞられて素直に口を開けば無遠慮に俺の中へと侵入した。
んん、苦しい。けど気持ちいい。
なんでこんなキス上手いんだろ。
上顎を丁寧に撫でると歯列をなぞり俺の舌を絡ませていく。
「んっ、んんっ、はっ、ぁ」
舌を引っ張られ無言で宮地サンの口の中へと招待されるときつく吸い上げられて俺は腰が甘く疼いた。
っ、ほんとにうまい。ずるい。
なんでこんな上手なキス出来るんだよ。
そのまま舌同士を絡ませて唾液が混じる頃には俺の口から飲み込めなかったそれが伝落ちていく。
大きな手が俺の顎を固定すると指先で唾液が掬われては頬に塗り広げられていく。
冷たい。
ぬるぬると動く舌と指に俺はいい加減息が苦しくなってきて閉じた瞳をうっすらと開けて揺れる視界の中、宮地サンの顔を見た。
「っ、はっ、はぁ、あ……んっ」
「んっ、顔、あけーぞ高尾」
捉えられたと思った時にはゆっくりと唇が離れていき見つめ合ったままなんて恥ずかしい状態で顔を離す。
と言っても両方の頬を包まれて鼻先はくっついたまま。
キスする前と変わらない距離で言われた言葉に俺の顔がカっと熱を上げた。
親指は溢れた唾液を頬に塗りたくっていて中指と薬指で耳の裏を撫でられ俺の身体は過敏にその刺激を伝える。
っ、耳はやめてくれよホント。
俺の顔を見て何とも意地悪そうな表情を浮かべると唾液を塗りたくった頬に舌を這わせてきた。
「っ、ぁ、はっ、なにして」
「舐めただけでエロい声出すな」
「んっ、だ、って」
あんたの舐め方がやらしいからだろーがって反論したかったけど唇を塞がれたから、んぅ…なんて意味のない言葉が出てきた。
分かっててやってるからタチが悪い。
頬を包んでた手が離れていくと服の上から真っ平らな胸を撫でられて俺は焦った。
その手は段々と胸から腹、そして何を探してるのか分かる。
これからする行為なんてひとつしかないのだから。
けど、もうちょっとゆっくりやってくれても良いんじゃねーの?
「っ…宮地センパイ。やさしく、処女扱うみたいにやってくれないと嫌いになっちゃうぞ」
「死ね轢くぞ」
うわ。失礼な。
可愛い後輩バージョンで言ってみたのにひと蹴りされちまったよ。
高い声出して言ったのに感情がこもってなかった事がバレていたようで、もう黙ってろと言わんばかりにズボンの上から形を確かめるように撫でられた。
「あ…ぁっ、んな、いきなり」
「さっきより断然可愛い声だったな」
「ばっ、な、なに言って」
意図して出した訳じゃなくて出てしまった声を可愛いとかこの人アホか。
それも男の声なのに。
今回が初めてじゃないけど初めての時もそれを言われて酷く恥ずかしい思いと格好をさせられた。
初めてだったのに・・・なんて鬼畜野郎なんだって心の底で毒づいた事はよく覚えている。
「キスだけで硬くしてんじゃねーか。こりゃ触ったらイくよな」
「ぁあっ、し、…しらな、んぁ」
「・・・えろ」
何度も何度も形を確かめては撫でて指先で先端の方をぐるぐる撫でられると俺は腰を捻らせて逃げの形を取ろうとしたのに身体は正直なもんで、もっとと言わんばかりに宮地サンの手に押し付けようとする。
っ、違う違う。
これ俺の意思じゃなくて。
声を抑えようと手を口に持って行っても撫でられ刺激する度に添えられるだけで何の意味もない。
指を咬もうにもその前に焦れったい甘さが広がって俺は顔を背ける。
すると漸く窮屈な前が寛げられる感覚にちらりと視線を上げた。
「っ、その見方、期待してるって分かる」
