お前限定で好きだとか言わせんな

何て事はない日曜の午後。
昼飯も食べて窓際に腰を下ろせば暖かな陽射しが差し込み俺は瞼を下ろした。
目を閉じれば遠くで車の走る音や近所の公園で子供たちが遊んでいる声が届く。
私物として持ち込んだお気に入りのクッションを枕替わりにゆっくりと流れる昼下がりの空気は睡魔を運んでくる。
ふわふわのラグの上で寝転ぶのは日課となっており微睡んでいると目を閉じていても分かる、暖かな日光が遮られて影が出来た。
「宮地サン、寒い暗い」
「まだ10月だろうが。ほらもっとそっち行け」
「あんただって寒いんじゃないんですか」
俺より15センチも大きな宮地サンが窓際に座ってきて俺の身体を容赦なく押してくる。
幸いにもこの前一緒にインテリアを見に行った時に買った大きめのラグなので俺の身体はまだふわふわと暖かな場所にあるがクッションから頭が落ちてしまって地味に痛い。
微睡んだ意識が浮上していき薄く目を開けて相手の動きを見ていた。
宮地サン、狭い。
「洗い物お疲れさまでーす」
「おー」
「俺の料理美味しかったですかー?」
「おー」
やる気のないテキトーな返事に機嫌が悪くなることは滅多に無くなった。
慣れと言うか何と言うか。
因みに此処は宮地サンが一人暮らしをしているアパートで俺は休みの日になると入り浸っている。
部活がある日は部活が終わってこの家に来て特に何かをする訳でもなく過ごす。
今日は部活が休みだったから俺が昼飯を作って洗い物は宮地サンがしてくれた。
俺はクッションを手繰り寄せて枕ではなく抱き枕のように胸の上に置いた。
宮地サンは後ろにあるソファーに背を預けて雑誌を読んでいる。
一番暖かい場所を占領しているが諦めた。
これは俺が一年かけて学んだ事だ。
「宮地サン」
「何だよ」
特に考えもなしに名前を呼んでみたから俺は口を閉じた。
雑誌を捲る手は止まらなかったが突然俺の視界に無骨で大きな手のひらが見えてそれは頭に触れた。
何度か撫でて俺のデコを覆うように添えられた。
視界の半分が暗い。
「何すか」
「別に」
「ふーん」
会話に意味なんてない。
宮地サンは俺の晒したデコが大層お気に入りの様で部活に入ってからよくデコピンをされて可愛がられたものだ。
俺はそれが痛くて仕方なかったけど。
視界の半分を手に覆われたまま何度か瞬きをしているとゆっくりとその手は離れた。
「お前瞬きすんなよ」
「しないと目が乾くんですけど」
「まつ毛擽ってぇんだけど、デコピンすんぞ」
「それは勘弁したいでっす」
俺ってそんなにまつ毛長かっただろうか。
真ちゃんみたいに下まつ毛は長くない。
寧ろ真ちゃんが長すぎるだけで俺は平均的だ。
離れていった手は俺のすぐ横に置かれて片手で雑誌を読み続ける宮地サンを見上げた。
日の光に照らされて溶けてしまいそうな髪の色は甘いものを連想させる。
俺そんなに得意じゃないけど、宮地サンの髪色は紅茶に溶けるきらきらした蜂蜜みたいに甘そうで好き。
絶対に口になんてしないけど俺はその髪を見た時にいつも思ってる。
触ったらふわふわしていて幸せになる。
まぁ俺から触るって事はそんなにない。
まず俺の身長だと撫でる事しか出来ないからだ。
暫く雑誌を真剣に見る横顔と髪を見ているとすぐ横の手が指先で数回ラグを軽く叩いた。
「手、空いてる」
「へ」
すごく間抜けな声が出た。
宮地サンの視線はずっと雑誌に向いたまま。
「俺は移動する気ねーぞ。お前が来い」
「宮地サン寂しがり、っ、いってーいてぇ」
「もう一発行くか?」
「うぅ…何この人」
意図が読めてにんまりとした顔で俺が触れるより先にデコを叩かれた。
すげー良い音。すげー痛い。
この人恋人にも全く容赦がないから困る。
俺が痛みで悶絶しているとその手がまた髪に触れてきた。
今度は俺の視界も明るい。
涙目になって宮地サンを見てもやっぱり俺の方なんて見ていなかった。
「さみしがりはお前だろ。この前俺がこうしてたら拗ねたじゃねーか」
「なっ…!」
