優しい世界は崩れる事を知らないから

見付けてみせるからと約束した訳じゃない。いわば俺のエゴ。
全国の中学バスケ部の頂点に立つ帝光中学校にはキセキの世代と言われる5人が居る。
そしてもう一人幻の6人目と呼ばれる選手も居る事を俺は知っている。
どうしてかって、俺はそんな天才の6人と部員の中で最も近い存在だからだ。
実力が、なんて話じゃない。実力なんて到底追いつかない事ぐらい分かっている。
けど俺だって手を抜く事はない。
努力もしないのに出来ないなんて言い訳が大嫌いだからだ。
「だから高尾はレギュラーになれたんだ」
「今となってはこの目に感謝してる。征ちゃんが見付けてくれたんだから」
「その前に君は黒子を見付けてるだろう。だから俺じゃない」
試合以外でも普段の時でも影の薄い黒子を俺の鷹の目は見付けられる。
コート全体を俯瞰的に見る能力。
どういう世界かと問われると口で説明するのは酷く難しい。
春の風が運ぶ中庭で大きな木に凭れ掛かりながら座っているとバスケ部キャプテンの赤司が俺の肩に頭を乗せる。
変わらないその熱に俺は目を閉じると、人とは見方の違う世界もシャットアウトする。
心地の良い風が頬を撫で。肩にある赤司の髪が触れて擽ったくなった。
昼休みにバスケをしないかと青峰に誘われたけど今日は何故か赤司が2人で話がしたいと言うのだから丁重に断った。
俺はその6人と一緒に居る事が多い。
レギュラーになってから、この鷹の目を認められてから常にキセキの誰かと居る事になった。
「征ちゃん、どったの。眠い?」
「眠いというよりは心地良いに近いかな。きっと和成の近くだからだ」
稀に赤司は俺の名前を呼ぶ。嫌な訳じゃない。只、急に呼ぶから驚くんだ。
小学生の時は下の名前で呼ばれる事も多々あったけど中学に上がると苗字で呼ばれる方が確実に多くなった。
だから驚いたってこと。
あとは俺と同じポジションでやっぱり力の差がある赤司だ。
見た時に思った尊敬、って言葉が一番近い。
「ぶは、なんだそれ」
「嫌だった?」
「ぜーんぜん全く」
だから俺なんかが凡人である俺がまさか此処でレギュラーになって一緒に試合をするなんて思わなかった。
必要とされていると思えば何でも出来る気がして。
よく赤司は怖いなんて言われてるけど俺はそう思った事は一度もない。
こんなにも穏やかに話すこいつを見ても他の人間は同じ事を言えるだろうか。
息を吸って目を開ける。
最近、俺の目はずっと同じ世界を写していた。
試合であろうと無かろうと。
きっとコート全体を見渡せる範囲なんだろうけど、それぐらいの視野を常に保ち続けている。
もうすぐで予鈴が鳴る。
赤司もきっと分かっているけど動こうとはしない。
あぁ珍しい。
本当に珍しい事もあるもんだ。
「征ちゃん。もう午後の授業始まるよ」
「移動だった気がする」
「尚更早く行かないとまずいんじゃね?」
「でもね今日は和成とこうしたいんだ」
「あとでいくらでも付き合うから」
「約束。じゃあ行くよ」
立ち上がって予鈴が鳴り響く。
次の時間は音楽のようでしっかりと教科書を持ってきている事を俺は知ってる。
無駄のない行動力にすらやっぱり尊敬していて渡り廊下で別れると広い視界は別の明るい色を捉えた。
「高尾っちー」
「涼ちゃんまた告白でもされた?」
「え、」
何で分かったんだって顔をされて俺は思わず噴き出す。
笑い事でも何でもないんだけどさ。キセキの世代として新しく入ってきた黄瀬はバスケしながらモデルもやってるって言う凄い奴。
実はバスケ部に入る前からその存在は知っていた。
つまんなそうな目をしてる奴って印象。
部活に入って話してみればやっぱり想像なんかとは全然違った。
勝手にイメージ決めつけられて勝手に失望されてんだから。
「何で笑うんスか」
「今時手紙で告白なんて珍しいなぁって」
「見えてたんスね」
「それで隠してたって言える涼ちゃんもすごいわ」
ズボンの後ろポケットに無造作に丸め込まれた可愛らしい便箋は視界の広い俺じゃなくても分かる。
女の子に優しい黄瀬くんと周りの子は言うけど本質と言うか何と言うか結構真っ黒よーこの子ーとかふざけた口調で話したくなる。
