一人だと思ったら聞かれてました

冷房のきいた車内は実に快適だ。
いや快適だったというべきか。
俺達秀徳バスケ部は夏の最終合宿を行う為毎年恒例である合宿所へ向かっている。
レギュラーのみで編成された合宿に出るのは今回で2回目だ。
去年はスタメンじゃなかったがレギュラーに選ばれていたから先輩たちに混じってこの合宿に参加し今年はスタメンとして俺はこのバスに乗っている。
高速を下って暫く走っていると夏の日差しに照らされた海が見え俺の座っている席の後ろからはしゃいだ声が聞こえた。
「しーんちゃん、海だぜ海」
「前の合宿でも海を見ただろう。珍しくもない」
「海って見ただけでもテンション上がんじゃん」
確かに俺も海なんて何度も見ているけどちょっとテンション上がっちまったじゃねーか。
後ろに座るのは今年入部してきたキセキの世代の一人緑間とその相棒を努める司令塔の高尾だ。
スタメンだからって事はないが俺の真後ろに座り高尾は何かある度楽しそうに声を上げている。
「すげー。ほら真ちゃん見ねーの?」
「重いのだよっ!高尾」
さっきまで快適だったっていうのにな。
冷房止めたんじゃねーのかって聞きたくなるほど熱くて苛々してきたじゃねーか。
さっきまでは実に快適だった。
つーか今何て言った?
「おい………高尾撲殺すんぞ」
「なんで俺だけ!?」
「何でじゃねーよお前窓開けてやっからほら飛んでみせろよ」
「宮地サンやめてっ。冗談言う顔じゃない」
耐え切れず振り返れば窓際に緑間、通路側に高尾が座っていてその高尾が緑間を押しのけるっつーか椅子に押し付けるように窓の外を見てるもんだから二人の距離は近いってもんじゃねー完全に密着してるじゃねーか。
おい高尾お前誰と付き合ってるか此処で言うか?
笑顔に込めた意図が分かったのか背筋を真っ直ぐ伸ばし大人しく座った高尾に隣にいる緑間は溜息ついてるしよ。
やっと静かになったと思い座りなおす。
木村はずっと寝ててイビキうるせーし。
「真ちゃん真ちゃん、ポッキー食う?」
「要らん」
「えー、これ美味いんだぜ食ってみろよ」
だから。後ろの二人は何してんだ。
つーか高尾は一分も大人しく出来ないのかよ。
女子みたいな食いもん持ってきて他の奴と分け合うとか何してんだって言う前にもう少しで合宿所に到着するって言うから俺は振り返る事も出来ず取り敢えずバスを降りたら高尾を殴る事に決めた。
「いって。なんすか急に」
「お前のデコがそこにあるから」
「ひでー俺泣いちゃう」
「おーおー泣いとけ」
有言実行。殴るんじゃなくてデコピンしてやった。
バスから降りると涼しかった車内とは一転し熱気が身体にまとわりつく蒸し暑さを感じた。
海辺の近くだから波の音で幾分心地よさは感じてもやっぱり暑いものは暑い。
今回泊まる所は2人の相部屋だ。
人数が少ないから出来る事らしい。
点呼をして監督と大坪が何かを話している間、俺は自分の荷物を持ち緑色の横で海を見ながら話している高尾の背中を叩く。
「おい、部屋一緒にすんだろ」
「あ。そう言えば」
「そう言えばじゃねーよ殴んぞ」
「今背中叩いたくせに」
「あ?」
「ほらほら早く行きましょうよー」
今度は俺の背中に周り押してくる高尾によっぽど蹴りでも入れてやろうかと思ったが我慢した。
部屋を一緒にするって言ったのは高尾の方だって言うのに海に感動して忘れてました、とか訳の分からない言い訳を無視する。
部屋割りはくじ引きなんて言う古典的、じゃなくて運試しみたいに決めるからそれをする前に話を付けなくちゃならねー。
他の3年も各々気の合う奴と部屋を組んでいて1,2年はくじ引き。
3年の特権?まぁそんな感じだ。
「鍵は宮地が管理するようにな」
「ん、りょーかい」
大坪から鍵を受け取り指定された部屋へと向かう。