それはまだ春が終わりを告げる頃の話。その時は今まで当たり前のように毎日会っていた日常が崩されてしまい週末にしか会えない日々に俺が参ってた。
無意識に教室や廊下、体育館で捜してしまい見付からない事実と居ない非日常が日常と化していく現実に苛ついて悲しかった。
金曜日に部活が終われば走ってこの家まで来ては宮地サンにただいまより先に抱きついたのは思い出しくもない恥ずかしい過去だ。
いや、まだ数ヶ月しか経ってねーけどさ。
そんな時に宮地サンが今と同じように雑誌を読み始めて俺の話も生返事で完全にヘソを曲げた俺は黙って帰ってしまった。
本当は帰る気なんてなかったのに子供の自分に呆れた頃、宮地サンが迎えに来てくれて外だって言うのに涙目になっていた俺。
それを指摘されて俺は顔が熱くなる。
宮地サンが心底楽しそうに笑みを浮かべその視線は俺を捉えた。
穴があったら入りたいとは正にこのこと。
「あの時は可愛かったよなー、泣きながら俺の名前呼んで」
「な、いてなんか」
「だから素直に甘えとけ」
「……宮地サンってほんと俺と会話する気ない」
「あるに決まってんだろ轢くぞ」
これが大人の余裕ってやつなのか。
2歳しか違わない宮地サンは妙に大きく見えてそれもかっこいいですね!とか口が裂けても言わない。
俺はクッションで顔を隠して熱くなった顔を隠す。
上から楽しそうな笑い声を聞いて意地の悪い先輩だ。
あの時あんただって焦った顔して追いかけてきただろとか悪態をついてみる。
心の中で。
「俺の此処空いてるから早くしろ」
「はいはい今和成くんがお邪魔しまーす」
半ば自棄になって俺は身体を起こして宮地サンの腕に頭を乗せてみた。
あぁ、くっそ。
この人が焦った姿とかもっと見たいのに何で俺ばっかり。
高校にいる頃は比較的見れたって言うのに最近は見る回数が減った。
頭をぐりぐりと押し付けると空いていた手が俺の頭を更に引き寄せて何度か撫でてくれる。
それだけで機嫌が良くなる俺ってどんだけ単純なんだよ。
週に数回しか会えないだけでこうなるとか俺って遠距離恋愛とか無理だわ。
「宮地さーん」
「んだよ」
「呼んだだけ」
「お前暇なの?」
暇じゃないけど暇。たまにはこうしてゆっくりと時間が流れるのも悪くないから俺は宮地さん越しに外を見た。
いつの間にか空はすっかり高くなって夏のように手が届く気がしない。
ガキの頃はジャングルジムに登れば空に触れるとか考えて一生懸命だったよな。
もう少しで寒さも本格的になるがその前に文化祭が待っている。
あ、文化祭。
俺のクラスは確か。
「ねー宮地サン」
「だからなんだよ」
「文化祭来てくれます?」
「あーそんな時期か」
「用事開けておいてくれないかなーって」
「暇だったらな」
また出た。
暇だったらって言葉。いい加減聞き飽きたっつーの。
何で忙しいのか知らないけど口を尖らせたまま無言で頭を押し付けていたら突然だった。
頬に手が添えられたかと思えば上を向かされ宮地サンの顔がドアップになる。
「嘘だバカ。撲殺すんぞ」
「それじゃ俺は待ってますから」
唇が触れそうになる距離で楽しそうに笑う宮地サンに踊らさたと気付いた時には手が離れた。
悔しくて俺からキスをすれば後頭部に手が回されて深く食いつかれる始末。
あぁ俺本当にこの人に敵う気がしねーわ。
「いやー、この雰囲気と言うか文化祭の醍醐味ってこれだと俺は思うんだけど、どうよ真ちゃん」
「そんなことよりバスケがしたいのだよ」
「一応さぁクラスの出し物には積極的になった方が良いぜ。人事を尽くさないつもりかよ」
「…全く」
お、やる気になったみてーだ。文化祭が明日と迫った校内は酷く慌ただしい。
斯く言う俺たちも教室の飾り付や明日についての打ち合わせで走り回っていたところ。
因みに今は休憩中。
日が落ちていき辺りは暗いと言うのに全ての教室に明かりが付いていて今自販機の前で喉を潤す俺たちの前を通り過ぎる生徒は後を絶たない。
つーか真ちゃんはおしるこなんかで喉が潤うのか。
甘くて逆に喉乾かないのかよ。