「今、俺バスケ一筋って言ってるのに」
「試合の度に増えてくよな」
「あ、やっぱり。て言うか高尾っち大丈夫っスか?」
「何が?」
「目」
目と言われて俺は自分の片目を覆った。
半分だけになった広い世界。
最近少しだけ違和感を覚えてる、けど誰にも言ったりしていない。
言った所で誰にも分からないだろうから。
まずどんな風に見えているのかと説明した所で理屈は分かっても実際体験してみないと分からないと思うから。
それに理解はして貰ってもそれ以外は望んでいない。
なんて、言ったら黄瀬は悲しそうな顔を、するだろうか。
「涼ちゃん心配しすぎじゃね?」
「この前の試合で痛いって言ってたから」
そう言えばうっかり口にした気がする。変な所聞かれたなぁっと思っていると黄瀬が試合中にしか見せない真剣な目で俺を見るから思わず足が止まった。
廊下にまだ人は居るけど殆どの生徒は授業を受ける為に教室に居る。
そんな中で長身のモデルは目立つんだろうな、なんて。
「高尾っちは、そういう所、ホント強情っスね」
「心配性」
声色まで変わるから思わず言葉に詰まった。
止まった足を動かして数メートルとない賑やかな教室へ。
少しだけ黄瀬より早く歩けばさっきまでの空気は無かった。
「仕方ないじゃないっスかー」
「ほら、早く行こうぜ。授業遅れると外周追加される」
「それは勘弁して欲しいっス」
同じクラスには副キャプテンの緑間が居る。
授業に遅れたとなれば今日の練習はボールに触らせて貰えないかもしれない。
あとは試合に出るなとかペナルティは色々だ。
だからあのサボり魔である青峰も大人しく授業に出てる。
曲者ばかりのキセキを纏める奴もやっぱり曲者だけど。
大人しく2時間授業を受けて体育館へと向かう。
ほんの少し前まで2軍の体育館で練習していたなぁとしみじみ。
いつの間にかではなかったけど赤司に才能を認められてからは早かった。
まさか憧れの一軍昇格をしてレギュラーになれるとは思ってなかったから。
「いつ昇格テストだっけ?」
「一週間後だろ」
「今度も駄目だろうなー、あー、高尾羨ましい」
自分の名前が出たから思わず足を止めた。
止めなきゃ良かったとは思っていない。
何かを言われるのは慣れている。
だから目を閉じても耳を塞ぐ事なくその言葉を聞く。
名前はしっかり覚えてる。
前まで2軍のチームとして一緒に戦ってきた奴らだからだ。
「何か視野が広いとか何とかでテストなしに昇格だろ」
「キャプテンのご機嫌取れば上に上がれるとか最早コネだな」
此処最近は聞かなかったけど。
練習試合とかで色んな所行ってたし2軍の体育館にも近付いていなかったから本当に久々。
俺が扉の影に隠れている事も知らず。
ボールとバッシュの音よりも鮮明に届く声。
俺はただの凡人。周りにいるのは天才ばかり。
やっぱり浮いた存在なのは知ってる。
けど俺だって何もしていなかった訳じゃ…っ。
「おー、此処にいたか。捕獲」
突然視界が覆われた。
大きな手だとすぐに分かり、その低い声で誰なのかも分かった。
「っ、なに、大ちゃん」
「いつまでも来ないから緑間が捜しに行けってうるせぇんだよ」
後ろから視界を奪うように掌で覆う青峰の声でさっきまで話していた声は消えた。
この体勢は文字通り捕獲されている。
何て間抜けな格好だと思ったけど青峰はいつも後ろから現れるから気を抜いていた俺が悪い。
普段なら背後を取られるなんてそう無いのに。
いや、キセキ以外には無いだけで青峰や紫原は結構な割合で後ろから抱き着いてくる。
嫌悪はない。だって憧れだ。
「此処に何か忘れもんでもしたか」
「…」
青峰の視線だけを感じる。
まだ手のひらは俺の視界を覆っているのにそれだけは分かった。
俺は単純だ。
「…、いんや、気のせいだった」
「それなら行くぞ」
「え、ちょ、このまま?」
「めんどくせーから」
おいおい、ちょっと待て。
俺の目を塞いだまま引きずるように歩いていく青峰に焦った。
見えないから余計に怖いと言うか。見えすぎるのも厄介だけど見えないのも不便。
こっちのがめんどくさくね?