後ろには今年初めてこの合宿に参加する高尾がキョロキョロと周りを見渡し忙しない。
もう少し大人しくと言うか落ち着き持てよ。
高校一年生らしいと言えばそうかもしれないがこいつの場合もう少し落ち着きがあっても良いと思う。
ムードメーカーだと言えば聞こえは良いがとんだお調子者だ。
やるときはやるって分かってはいるんだが。
「う、わ。宮地サン宮地サン、この部屋海見えるんですね」
「いいから荷物置けよ」
「はーい」
間延びをした気の抜ける返事と共に荷物を置き窓の外に見える海を見て高尾はテンションを上げていた。
入口側のベッドに腰を掛けても太陽の光を反射して光っている事は分かる。
あー、まぁ部屋は何て言うかビジネスホテル?だっけか。
その造りと同じだって去年先輩が話してた。
扉を開けるとすぐ窓が目に入る。
入口からはベッドの端しか見えない。
右手に風呂場とトイレの扉がある、と言った感じだ。
寝るだけの部屋だから調度良い。
時計を確認すると昼飯の時間まで余裕があり今はほんの少しの休憩時間だ。
昼からは蒸し風呂状態の体育館で練習が待っている。
ふと頬を撫でる涼しい風を感じ高尾の方を見れば窓を開け光る海を見ていた。
潮風で余計にデコ見えてんじゃん。
「これ泳げるんですかね」
「合宿の後半なら大丈夫じゃね?」
立ち上がり未だ外を見る高尾に近付けば室内に入る風は心地よくて思わず目を細める。青い空に白い雲、あと白い砂浜?
絵に描いたまでは行かなくてもそこそこ綺麗な景色を眺めていたがやっぱり黒髪が気になり視線を落とす。
窓枠に手をついて何が楽しいんだかずっと外を見ている目が気に食わない、なんてガキ臭い理由でいつもよりずっと無防備なデコにキスをした。
「いきなり」
「言った方が良かったか?じゃあ今度は此処にキスする」
「ちょ、っ…ん」
指の腹で唇を撫でそのまま塞いでやる。
なんか甘ったるいと思ったらさっき食ってたポッキーか。
一度離してはまた塞ぎ啄むようにキスを続けながら高尾の顔をじっと見る。
唇が触れ合う度に睫毛が震えるから面白い。
「んっ、…ん…」
時折軽く歯を立て下唇を食むとじんわりと頬が赤くなっていく。
昼間だから余計に分かりやすくて俺はキスをしながら頬を撫で首の後ろを撫でると耳まで一気に赤くなる。
ほー、ここ弱いのか。
高尾はキスをしている時に俺がこうして観察して楽しんでいる事を知りもしない。
真っ赤になって睫毛を震わせ俺のキスに懸命に応えている。
それがいつもの姿とはかけ離れていて俺だけが見られることに酷く優越感を感じていた。
「ん、おわり」
「っ、え…」
最後に触れるだけのキスをし髪を撫でるとうっすらと膜を貼り揺らぐ瞳が真っ直ぐに俺を見ていた。
んな物欲しそうな顔すんじゃねーよ馬鹿。
同室になったのはこういう事を隠れず出来るからって理由だが今回は旅行で来た訳じゃない。合宿だ。
「昼飯、食いに行くぞ」
もう少しだけ時間はあるがギリギリに行くのは自分の中で許せなくて、あとはこのまま二人きりだと俺が危ないって話だ。
最近部活も忙しくて終わったら帰って寝るだけって言う生活をしてたから高尾とキスをするのも久しぶり。
だからこそそんな表情されたら俺だって歯止め効かなくなるんだよ。
「ういーっす」
「んな膨れっ面すんな」
「宮地サンってホント真面目ですよね」
「なに当たり前の事言ってんだ焼くぞ」
その真面目って言葉に若干の棘が含まれていたが気にする事なく高尾の手を取る。
驚いた顔で見上げてきたが何も言わず部屋の前までドアノブを握ると同時に高尾の手を柔らかく出来るだけ優しく離した。
「宮地サンってホント、優しいですよね」
「うっせーよ」
今まで繋げなかった分を、と思っても室内はそんなに広くない。
それでも高尾の声を聞いて振り返らなくても分かった。
すげーだらしない顔で笑ってやがる。