文化祭は当日盛り上がるのも勿論だが準備期間の方が楽しいって俺は思うわけ。
だからこの雰囲気は結構好きだし。
真ちゃんは文句を言いつつも準備をしているから満更でもなさそうだ。
このツンデレエース様め。
大体扱いは分かってきたから良いけど慣れるまでは中々大変だったなぁってしみじみ。
今でも少し理解を超えることもあるけどそれでも出会った時に比べれば慣れてきたもんだ。
「明日は真ちゃんの魅力にどれだけの女の子がやられるのか見ものだな」
「お前は……」
「んー?」
「あれで良いのか」
飲み終わった缶をゴミ箱目掛けて投げると軽い音を立て落ちていく。
バスケ部が外すと結構煩いんだよな。
お前バスケ部のくせにこれぐらい入らないのかよってやつ。
休憩終わりーって言って俺たちは賑やかな廊下を歩き始める。
振り返った真ちゃんは気乗りしない顔で俺は思わず足を止めた。
「俺は明日が楽しみで仕方ねーけど?」
「本当に変わっているな」
「まぁまぁくじで決まった訳だし?頑張るしかないっしょ」
それだけ言って笑えば真ちゃんは溜息を吐いて歩き出す。
俺もそれに並ぶように歩き明日の事を考えた。
宮地サンは明日来るって言ってたから何の問題もない。
久しぶりに此処で会える、それだけで俺のテンションは上がっていて今日眠れるかどうか分からない。
これじゃあ遠足前の小学生と同じだ。
今から教室に戻ってもう一度打ち合わせがある。
「俺は楽しめればそれで良いからなー。」
楽しいか楽しくないかどちらが良いかって聞かれたら当然楽しい方を取る。
嫌々やるよりは自分から率先して取り組んだ方が絶対に面白いだろ。
真ちゃんじゃないけど文化祭でも人事を尽くす。
俺も真ちゃんも互いの姿は見ていない。
楽しみは全部明日に取っておいた方が盛り上がるだろ。
「まぁその前に俺真ちゃんの格好見て笑い死ぬかも」
「ふん…俺の方こそお前を見て笑ってやるのだよ」
「ぶっは、それちょっと見てみたいかも」
真ちゃんの爆笑する姿とかレアすぎて見るしかないっしょ。
俺は元々くじ運が無いってことぐらい知ってるけど今回はそれすら感謝した。
宮地サンも驚くか笑い死ぬかどうか分かんねーけど。
賑やかな廊下を歩き教室に戻れば何人か調理室から戻ってきたみたいで甘い匂いがする。
試作品って事で持ってきてくれたみたいで俺もひと切れだけもらった。
甘いものはそこまでじゃないけど腹が減ってるから助かる。
黒板には普段あんまり使わないチョークと折り紙で作った輪っかや風船が飾ってあり机も綺麗に配置してあった。
「これで明日俺たちが完璧な接客すれば盛り上がるな、真ちゃん」
「全く仕方ないのだよ。」
「頑張ろうぜ」
「当然だ」
テーピングの施された指先で器用に眼鏡を上げた真ちゃんの目はさっきよりもやる気になっていて俺もつられて笑みを浮かべた。
俺たちのクラスは当たり障りのない喫茶店だ。
他のクラスも飲食関係は多かったけど抽選の時に真ちゃんを連れて行ったおかげでうちのクラスは希望通りのものが出来る。
さっすがエース様。いや、おは朝か?
どっちでも良いけど普通の喫茶店じゃインパクトがないって事で衣装がちょっと変わってるって訳。
まぁここまで言って察しの良い奴はわかったと思うけど、それは明日のお楽しみってことで。
案の定俺は普段より目が早く覚めて、こんな時でも朝練がしたいって言う真ちゃんと一緒に学校へと向かった。
昨日見たけど校門も綺麗に飾ってあって文化委員や生徒会の人たちがもう準備を始めている。
何人かの顔見知りに挨拶を済ませ俺たちは普段と変わらない練習を行う。
練習を怠った日はないって言葉は嘘じゃない。
だからどんな時でもシュートを決める相棒に俺も負けじと汗を流す。
早めに自主練を切り上げ携帯を見るとメールが届いていた。
宮地サンからだ。
昼前には行くって内容で俺は返信をする。
「しーんちゃん。今日宮地サン達昼前に来るってよ」
「そうか。」
「調度真ちゃんの晴れ姿もお披露目出来るんじゃね」
「それはお前もだろう」
「俺は良いんだよ」