たまに野性味溢れる青峰の考えは俺にとって斜め上過ぎて読めない。
「…ねー、大ちゃん」
でも。視界を塞がれたって分かる事もある。
「なんだよ」
「あんまり睨むと目つき悪くなるよ」
「はっ、今更だろ」
ドコにとか誰にとかは言わない。
只、あまり睨むと余計人相が悪くなるから俺は純粋に心配してるだけ。
口許を緩めれば青峰を纏う空気も何処か和らいだ気がして俺はこの妙な体勢に文句を言わなくなった。
いや言っても無駄だと感じたんだと思う。
だって青峰だし。
そのままずるずると1軍体育館に行けば漸く手を離され視界が明るくなった。
「早く着替えて来い。んで、パス出せ」
「めっずらし」
「たまには真面目にやらねーと」
すごく似合わない言葉だと思う。
普段なら練習がめんどくさいって言うのに。
それでもボールに触った時、誰より楽しくバスケをする青峰は帝光中のエースだ。
俺はそいつにパスを出す。
最初はその速さに圧倒されるばっかりだったけど伊達に練習はしていない。
本来なら此処にいる奴らは皆エースだ。
その中でも青峰は別格だけど。
紫原だって緑間だって皆、みんな、エース様だ。
どんなに手を伸ばしても敵うことのない。
それでも俺がパスを出せば繋がるキセキのバスケ。
「んじゃ唸るようなパス出してやっから」
「上等。頼んだぜ」
二人して笑えば余計におかしくて、でもそれ以上にワクワクして俺は着替えを済ませる。
目はまだ痛くない。
試合の時、レベルの違うキセキの光を追う為、普段以上に使っていれば今まで日常生活では全く意識していなかったのに常に鷹の目を使っている状態になってしまった。
元に戻す術が分からない。
目を閉じれば、一時的に収まるけどそれだけ。
だから、道を歩いても家に居ても俺の視界は普段の奴らとは違っていた。
ロッカーの扉を閉めて体育館に向かえば一際目立つ後ろ姿に俺は口許を緩めた。
「あっちゃん。練習始まるぜ」
「高ちん待ってたんだし」
「え、俺?」
流石に2m近い紫原を見上げるのは首が疲れる。
俺も平均的、いやそれ以上だと思うんだけど、他の奴らを前にすると小さく見えるらしい。
いや、俺まだ中3だから伸びる可能性はまだまだある筈。
まさかのご指名に首を傾げれば同じように首を傾げるからホントでかい子供だと思う。
「赤ちん遅くなるから約束今度まで延長とか?」
「あ、なるほど」
昼間にしたあれか。
納得して頷き礼を言えば大きな体で視界と言うか進行方向を塞がれた。
つーか重い重い。
「つ、潰れるっつーの」
「赤ちんだから仕方ないけどー、俺も今度一緒にお昼食べて」
「は?全然大丈夫だけど」
なに、まさか一緒に飯食わないだけで俺今正に押しつぶされそうになってんのか。
つーか飯食うだけなら別にいつだって出来るのに。
このお子様はいきなり不機嫌になるから仕方ない。
手がかかるって言ってもそれが嫌じゃないから別にいいんだけど。
そう言えば最初の方なんて紫原から凄い視線送られてたなぁって思い出す。
この体格でバスケセンスもある。
生まれながらの天才は努力家の凡人はお気に召さないようだ。
俺と同じチームに居た奴も確か努力したって無駄とか言われて止めたとか。
「約束ね。絶対約束」
「俺、あっちゃんとの約束破った事あった?」
「ないけどー?」