俺の方が恥ずかしくなってきたじゃねーか。
たった一言返すのが精一杯だ。
くっそ・・・慣れない事はするもんじゃねーな。
昼飯を食ってから近くの体育館まで準備運動がてら走り込みそれから蒸し風呂状態の体育館で練習を始める。
窓を開けてると言っても動けば暑い。
シャツが身体に張り付く感覚も練習に集中している時には忘れていて休憩になると途端に脱ぎたくなってくる。
いくらタオルで汗を拭っても止まることはなくて小まめに水分補給をしながらミニゲームを行う。
おー今日も緑間はシュート外さないのな。
外したら轢くんだけどよ。
ホイッスルが鳴り響き片付けの指示が出る。
夏の日照時間は長くて夕方だってのに明るい。
片付けを終えて体育館の外に出る頃にはさっきまで青かった海が今は真っ赤に染まっていた。
疲れたっつーか飯食いてぇ腹減った。
「おい高尾大丈夫かよ」
「へーき、へーき」
「やせ我慢してんなよ」
「いてっ。宮地サンひどい」
明らかに疲労の色が濃いって言うのにへらりと笑うその表情にイラついた。
たまにはっつーか俺には駄目かもしれないとか言っとけ。
言わないだけでこいつは他の1年に比べて倍以上に努力をしている。
キセキの世代緑間の相棒として比較されてしまうのは仕方ないがそれに反論する事なく誰にも言わず練習をする光景を俺は知っている。
勿論緑間もスタメンの奴なら気付いてる。
こいつは馬鹿だから気付かれてないとか思ってるんだろうけど。
どうしても中学時代と比べて緑間を生かしきれてないんじゃないかって声を聞いたと俺は木村から間接的に耳にした。
それは勿論パスを回す高尾が帝光時代、緑間にパスを回していた奴より劣っている、そんな奴がレギュラーになっている。と僻みも良いところだ。
なのに高尾は何も言わない。
相手にしたって無駄ですよ、って無表情とも何とも言えない初めて見る表情で言われた時には年下のくせに萎縮してしまった。
「あー、くっそ。嫌な事思い出したじゃねーか高尾轢くぞ」
「えっ、何で!?俺何かしました?」
しゃがみ込んで真っ赤に染まった空と海を見る高尾の髪をぐしゃぐしゃとかき乱す。
どうせ戻ったらシャワー浴びて飯食うから存分に乱してやる。
あぁでもあんまり頭揺らすとこいつ吐くかも。
「何をしているのだよ」
「真ちゃん、助けてくれ」
「いやのだよ」
「即答かよっ」
何だかんだ言って元気のあるフリが出来るこいつはむかつくが普段の調子に戻り俺はまた髪を混ぜるように撫でた。
汗を流す程度に軽くシャワーを浴びて夕飯を食い終わると高尾はベッドの上から動こうとしない。
それもさっきどっちで寝るかって決めたのに俺の寝る方で寛ぎやがって。
時計を見れば入浴の時間が迫っている。
部屋に簡易的な風呂はあるのだがこの宿泊施設には大浴場があり時間もきっちりと決められている。
3年が一番に入る為、俺は着替えを準備し終えると動こうとしない高尾の傍に腰掛けた。
「おい寝るな」
「寝ないです」
「すげー眠そうな声で言われてもな」
説得力なんざ皆無だ。
頭をつつくと情けない唸り声を上げて子供かっ!と思わずツッコミたくなったが抑えた。
枕に顔を埋め今にも意識を飛ばしそうな高尾の背中を揺らせばいきなり肩を震わせて笑い出す。
「宮地サン、くすぐったい」
「ただ揺らしただけだろ」
「ぶっは、それがくすぐってぇ」
肩甲骨の辺りに触れるとさっきまで眠そうだった声が一変し笑い声に変わる。
このまま擽るのも楽しいが俺は風呂に入って早く休みたい。
ベッドから立ち上がり風呂に向かおうとすれば高尾の間延びした声が俺の名前を呼んだ。
「風呂って早く上がります?」
「まぁ長風呂する方でもねーけど。」
「えーゆっくり入ってきてくださいよ」
疲れているでしょと付け足されたがお前の方がよっぽど疲れてねぇか?