だって俺は恥とか全部捨ててあの宮地サンが崩れた顔見てみたいしと言えば性格が悪いって言われた。
笑い飛ばされる可能性もあるけどその時はその時だろ。

「っ…、…、し、…真ちゃ…っぶは」
「笑うなら笑えばいいのだよっ」
「ぎゃははは、こ、これは想像以上…っ」
いや本当に想像以上。燕尾服に身を包んだ真ちゃんのハマり具合に俺のツボが刺激されてさっきから笑いが止まらない。
震える手で携帯を操作し取り敢えず一枚。
煩わしそうに白い手袋を見つめ俺の肩を叩いてきた。
地味にいてーけど面白さの方が勝ってる。
「はー、笑った。いやいやでも普通に似合うんじゃね」
「散々笑われた後に言われても馬鹿にされてるようにしか聞こえん」
「やだー真ちゃん、本当によく似合うのに」
「気色悪いのだよっ」
俺の裏声を気色悪いとは何事だよ。
まだ着替えの最中だったけど思わず覗いちまった。
ダブルブレストのウェストコートの上から黒いジャケットを羽織った姿は本当に良く似合ってる。
真ちゃんが歩く度に後部の膝丈辺りで割れた裾が揺れた。
女子の歓声は勿論、男子からも似合ってると言われる。
「それで、高尾はいつ着替えるのだよ」
「えー、取り敢えず執事な真ちゃんを撮りたいのだよ」
「真似をするな。着替えてこい」
「へーい。仰せのままにー。って今日は真ちゃんがこれ言う立場だっけか」
あの緑間真太郎が今日一日だけ人の命令に従う執事だなんて想像しただけで笑いが止まらない。
あーもー真ちゃんだけにコスプレさせておくんだった。
俺は衣裳室として借りた部屋に入り自分の名前が書かれた衣装を手に取る。
「いやー真ちゃんが真面目担当なら俺はお笑い担当だよな」
ホントよく出来た世の中だ。
俺は黙々と学ランを脱ぎ普段自分が絶対に着ないそれに袖を通す。
着替え終わった俺は被服室で借りた全身鏡の前に立つ。
うわー意外と寒い。特に足が!
「高尾、遅いぞ。何をして」
「うわっ真ちゃんっ!俺、まだ心の準備がっ!」
一応昨日も着て今日は宮地サンが来るからと思って着てみたけどやっぱり人前に出るのって結構勇気のいる格好でそんな時に真ちゃんがいきなり断りもなしに入ってくるから心臓すげードキドキ言ってんだけど、それもまだ俺はスカーフを巻いてないからこれは完全体じゃない。
「…」
「………」
暫く沈黙。
「くっ…っ、…」
「おい緑間お前笑うならしっかり笑えよっ」
思わず懐かしい苗字呼びをする程に俺は混乱している。
真ちゃんが肩を震わせて笑いを堪える姿はさっきの俺達と正反対だ。
その声が届いたのかクラスメートが入ってきて様々な反応を返してくれる。
すげー笑うやつも居れば女子から可愛いとか。
俺はもう良いやと一度溜息を吐いて吹っ切れた。
真ちゃんが笑った時点で何か吹っ切れたんだけど取り敢えず衣装係りの子にスカーフの巻き方が分からない事を告げると態々巻いてくれる。
その間に俺は黒いニーハイをはく。
セーラー服って結構と言うか意外に寒い。
女子ってこんなもの着て毎日学校通うとか尊敬する。
と言っても俺が着ているのはこの学校の制服じゃなくてドンキで買ってきてくれたものだ。
白地に濃紺の襟が特徴的でスカーフは赤。
プリーツスカートも襟や袖の色と同じく濃紺であり膝丈ではなく少し短めだ。
こんなもの文化祭の時にしか着れない。
「おーい、真ちゃんいつまで笑ってんだ」
スカーフを巻いてくれた女の子に礼を言ってまだ震えている真ちゃんを軽く叩いてみせた。
俺の姿を見るとまた目線を逸らす。
さっさと教室に戻って最後の打ち合わせをする際に俺は別の女子から花の付いたヘアピンを貰いそれを前髪に、あまり強すぎない香水と今日の為にと色付きのリップまで塗ってもらった頃には完全にスイッチが入っていた。
「執事様、準備は良いか」
「お前の姿も漸く見慣れてきたのだよ」
「俺が言いたいのはそう言うこっちゃないのだよ」
コノヤローと睨みつければ髪型まで変えた真ちゃんは似合ってると茶化してきやがった。
あれ、もしかして真ちゃんもテンション高い?