背中に腕を回して何度か撫でてやると漸く体重をかける事をやめてくれた。
あぶねー、本気で危機を感じてた。
安心したのか大きな手が俺の背中に同じように回されて。
あー、あったかいんだよなぁ。
「俺今日このまま高ちんとこうしてる」
「いやいや練習しよーぜ練習」
「まじめ」
「そりゃあ俺は」
「ねぇ高ちん」
「ん、何?」
突然言葉を遮るから俺は腕の力を緩める。
見下ろす視線に何故か眩しさを感じて目を細めた。
あぁやっぱり眩しい。
光を追うのに俺は必死だ。
「無理は良くないから」
「え」
「今度俺と一緒にデザート巡りね」
大きな大きな手に頭を撫でられて、その背中を追う事しか出来なかった。
あと何故かデートの約束までしてしまった。
俺はオッケー出して無いけどこれは確実だ。
今週の土曜日に試合があるからその帰りにデザート巡りをしそうな予感しかない。
そうなると必然的に皆でケーキか、緑間と赤司の好きな和菓子になるのか分からないけど。
そこでもまた揉めるんだろうな。と思うと同時に。
さっきの言葉がずっと脳裏に残っていた。
無理は、していない。
それでも、あの目には自意識過剰でも何でもなく俺を心配してくれる色が混じってた。
「何をしているのだよ」
「俺って、そんなに頼りないかな真ちゃん」
いきなり何言ってんだって感じだよな。
でも本当に、そう思ったんだ。
別に無理も無茶もしていなくて、只俺は皆とバスケしたいだけなんだけど。
青峰が放ったボールがゴールを揺らして俺はぼんやりと揺れた思考を現実へと引き戻す。
いい加減練習をしないとまた差が開く。
「高尾っちー早く早く」
「今行くー」
柔軟を始めた黄瀬に呼ばれて賑わう体育館の中で背中を向けても俺の視界はずっと緑間を捉えてた。
振り返らなくても分かる。
「お前のパスは馴染む。それだけなのだよ」
調度足を止めた時、転がってきたボールを手に取り感触を確かめ振り向き様にパスを出した。
いつものように。そうすれば必ず緑間の手へと吸い寄せられる。
いつものように。顔を上げた。
有り得ないループを描いてネットに触れずそのボールは落ちていく。
気持ちが良いほどのやりすぎなシュートに何度笑いそうになって、俺は何度憧れただろうか。
綺麗な、その手が決めるそれに俺はどうしようもなく見惚れてしまう。
「当然っしょ」
「準備運動もしてないのにパスを出すな」
とか何とか言ってしっかりとシュート決めてくれるのはどこのどいつだよ。
まぁ変人と言えば変人なんだけど。
いつもラッキーアイテムなんて言って変なもの持ってるし。
練習が終わると外は薄らと夕焼けの色を残しているだけで恒例となったコンビニで俺はアイスを捜していた。
緑間は変わらずおしるこでそれだけでも俺の笑いのツボは刺激される。
アイツ一年中おしるこ飲んでるけど。
賑わうコンビニで一人、俺はやっぱり広いままの視界で消えてしまいそうな。
それでも俺なんかよりよっぽど強い光を逃がさなかった。
そう言えば今日昼間も見ていない。
「黒子」
俺は、唯一、黒子の事はそのまま呼んでる。
前に何の話題か忘れたけど流れで他の奴らは名前で呼んでくれって言ってたけど黒子は黒子のままで良いと言った。
どうしてかって聞いても黙ったまま。
「高尾くん。どうしました」
「アイス半分こ」
「ありがとうございます」