「ふぁ、あっ、そんなんじゃな…ぁあっ、」
宮地サンが唾を飲み込んだ事が分かると下着も脱がされて上下に扱かれた。
顔を背けた事で露わになった耳の中に舌を挿し込まれて水音が直に鼓膜を犯していく。
やっ、ばい。弱い所を同時になんて責められたら、も、出そう。
「おい、もうやべーんじゃ」
耳元で囁かれるように出された声と熱く膨らんだ先端を指の腹で撫でられて滑りの良いそれを何度も擦られた。
「や、だっ、う…・・・っ、ぁああぁ」
ついに耐えられなくなった俺は腰を大きく震わせて自分の服と腹は勿論宮地サンの服にも精液を吐き出してしまった。
生暖かい液体が足にも内腿にも伝わってきて気持ちわりー。
不快感だけじゃなくて気持ちよさと開放感と気だるさが一気に来て俺は整わない息を懸命に押さえつける。
「はぁー…ぁ、」
「沢山出したな、溜まってたか?」
「っ、忙しくて、やってねーっす」
「だろーな」
楽しそうに笑う宮地サンの顔に一発入れてやろうかと思うぐらいだ。
思うだけでやらねーけどさ。
ここの所忙しすぎて抜く事も出来なくて久々に人に触られたらすぐイくっつーの。
あぁくっそ、恥ずかしい。
なんでこの人こんな余裕なんだよ。ありえねーぞ。
二つしか違わないのに妙に大人に見えてきて俺は悔しくて仕方ない。
身体を起こそうとしたのに宮地サンの手が俺の肩を押さえつけてあのこわーい笑顔で俺を見下していた。
な、ナンデスカ?
「どこ、いこーって気だよ」
「いやもう終わったから」
「お前だけ抜いてスッキリとか、ねーわマジねーわ轢くわ」
「い、やっ、あの…っン」
恐ろしい呪文が唱えられたかと思えば、すぐさま後孔に押し込まれた太い指に体が反応する。
「お前、ここでやめようとか俺に死ねってか?」
「え、ちが…っぅ、…ぁ、!指、いて」
「ホントかよ」
「いっ、ぁあ、っは」
いた、いような。そうじゃないような。
なんか指がヌルヌルしててそのままナカを何度も撫でられると訳が分からなくなる。
何か塗ってるのかもと考えるより先に遠慮のない指が俺のナカを撫でては、とある部分をシコリを捜してる。
そこ、じゃない。
思わず腰が動いて宮地サンの指を導こうとすれば、いきなり指の動きが激しくなった。
「ぁああっ…はぁ、なっ、いき、なり」
「あんま煽ってんじゃねーよ、さすぞ」
何をって聞きたくない。どうせ下ネタだ。
二つしか違わないのにおっさん臭い事を言ってくる宮地サンの指は俺のいいトコロを何度も何度も押しては撫でてくる。
下半身が熱くて指を思い切り締め付けると恥ずかしさで俺は、じっと相手を見つめた。
あぁ恥ずかしい。でもこのままは嫌だ。
いつの間にか指の本数が増えていてヒリヒリと熱いのにナカはもっと熱くなっていて俺の身体なのに制御が効かない。
「っ、もう、無理だ。いれんぞ」
視線を落とした先には布越しでも分かる、宮地サンのがもうパンパンに膨らんでいて思わず中の指を締め付けてしまう。
期待しているみたいだ。恥ずかしい。死にたくなってくる。
「はっ、ぁはぁ…おと、こ、なれて、ません?」
「はぁっ?」
指が引き抜かれ孔の前ではもう先走りでぬるぬるした熱が今入ろうとしていたのに俺の言葉で静止した。
やっぱりこの瞬間は恥ずかしい。
何度やっても恥ずかしい。
そう思うと俺の口は熱い息を吐きながら言葉を探す。
大声を上げた宮地サンがキス出来そうな距離まで近付いて俺の目を覗く。
「お前だって女相手はした事あんだろ」
「…、ありますけど」
「むかつくな犯すぞ」