「ようこそいらっしゃいませ。3名様ですか」
「緑間何してんだ」
「接客ですが。3名様ですか」
「おう、3名様だよ」
案の定と言うか真ちゃん効果の御蔭で人の波が続いている。
俺が調度呼び込みも兼ねて調理室からパウンドケーキを運んでいる時に聞き慣れた声が耳に入った。
周りからの視線もだいぶ慣れてきて他校の奴らから写真良いですかと聞かれ教室に入る前に足止めを食らう。
「写真はまた後でお願いしまーす」
なるべく可愛らしい声で言えば何故か歓声が上がり俺はその隙にと教室に入った。
お、宮地サン発見。
調度俺に背を向ける形で座っていて俺と目があった大坪サンと木村サンはすげー驚いている。
メニューを見てる宮地サンはまだ気付いていないみたいで、2人に黙っててもらうように人差し指で口元を抑えた。
「お客様ーご注文はお決まりでしょうか」
軽快な足取りと弾んだ声で宮地サンの隣に立てば何処か不機嫌なその顔がメニューから離されて俺を見る。
「あ?まだだ………」
「早くしてくれないと休憩になっちゃうんですけどー」
小首を傾げながら言えば木村サンがついに吹き出し大坪さんなんか顔赤くしながら目ぇ逸らしちゃったよ。
おいおい。肝心の宮地サンは口を開けたままアホ顔晒してるし。
「たか、おま」
「はーい看板娘の高尾ちゃんです」
思い切り笑い飛ばされるかと思ってたんだけどそうでもなかった。
「お前何て格好してんだ」
「くじでセーラー服引き当てちゃって」
なるべく可愛らしい仕草って事でさっき女の子から教えてもらった通りにやれば周りから可愛いなんて声が上がって、それを聞いた時には宮地サンに頭を掴まれていた。
痛い痛い痛い。
「申し訳ございませんお客様。暴力を振るわれても困ります」
「し、真ちゃん」
「はっはー、何いっちょ前に執事らしくしてんだ轢くぞ緑間」
「それはご勘弁を」
頭の痛みが無くなったかと思えば燕尾服の真ちゃんが俺と宮地サンの間に立っていた。
う、これ顔が見えなくても分かる。
すげー怒ってるよ。
「高尾、あとで校舎裏な」
「なっ!血なまぐさい臭いしかしないじゃないですか」
呼び出しの場所としては良く使うところだけどあの黒い笑顔で言われるとどうしても暴力沙汰しか思いつかない。
「はー…、取り敢えず仕事しろ。看板娘なんだろ」
大きなため息を吐き出した宮地サンの手が俺の髪に触れてさっきとは違い優しく撫でてくれた。
これいつもの格好だったら周りからきっと変な目で見られるんだろうけど今は女装しているからか真ちゃんや他の奴らのコスプレ姿を見てるのか妙なことを言う人間はいない。
「じゃ、ここは真ちゃんの奢りなんで」
「何を言ってるのだよ。良いから高尾、お前は接客に戻れ」
「へーい」
教室の中は満席で賑わっている。
俺は先輩たちに手を振りまだ注文を聞いていないテーブルを回っていく。
やっぱり執事は人気なようでまともに仕事が進まない。
それにしても俺達人事を尽くしすぎじゃね?
俺も話しかけられる度に可愛らしく接客しているし。
2組の客が案内されたと聞きテーブルに向かえばさっき教室に入る前、廊下で写真を撮って良いかと聞かれた他校の男子達だ。
「写真撮っていいですかー?」
「先に注文お願いしまーす」
「じゃあ注文したら」
「何言ってんだ写真は不可だ。焼くぞ」
「いてっ」
後ろから思い切り頭を叩かれた。
誰かなんて聞かなくても確認しなくても分かる。
頭を容赦なく叩いてくる人なんて宮地サンしかいない。
やっべー、この人キレてるよ。
振り返らなくても分かる空気に俺は慣れているけど他校の初対面の奴がこの人のキレた姿を見て怯えないわけがない。
背でかいし威圧感半端ないだろうななんて他人事。
つーかこの後どうしよう。
「おい緑間。もうこいつ休憩だろ休憩だよな」
「へ、あの宮地サン?」
「休憩です」
「え、真ちゃんっ」
俺の休憩って確か12時じゃなかった?まだ11時半なんだけど。
意味が分からずに俺は宮地サンに引きづられ途中目が合った木村サンからは何故か良い笑顔で手を振られる始末。
あれ、なにこれ。
「宮地サン。取り敢えず手を離して欲しいなー」
「あぁ?」
「なーんて」
「お前制服は」
「え?二階の、」
制服の置いてある教室の場所を告げれば手首を掴んだ手は離さないまま人ごみを気にする素振りもなく歩いていく。