つーか何でそんな事聞くのかも分からなかったが取り敢えず風呂だ風呂。
時間が決められているから早く入らないと2年生が来る。
高尾に準備だけしておけよーと声がけは忘れず俺は大浴場のある一階へと向かった。
男と書かれた青色の暖簾を潜ると調度木村も居た。だだっ広い脱衣所の中は温泉の匂いって言うか、まぁ風呂の匂いなのか嗅ぐだけで疲れが取れそうなのは俺だけか。
テキトーに籠の中に服を脱ごうとし俺はそこで手を止めた。
「宮地、どうした」
「…。着替え持ってくんの忘れたわ」
うっかりってレベルじゃねーぞ。
高尾に疲れすぎだろとか言っておきながら俺も相当疲れが溜まってんじゃね。
「お前なにやってんだよ」
「あー…まぁ1年と一緒に入るか」
「高尾?」
「お?おぉ」
なんで分かったんだ。
俺は1年って言っただけなのに。
脱ごうとした服を元に戻し俺はため息を吐く。
準備はしっかりした筈なのにあいつと喋って忘れるとか部屋に戻ったら何て言われるか。
笑いの沸点が低いから取り敢えず笑うだろうな。
あーもーマジでねぇわ。笑いやがったら殴るか。
絶対に笑うから殴るよりデコピンの方が良いか。
それとも息が出来なくなるまで擽ってやるか。
選択肢をいくつか思い浮かべエレベータに乗り込む。
この浮遊感がどうにも苦手だ。
これが好きって言う奴がいるなら言ってみろ。
蔑んだ目で見てやるからよ。
スウェットのポケットに入れた鍵を取り出し部屋番号を確認する。
覚えてない訳じゃないが着替えを忘れた俺だ。
確認して悪い事なんてない。それよりアイツ寝てんじゃね。
ふと過ぎった考えに思わず足音を殺した。
もし寝てたら風呂に入るまでは寝かせておいて時間になったら叩き起せば良いか。
ストレス発散にもなるし。
「…、…」
鍵を差し込む音から扉を開けるまで妙に慎重になり俺は息まで殺した。
忍び込む訳でもねーのに。
そこで、ふと感じた違和感。
なんか、声しねぇ?
「…んっ、…っ、」
この部屋にいるのは高尾でこの声は紛れもなくアイツの声だ。
だけど普段聞いてる声とは違い押し殺したような、いや、違うな。
もしかして一人でマスかいてる?
