拍手SSA

窓から見上げた雲の流れは早くて明日は天気悪いのかなとか。
その瞬間に晴れるからどっちなんだよ。
まぁ暖かいから良いんだけどさ。
長細い縦長のクッションを背もたれにして俺は半分ほど寝転がりながら勉強を続ける宮地サンの背中を横顔を見ていた。
ふわふわとさらさらを両方堪能出来る甘ったるい髪の色。案外睫毛長いんだなぁ。
黙ってたら可愛い顔してるし。言ったら殺されるけど。
勉強や料理を作る時は眼鏡掛けて格好良い。
前髪が邪魔なのか俺がふざけてあげたヘアピンつけてる姿なんて笑いが込み上げてくる。
一通り宮地サンを見つめてまた空を見上げた。
あったかいよなぁ。
さっき洗濯物干した時はベランダがとんでもなく寒かったけど。
日が当たってる所は温かい。丸いオレンジ色のクッションを抱き抱えて目を閉じると睡魔が襲ってくる。
「何、ねみーの」
「勉強終わったんですか?」
「いや、まだ」
「休憩します?」
「あー、どうすっかな」
集中しているから目が疲れてきたのか目頭を押さえる姿もカッコいいとか惚れた欲目だよな。
でも本当にカッコいいんだから仕方ねーじゃん。
つーか宮地サン真面目だよな。
休みだってのに勉強して。冬休みはまだあるって言うのに。
高校の時から真面目なのは知ってたけどさ。
昨日は部活があって宮地サンもバイトしてたから夜しか一緒に居られなかった。
疲れてたから飯食って風呂入ったら寝ちまったから今日は甘えたかったんだけど。なーんて。
素直に言える訳がない自分に溜め息が出てくる。
「高尾、」
「うぇなんれすか」
「ふはっ、変な顔」
「んんん」
痛い痛い。いやそんなに痛くないけど。気分的に。
頬っぺたを軽く引っ張る宮地サンは楽しそうだ。
さっき甘えたいって言ったけど宮地サンはいつ甘えんのとか唐突に思った。
頑張ってる人だから余計に。それを近くで見てきたから余計に。
「んだよ」
「へへー」
頬から手を離した宮地サンの髪を撫でると気持ちよくて、あ、これクセになりそう。
座ってる時には楽に触れる。
何度も柔らかい髪を撫でれば普段しない事だから落ち着かないのか表情が険しくなっていく。
知ってる、照れてる時にこんな顔するってこと。
だらしなく笑ってみせれば撫でている手を掴まれた。
「いきなり何してんだ」
「宮地サン勉強お疲れさまですって事で」
にっこりと良い笑顔で答えた俺を暫く見ていた宮地サンは、あの黒い笑顔を浮かべてきたから俺は咄嗟に後ろに下がった。
手が掴まれてるから気持ち程度だったけど。
「ほー…」
「な、なんすか、宮地サン?近くないですか」
じりじりと獲物を追い詰める獣のように。俺はそんな獣から逃げるように。
食われる。そんな感覚を覚えるようだ。
あれ?さっきまで大人しく、でも照れた可愛い宮地サンが見れて喜んでたのに。
「高尾」
「ふぇいっ」
あ、やっべ。
声が裏返った。
「…。クッション邪魔」
「あ、すみません?」
「おー」
オレンジのクッションを奪われ投げられるその様子をじっと見てた。
クッションで暖まってたからちょっと寒いかも。
太陽は相変わらず姿を現したり消えたり気まぐれだ。窓の傍は暖かいけど外の空気を感じる。夕方になると近付きたくない場所だったり。ふと太陽は出てるのに影が落ちてきた。
「み、やじサン?」
「あ?…んだよ」
「何してんですか」
「休憩」
「あー、休憩。え、ここで?」
「見りゃ分かるだろ」
いやいや見て分かんないから質問してんのに。突然柔らかな蜂蜜色の髪が俺の硬い膝の上に乗ってきた。え、なんで膝枕?それも男の膝枕とか痛いだけだと思うんだけど。たまにこの人、する事が唐突だし何考えてんのか分かんねー時あるんだよな。
「疲れたんだよ」
「朝から勉強してますもんねー」
「んっ…そうだな」
さっきより低い位置にある髪を撫でると宮地サンがすごく気持ち良さそうに目を閉じる。う、すごい、今、キュンってなった。何なんだよ。この人可愛い。
膝に頭乗せてきた時もドキドキしたけど今も心臓痛いかも。
「朝から構ってやれてねーな」
「へ?」
「隣であんな風に見られたら気にしない訳ねーだろうが」
えっ。は?なに何だよ。
いきなり宮地サンからデレられて今度こそ息が止まった気がした。
俺、そんな見てたか?
邪魔にならないように結構外見てた筈なのに。
段々と混乱してく頭に思わず宮地サンの閉じた目を覆うよう俺はそっと掌を翳す。
「あと少しだから待ってろ」
「…。別に」
「今は俺」
腰に回ってきた腕に顔が熱くて口元がだらしなく緩んで、どうにもしまりのない顔しか出来ない。
今は、宮地サンを甘やかすから。
「じゃあ後で、俺、お願いします」
精一杯口にしてみた。
俺のお願い。
「素直じゃねー奴」
「すみませんねー」
素直な可愛い奴じゃなくて。
あぁ互いに顔が見えなくて良かったかもしれない。
二人とも赤かったなんて、後から気付いたことだったけど。
「別に。それがお前だろ。一年一緒にいるからな。舐めんな轢くぞ」
「…、…ぶはっ。舐めてなんかないですよ」
変わらない普段の言葉だったけど早口で捲し立てるから俺は誤魔化すように笑った。
あぁくっそ。これ以上は心臓に悪いっての。
お構い無しの宮地サンのデレに俺は表情を崩すしかなかった。



【互いに想いを伝えることが下手くそです】

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