1年経っても大きい背中だ。
大学生になってからもっと大きくなった気がする。
騒がしい廊下を迷うことなく歩くのは去年まで此処に居たから。
いつかの夕方は誰も居ない廊下で手を繋いで歩いたっけか。
恋人様が怒ってる時に不謹慎だが思い出してると空き教室と言っても今日一日俺たちが使っている教室に付き迷う事なく扉を開けた。
しっかり鍵を締められ俺は肩が震える。
やべーよ、なんだろ。何で怒らせたんだろ。
制服はアイドルが着るものだとか言われたら俺どうしよ笑うんだけど。
「おい」
「へい」
地を這う低い声に思わず声が裏返ちまった。
「お前これを見せる為に呼んだのか」
「宮地サン驚くかなーって」
「他の奴にも見られるって事は考えてなかったのか」
「一応クラスの出し物なんで」
頑張って人事を尽くさないと怒られるとか何とか言ってたら宮地サンが近づいてきて思わず身構えた。
殴られたらどうしよう。
そんな馬鹿な考えは肩に乗った重みで消える事となる。
明るい髪の色が視界の端に写ってまた大きな溜息を吐き出す。
「あー轢きてー」
「えっ」
「お前の姿見た奴。つーかここまで遠いしよ」
そこまで言われて俺は一気に耳まで熱くなった。
俺としては女装なんてタダのウケ狙いだったから余計に恥ずかしくなる。
当初の目的としては女装した俺を見てあまりの可愛さに慌てれば良いとか思ってたけど自分で見たセーラー服姿は当然だが可愛くなくてこれは完全に引かれると踏んでいただけに今の一言は反則だ。
「み、宮地さん?」
「前の俺なら絶対笑ってたな大爆笑してた」
「俺的にはそっちでも」
「今可愛く見えるとか俺も」
「あー、うわー宮地サンそれ以上はタンマ」
思わず耳を塞いで俺はその先を聞かないようにした。
待て待て待て、それ以上は俺の心臓がもたない。
恥ずかしさで爆発する。
女装してるからって思考まで乙女になる事ないんじゃねーの俺!
焦って欲しかったのに俺の方が焦ってしまい赤い顔を見られないように背を向ける。
もう無理だ。それよりこれ脱ごう。
こんなの着てるから駄目なんだよ。
「お前、俺の言葉を遮るとか良い度胸じゃねーか」
「いや、あのですね、ほんとにこれ以上は無理」
「顔あっけ」
「っ、」
顔を覗き込まれ俺の顔は更に熱くなる。
騒がしい廊下と鳴り響く音楽が遠ざかっていき目があった宮地サンの顔は笑っているくせにいつもより余裕がない。
その表情に俺は息が止まりそうになる。
駄目だと思うより先に宮地サンの顔が近づいてきてそのまま唇が塞がれる。
腰に腕を回され引き寄せられるとより一層深くなったキスに俺はクラクラした。
舌を絡ませあい軽く噛まれるだけで刺激が走り俺は甘えるよう首に腕を回し深いキスをねだる。
負けじと舌を滑り込ませ歯列をなぞるがその度に強く吸われてしまい腰が砕けてしまいそうになる。
んぅ、ほんと、きもちいい。
「はっ、…ぁ、はぁ」
「はぁ、えろい顔」
「ぁ、ま、まって、ちょっとストップ」
セーラー服を着ている俺の腰を撫でる手を思わず掴む。
つーかこれ短すぎてちょっと動くだけで腹とか見えるんだよな。
息を整わせ宮地さんを見れば途中で止めたから頗る機嫌が悪い。
「此処じゃ流石に不味いんで」
「あー…分かったよ」
今日は文化祭で人の出入りも多い。
今だって鍵は閉めたけどこれから休憩に入り午後から接客する奴らは絶対にこの教室に来る。
それを説明するより先に理解してくれた宮地サンに安心して俺は制服を手にする。
「おい、何着替えようとしてんだ。そのままでいいだろ」
「嫌だ、宮地サン変態」
「うっせーよ縛るぞ」
痛い。また頭を叩かれた。
一応俺って恋人の筈なのになんでこんな雑な扱いを受けてるんだよ、さっきのときめき返せ。
やっぱりただの変態だ。
このままヤるとか変わった趣味を持ちすぎてちょっと心配になる。
俺は制服を元の場所に戻すと、ふと目に入った一着の衣装。
いや衣装と言っても良いのか分からないけど。
「宮地さーん」
「んだよ」
「折角だからこれ着てください」
俺が手にしたのは見慣れた学ラン。
借りた衣装の中に応援団のハチマキと一緒にあって学ランだけを取り出して押し付ける。
俺だけコスプレとか恥ずかしい事この上ない。