袋から取り出したアイスを差し出すと普段あまり表情を変えない黒子の雰囲気が優しくなる。
俺はそれを見るのが好きだったりする。こ
れは恒例のやり取りで最初こそ紫原が羨ましい羨ましいって言いながら背中に張り付いて離れなかった。
「今日部活遅れてきたけど委員会?」
「はい。気付いてましたか」
「そりゃあ俺の目は何でもお見通しだから」
影の薄すぎる黒子は気を抜けば見失ってしまうと他の部員は言っていた。
けど俺にはしっかりとその存在が目に焼きついているから捜すのは難しくない。
寧ろ他の奴はどうして見失うのか聞きたいぐらいだ。
「高尾くんはいつだって僕を見付けてくれますね」
「そうかー?見失うって奴の方がおかしいと思うけど」
どんなに人が多くても見失う事がない。
淡いけれどしっかりとした、俺にとっては羨ましいその能力。
絶対に真似が出来ないポジションに俺は一人憧れる。
コートのどこを見ても眩しい。
だから目を細め、閉じる。
春の夕暮れに吹く風は心地がよくて少し肌寒さを覚えるけど部活後のアイスは欠かせない。
動いた後は糖分を摂取しないとな。
「それは君が特別だからですよ」
風が吹いても黒子の声は俺の耳に届く。
特別、と言う言葉に熱くなって何処か冷静になってる俺が居た。
嬉しい半面また違う感情が生まれる。
「俺は、普通の奴だよ」
「そうでしょうか」
「そうそう」
「僕はそう思えません」
真っ直ぐな目が俺を捉える。
逃れたくても無理な話だ。
お前の目は俺の汚い奥底に隠した感情まで見えてそうで怖い。
けど一緒に居たいって言う相反した気持ちが俺の中にある。
見ないで欲しい。見ていて欲しい。
俺はずっとお前を捜してやれる。
俺だけが、俺が一番に黒子を見付けられる。
その事実に優越感を抱く。
キセキには出来ない事だ。
小さな事だと人は笑うだろう。
けど俺にとってはそれが存在意義のようで。
「でも君の目は暫く使わない方が良いと思います」
「…、なんで」
「多くを見る事は大事ですがそれで君が苦しんでいる事実は誰も喜びません」
はっきりと届いた言葉に俺は遂に視線を逸らす。
けど今、ドコに誰が居てどこを向いているのかすら分かる目が少しだけ痛んだ。
瞼をゆっくりと閉じても黒子が隣に居る気配は分かる。
「もしかして、心配かけてた、とか?」
「高尾くんは自分の事は二の次ですからね」
そう、じゃないけど。
圧倒的に優先順位はお前らの方が上だと言うのは確かだけどさ。
あぁだから今日の昼間に赤司はゆっくり静かな場所で過ごそうって言ってくれたり。
皆、何処かで言葉があった。
頭に柔らかく触れた手の温かさに俺は泣きそうになって。
ゆっくりと瞼を開ける。
「その目じゃなくても、高尾くんだから僕を見付けてくれるんだと信じてますから」
笑った、その表情が眩しくて俺はまた目を閉じて正面に立つ黒子へと手を伸ばす。
届いた手はゆっくりと握られ安心と共に目の痛みも頭の痛みも和らいでいくような気すらした。
「大丈夫。俺だけは見付けるから」
手を握り返せば黒子が笑ってくれた気すらして。
暖かな春の風が俺の頬を撫でるから。
また泣きそうになってしまった。

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