静かに入ったせいで俺がこの部屋に居る事に気付かないのか。
耳を立てれば厭らしい音も届いた。
「はっ…ぁ、…んん」
俺は声を上げる事も音を立てる事も出来ずピタリと壁際に寄った。
自分の心臓の音が煩い。
何も悪い事なんてしていないのに見てはいけないものを見てしまった気がする。
さっきまで眠そうだった高尾がいきなり一人でシてたら驚くだろ、ふつー。
「んぁ…は、…あ」
室内に響く厭らしい音と高尾の押し殺した声に耳を傾ける。
いつもだったらこのぐらいの距離近付けばすぐに気付くって言うのに今は余裕がないのか夢中になっているからか部屋に入ってきた俺にも気付かないと言う始末。
おいおいどんだけ必死なんだよ。
さっきまで睡魔と仲良くしてた奴が元気だ。
分からない事もないがまさか合宿中にするとか。
あー、だからさっき俺にゆっくり入ってこいって言ったわけか。
一人で納得。
「っあ…は、…ん、みゃーじ、さ…」
「っ」
「んぁっ、…はぁ、っ」
いきなり名前を呼ばれて心臓が痛くなるほど脈打った。
けどそこから続くのは言葉ではなく変わらず小さく喘ぐだけ。
もしかして俺の事考えながら抜いてんのか。
「っ…」
途端、身体に熱が集まる。
そりゃあ俺だって一人でヌく時は高尾を思い浮かべるがまさかあいつまで考えるとか思わないだろ。
初めて遭遇した訳だし態々ヌくネタを本人に教える訳もなければ話した事なんてない。
くちゅっと厭らしい音が一際大きく俺の耳に届き、あぁ今あいつの先っぽからだらだら垂れてんだろうなとか俺がしてやったように真っ赤な顔して泣きそうになりながら一生懸命自分で扱いてんのか、とか…まてまて俺、やめろ考えるな。
部屋から出る事だけを考えろ。
「んぁっ・・みゃーじ、さん…きもち」
足が動かなくなった。
根でも張ったんじゃねーのってぐらいに俺の動きはピタリと止んで全神経を耳に向けようと必死だ。
俺に触られると想像してんのか。
っ、なんつー・・・。
視線を何処に向けて良いのか分からず彷徨わせると壁に設置された鏡があって高尾の脱げかけた、足に引っかかったスウェットが見えて妙に厭らしい。
残念だが表情は見えない。
見えた途端、俺の存在も高尾にバレてしまうから入口付近で俺は止まるだけ。
「ふぁっ…‥はぁ、んっ…んん」
次第に大きくなる卑猥な水音と高尾の声に何も出来ない状況が酷くもどかしい。
かと言ってこのまま姿を見せるのも楽しくはない。
最初は気まずいと思っていたがイく瞬間まで見届けてやろうなんて俺の性格も悪い。
「んっ、ぁ……ふっ、はぁ…」
声に少しだけ陰りを見せたかと思えばさっきとは違うリズムと音が届く。
もしかして、いやもしかしなくてもアイツ、後ろも弄ってる?
いやいやまさか、んな訳ねー
「っ、…ゆび、…いって」
そんな訳ある。
俺の心の声でも聞こえてんのかって言う絶妙なタイミングだ。
マジかよ、あいつヌく時後ろも弄るとか…ホント、なんなんだよ。
思わず片手で顔を覆うと俺の下半身も元気に勃ってる。
そりゃ恋人のオナニー聞けばこうなるよな。
それもあの高尾だ。
普段が飄々としているだけあってヤった時のギャップがハンパなかった。
余裕のない真っ赤な顔で見られると俺の理性が崩壊する。
今は何とかつなぎ止めてる訳だが。
身体は本当に素直だ。
「んっ……はぁ、っ、…ぁ」
後ろを弄っているせいか前を扱いていた音が控えめになり俺はもどかしさを覚える。
高尾も思ってそうだけど。
あぁ、くっそ、俺が触ってやんのに。
指を中まで入れてキスをしながらお前の気持ちいい場所探ってやる。
焦れったくて俺の指は思わず高尾のナカを弄るように折り曲げた。
「っあぁ!…はっ、ぁ、あっ…」
「……っ、」
ビビった。