もうこうなったら宮地サンも巻き込んじまえって自棄になった結果がこれだ。
どうせこのまま人気のない所って言えば部室に向かう事になる。
それならもういっそ学ラン着てパッと見部外者って見えないようにすれば良いんじゃね?とかテキトーに理由をつける。
「これ着たらヤるんだな」
何でこの人こんな直球で聞いてくるんだよ。
頷きたいようなそうでないような微妙な心境で小さく頷けば服を脱ぎ出す。
思わず背を向けるとやっぱり着慣れた服だと早いのかすぐに着替えは終わった。
振り返れば今はもう見ない、それでも見慣れた制服姿の宮地先輩が居て俺は思わず凝視してしまった。
「小さい気がするんだけどよ」
「…、そんな感じでしたよ」
袖を見ながら話す宮地サンの姿に感動する俺が居る。
思わず漏れた笑みを隠す必要もなく笑いかければ今度はさっきより優しく手を掴まれた。
「行くぞ。これ以上焦らされるのはゴメンだ」
「なっ、に、言ってるんすか」
見慣れている筈なのにまた心拍数は上がっていて制服姿の宮地さんってこんなにかっこよかったのかと俺は部室に着くまで呼吸も脈拍も全ての速度が上がったまま。
校舎内にいる時よりは静かだがやっぱり賑やかな声が溢れている。
綺麗に片付けられた部室のロッカーに押し付けられると唇を塞がれた。
途中で邪魔をされないようにと部室の鍵はしっかりと施錠されている。
こんな日に態々部室を使う奴がいるとも考え難いんだけどな。
「んっ…ん、ぁ」
後頭部と腰に回った腕の力は強くて逃げ出せない。逃げ出す気もないけど。
俺も何だかんだ言ってこの状況を楽しんで興奮してるから普段よりも早く下肢に熱が集まる。
「はっ、…おい、舌出せ」
「んあ、はぅ…んん」
言われるがまま舌を出せば宮地サンのそれが絡まる。
普段なら見えない場所で触れ合うのに今ははっきりと舌同士が擦れ合い絡まり合う。
目の前には懐かしい学ラン姿の宮地サンでその瞳はしっかりと俺を映していた。
蕩けただらしない表情の自分と目が合い耐え切れず目を閉じる事で見なくて済んだのだが俺の舌を食わんとばかりに動いた相手の動きが読めず、いつものように宮地サンの口内に誘われた。
「はぁ、あっ…んぅ、みゃ、じ…さ」
「んっ……」
ちゅるっと音がして舌を吸うその音と行為に腰が砕けてしまい崩れるより先に部室に置いてある椅子に下ろされた。
足りなくなった酸素を取り込んでいると宮地サンは俺の前にしゃがみ込み、この女装に寄って綺麗に毛を剃られた足に触れてきた。
「な、にして」
「足、ちゃんと引き締まってんな」
あ、注目すべきはそこなのね。
バスケ部の先輩らしいと言えばそうだけど無くなったすね毛に付いて何かしら言われると思ったのに一切触れてこない。
手が脛から膝、太ももを撫で始めてきて俺は思わず身震いをした。
「んっ…」
「おい、勃ってねぇか気のせいか」
「や…気のせいじゃない、です」
分かってくるくせに聞いてくる辺りが変態だ。
あーでも俺も変態の仲間入りなのか。
こんな格好してさせて興奮してんだから。
太腿の内側を指先でなぞりあげ足の付け根を押されると息が上がる。
まだ直接触られていないのに。
プリーツスカートの中まで遠慮なしに入ってきた手は何をしているのか目視では分からず頼りになるのは感覚だけ。
肌を撫でる指先に神経を集めてみても見えない分余計に過敏に反応を返す身体が憎い。
「はっ、…みやじ、さ……も、さわって」
「それを色気あるパンツはいてれば良かったんだがな」
スカートを少しだけ捲られて俺は思わず身体が熱くなる。
女子でもないのになに、この反応。
「っ、流石に、そこも女物は恥ずかしいし、無理」
「スカート捲られた時に洒落にならねーし見られた場合は埋める」
怖いことばっかり言う先輩をどうにかしてくれ。
つーか俺が女物のパンツとか穿いてたら笑いすぎて死ぬんじゃねーの。
セーラー服に関しては吹っ切れたけど流石にそこまでノリノリな高尾くんじゃない。
「まぁお望み通りに触ってやるよ」
焦らされるのはごめんとか言っておきながら普段と変わらないと言うかいつも以上に楽しそうなのは俺の気のせいじゃない筈。
腰を浮かせろと言われた通りにすると下着を下ろされ抜き取られた。
う、まじでこれは、すーすーする。