「あんたが聞いたんだっつーの!男と女扱い違くねーですか」
後孔に押し付けられたまま会話をするたびにひくついて、これ相手も分かってるんだろうなって考えて俺は口にしてしまった。
何か余裕そうでむかつくのはこっちの方だ。
だから何て言うか今から挿れるって時に俺は何を聞いてんだか。
「違いとか知らねーよ。確実なのは、お前だから出来るに決まってんだろっ」
「う、わー……だめだ、なに、このひと」
そして駄目だ。俺、なにときめいて…顔、あっちぃ。
なんだこれなんだこれ。
恥ずかしさを誤魔化すためにテキトーな話題を出したら余計恥ずかしくなった。
「ったく・・・もう焦らすな、」
「う、ん…っんぁ!あっ、ぁああ」
「っの、あっち、ぃ」
今か今かと待ちきれなかった熱が粘着質な水音を立て柔らかなナカの粘膜が亀頭を飲み込んでいく。
頭の中が真っ白になりそうだ。
背筋が震えて指より温度も質量も上のモノが痛みと一緒に侵入してくる。
「はっ、は、ぁあ」
「くっ、はぁ、きっつ」
腰を掴まれ慎重に入ってくる熱は俺を気遣ってか顔中にキスを落とされて他に気が向いている間に奥を目指している。
息を大きく吐いて宮地サンの動きに合わせようとすれば熱い息が耳に当たって突然甘く食まれた。
硬く目を閉じていたから気付かなかった。
ぐちゅぐちゅとした音が鼓膜に響いて下半身に熱が集中する。
「っひあ!…あ、んぁ」
「ぜんぶ、入った」
色っぽい呼吸と声が耳から体全体に響いて容赦なく突き上げられた。
ま、だ痛いってのに。
さっきまでの余裕は何処にいったのか指でなぞった良い所目指して腰が動いて打ち付けられる。
中を擦られる度にぞわぞわと背筋を這う快楽に俺も自分から腰を動かして強請る。
「ぁあっ、あっ、も、っと…」
「くっそ」
腰を掴む手に力がこもって勢いよく最奥を突かれると俺は耐えられなくなり思わず宮地サンを抱き寄せて白濁を溢れさせた。
密着した部分が汚れていくけど、もう何だって良い。
ただ惚けて明るい髪越しに天井を見つめる事しか出来なかったのに。
「ひぁあ、いった、ばっか、ぁあ、…あ」
「俺は、イって、ねーよ」
「っ、あぁ、ひ、ぁあ、あっ……っ!」
達したばかりで敏感になった内側を擦られると俺は堪らずに足を絡ませて相手を締め付ける。
一瞬息が止まったかのようになった宮地サンだったけど激しく打ち付けられて揺さぶられた。
夢中になって腰を動かしているとナカで熱が弾けて俺は声にならない声を上げて抱きついていた。
記憶はそこで一度途切れる。
あぁもう何て言うか目覚めたくなても意識ってものは浮上するわけで。
体がベタベタするかと思えば気だるさと痛みはあっても体にまとわりつく体液の不快感はなかった。
通い知った天井がそこにはあって、またやっちまったーとか思い出しくない恥ずかしい事聞いちまったーとか。
「何死んだ目してんだ」
「俺死にたい」
隣で、ちゃっかり服を着てる宮地サンと目すら合わせられなくて思い出さないようにしても相手が動くたびにぎしりと鳴るベッドと振動で痛む体がさっきの出来事を鮮明に思い出させてくれる。
この人やってる時に何て言ったよ。
いやいや思い出すな。あのときめきは嘘だ。
「死ぬなよ。俺が轢き殺すから」
「いややっぱ生きる」
あぁくっそ!またときめくとか俺馬鹿だ。
数時間前の俺!訂正。この人はやっぱり怖い怖い先輩だ。

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