俺が想像しながら指を曲げた瞬間、調度タイミングよく高い声上げるからまた心臓が痛くなる。
唾を飲み込む音が大きく聞こえて。
それより俺息荒くないか。
「ひっ、ん…みゃーじさ、…っ、みゃーじさん、…ぁ」
甘えた声で俺の名前を何度も呼ぶからとんだ拷問だ。
早く突っ込んでやりたい。
張り詰めた股間が痛くて仕方ない。
前立腺を何度も押し上げては刺激しているのか高尾は声を我慢する事もなく行為に没頭するだけ。
俺はお預けを食らっているようなもんだ。
「っあ‥ゃ、ん…っ〜……」
高尾が枕に顔を埋めたのか声はくぐもってあまり聞こえなかったが室内に充満する臭いで達したとすぐに分かった。
「ふ、…はっ、はぁ」
呼吸を整えようとするそれにすら反応するとか俺疲れてんじゃなかったのか。
最近出してねーから収まりも効かず熱を下げる方法は一つしか思い浮かばなかった。
部屋に戻って高尾にする事は殴るでもデコピンでもない。
「おい」
「はい!?え、ぇ…?」
短く息を吐きだし俺は入口側のベッドまで向かう。
このまま部屋を出るなんて選択肢はない。
出た声は低く焦りが混じっていたが高尾はそれ以上に裏返った声を出す。
「なに慌ててシーツで隠してんだ轢くぞ」
「ひ?え・・・?あれ?宮地さ、ん?」
俺がこの場に現れた事実に動揺してんのは当然だと思うが日本語話せ。
シーツで身体を隠すとか乙女かテメー。
達したばかりで頬は赤く目なんか潤んで一言で言えばエロい顔してる。
惚れた欲目だって分かってても今のこいつは俺にとって想像以上だ。
困惑した目が俺を上から下まで見ながら、ある一点で視線を止めた。
「へ、なん、で…勃って…て、まさか」
「そのまさかだよ」
「え、風呂は?」
「着替え忘れたから戻ってきた」
「そ、それって」
さ、最初から・・・なんて言いながら茹でタコみたいに赤くなった高尾が枕に顔を埋めた。
悪かったとは言わない。
見られたくないなら夜中にやりゃ良いのに部屋で態々するとか見られても仕方ないだろと開き直り。
俺以外の奴が見たら撲殺するけどな。
「おい高尾」
「んっ!お、俺…しぬ、しにそう。恥ずかしくて、死ぬ!」
赤く熱い耳に口付ければ肩が震えその反応に気を良くしてのし掛かった。
押し倒す形を取って何度も頬や耳に口付ける。
「死ぬなよ。代わりに俺が殺してやるから」
「っ〜〜、み、宮地さん、もっ、俺、ほんと、無理」
「……」
思わず目を見開いた。
唇にキスをしようと頬に手を滑り込ませ此方を向かせた顔は今にも泣き出しそうな羞恥で歪んだその表情。
眉を寄せ涙を溜めたその瞳が揺れ動く。
想像以上なんてもんじゃなかった。
内側から競り上がってくる感覚に背筋が震え俺は高尾の身体を隠していた邪魔なシーツを剥ぎ取る。
「なっ、」
「俺ももう無理」
我慢の限界なんて話じゃない。
散々焦らされた上にその表情は反則だろ。
「はっ、…あぁアっ!ゃ、いきな…や、だ…ぁっあ…あ、っん」
「っ、無理だって言っただ、ろうが」
さっきまで弄っていたナカは熱いまま先端を孔の入口に擦り付ければもう高尾の言葉を待つ暇なく奥へ奥へと押し込んでいく。
久しぶりだって言うのに加減も出来ずに腰を打ち付けた。
「あっ…んんっ、ひぁ…や…」
「自分で触って、きもちよかった、かよ」
「っ、あ、あっ…ん、も…ほんと、……や、ぁ」
熱いそこに俺の痛いぐらいに勃起した性器で突けば高尾の身体は素直に反応を返す。
容赦なく腰を振り打ち付ける中、耳元で低く意地の悪い質問をぶつけると急に締めつけが激しくなった。
いって、食いちぎられるんじゃね。
「はは、すげー締め付け、いって…」
「んあ、やっ……み、やじさん、あっ」
腰を掴み何度も最奥を目指し叩きつけるように腰を振る。
擦れる壁が熱くて前立腺を刺激する度窮屈に締め付けるそれに俺は奥歯を噛み締める。
もう少し焦らしてやりたかったけど俺の方が限界だ。
もうさっきから限界だが。
「っ、もっ…やっべ、…はっ…、出す」
「あっ…ん、ぁああっ!……あっ、ぁっ」
きつい締め付けが断続的に続く中俺は最奥目指し一度ギリギリまで引き抜いたもので思い切り突き上げた。
視覚的にも真っ赤な顔してだらしなく涎を垂らしながら喘ぐ姿に今まで張り詰めていたものが一気に放出される。
イく時は絶対に抜こうとしていたのにそれも叶わず俺は高尾のナカで精液を飛ばした。同時に俺の腹に熱いものを感じると高尾も同じようにイったようでビクビクと情けなく震える腰に合わせ先端の窪みから白濁を出し切る。
「はーっ…はぁ、…は」
「はぁ、…はぁ、ははっ…すげーなさけねー面」
「ぁ……はっ、も、しんじらんね」
汗ばんだ手で、そっと涙とか汗とか色々混じった頬を撫でてやれば高尾は顔を背ける。ほー、そういう反応をすんのか。
「いって、いたい」
「どこまで伸びるか試してみるか?ん?」
「無理っギブ!」
撫でた頬をそのまま伸ばしてやれば空いた手で何度も俺の手を叩いてくる。
地味にいてーんだけど。
引っ張った箇所をさすれば今度は大人しくしていたがやっぱり一人でシてる所を見られたのは相当恥ずかしかったみたいで俺と目を合わせようとしない。
ま、俺も見られた時には死にたくなるだろうけど。
「宮地さん」
「んー?」
「風呂、いいの?」
「お前らと一緒に入るから良い」
今は2年生が入っている時間だ。
それならもう少し待って高尾と入りに行く。
あんまり動きたくないってのもあるんだけどな。
なんて言ってもられない。
折角でかい風呂に入れるならそっちの方がいいに決まってる。その前に。
「んっ…ん、」
噛み付くように唇を塞ぎ昼間に触れて以来のそこを柔らかく噛んでは舐めていく。
あ、やっぱり睫毛震えるのな。
口を開けるように何度も舌先で唇を舐めると高尾も積極的に舌を出してきた。
絡めるより攫うように吸い上げると唾液同士が混ざり合い俺は迷わず飲み込む。
「ぁ…」
「あー、やっべ、あんまりするとダメだな」
俺の息子もまだナカに入ったままでこのままキスを続けると反応しかねない。
中途半端に煽ってしまったのかまた膨れっ面になる高尾のデコに口付けて俺は身体を綺麗にする為、風呂場へと急ぐ。
引き抜く時に物足りなさそうな顔しやがって。
ああいうのは平気でするくせに恥ずかしがるタイミングがイマイチ掴めない。
「お前のせいで風呂ギリギリじゃねーか」
「宮地サンのせいでしょうが」
「はぁ?」
身体を拭いたり高尾のナカに吐き出した精液の後処理をしていたら1年が使える風呂の時間は残り少なくなっていた。
長風呂ではないから問題ないがどうせならゆっくり浸かりたかったのが本音。
エレベータに乗るとさっき無茶をしすぎたせいか高尾がふらついた。
「あっぶね」
「俺明日生きてられるか心配」
「生きろ」
「へーい」
思わず手を伸ばしてそのまま腕を掴んだままボタンを押し扉を閉めた。
その間に手を握れば俺を見上げる視線を感じたがそれには応えず表情も変えない。
暫くして扉が開き先ほど通った道を進んでいく。
手は離さないまま幸いにも人が通らず脱衣所には見慣れたオレンジのジャージが籠に入っている。
「誰かに会ったらどうするんですか」
「知らねーよ」
会ってないから問題ないだろ。
「繋ぎたいから繋いでんだよ」
「……、宮地サンってホントは不真面目なんですね」
「はっ、言ってろ。ばーか」
お前のそれは照れ隠しの言葉だって分かってるから俺はその手を離してまた髪をかき乱してやった。

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