スカートを持ち上げていた宮地サンは何を思ったのかそのまま紺の布地の中へ潜り込む。
「はぁ?ちょ、なに…ぅあっん」
「こら、あんま動くな」
「ひあっ、そこで…しゃべるとっ」
息が、熱い吐息が直接俺の性器に吹きかけられる。
紺のスカートからあの溶けてしまいそうな蜂蜜色の髪が半分だけ見えた。
視覚的に初めて見る光景に俺の身体は有り得ないほど熱を帯びていき宮地サンが喋る度にそそり立った熱の裏筋を吐息だけが這っていく度もどかしさに堪らなくなる。
「ぁ、はっ…はぁ、あ」
「おい、まだなんもしてねーけど」
「んあっ」
内腿に食い込む指と吐息だけでダラしなく先端から先走りの液を垂れ流しイキそうになっている自分は一体何なんだ。
言われた通り直接的な刺激は無い。
ただ間接的に酷くもどかしい。
スカートに隠れている為、次に何をされるのか全く分からず呼吸を荒くして待つだけ。
ゆっくりと内ももから付け根、そして奥まった孔の周辺を撫でる指と次第に宮地サンの呼吸も感覚が短く荒くなっていく、それだけが分かる。
「みぁ、…みゃ、じ…さん…ぅあっ!ぁあ」
「んっ…、」
本当に突然だった。性器が熱い粘膜に包まれると容赦なく吸われる。
強い力で舌を吸うみたいに扱われてしまえば今まで焦らされていたものが吐き出せそうだって言うのに一度口を離され手であわやわと扱かれる。
「ふゃ…、ぁ」
あとちょっとでイけそうだったのに。
物足りなくて俺は半分しか見えていないふわふわの髪に触れる。
震える指先で何度か撫でるとだらしなく蜜を垂れ流す先端の窪みに尖らせた舌先でつつかれ、ざらついた舌全体で味わうかのように舐めてきた。
さっき塞き止められた快楽の波が一気に内側から溢れようとする。
あ、これ無理。もう出る。
「みやじ、さ……ぁあ、もっ、で…る、っ、ひ…ぁああ」
散々焦らされた俺は呆気なく達してしまう。じんわりと広がる布地の濡れた重たい感触に思わず視線を下げて俺は口を引きつらせた。
濃紺のスカートが白濁とさっきの先走りで濡れている。
「お前、どんだけ出すんだよ。溜まりすぎだろうが」
「う、ぇ…宮地サン、飲んだん、ですか」
やっとスカートの中から顔を出した宮地サンの髪にも少しだけ俺の精液が張り付いていて俺は思わず袖で拭った。
「いや、流石にこんなすぐだとは思わなかったから全部は無理だった」
「恥ずかしい報告どうもありがとうございます」
「今度は俺の、してくれるよな」
「選択肢に、はいかyesしかないのは気のせいですか」
「当たり前だろ。轢くぞテメー」
ずいっと目の前に出されたのは俺のものより大きくてそそり立つ宮地サンの性器。
よく、も無いけど学ランだからこの光景は去年の事を彷彿させる。
いつの間にと思ったけど椅子に座ったままでは流石に触りづらくて俺は床に膝をつくと宮地サンがしてくれたように舌先で溢れ出る液を絡め吸い取っていく。
口の中に入れようにも大きすぎて、まずは袋を揉みながら竿を上下に扱き後頭部に手が添えられた頃にはカリの部分にも舌を這わせる。
さっきやられたお返しって訳じゃないけど丹念に舐めては、ちゅっと吸い上げ視線を上に上げた。
「って、め…!」
「んんぅ、ぅ…ん、ふ…っう」
添えられていただけの手に強く股間に押し付けられ先端だけを調度咥えていた為に勢いよく出てきた精液を口で受け止めた。
う、苦しい。つーか宮地サンのも量出すぎ、だろ。
飲み込もうにも未だ吐き出される白濁に限界を迎え口を離して盛大に咳き込んだ。
「ぇ、げほ…っ、は、はぁ、…ぷは、くる、し」
「くっそ…悪かったよ」
「へ?」
口の中に独特の苦味が広がり飲み込めなかった白濁が唾液と混ざって口の端から肌を伝ったが新鮮な空気を吸いたくて仕方ない。
絶えず呼吸を繰り返せば大きな手が俺の髪から頬を滑るように撫でそのまま上を向かされる。
「お前がえろい顔するから言う前に出た」
そう言うあんたも今すげーエロい顔してるけど。
口に出すより先に触れるだけの口付けを交わす。
色気があるって言うか、何て言うか。
「え、て言うか、宮地サン?」
「何だよ」
「もう勃ってるとかおかしくないですか」
「お前のその姿が思いのほかクる」
「はぁ?な、ちょ、ちょっと」
さっき盛大にイった性器はまたガチガチに硬く勃起しているから俺は信じられないとばかりに見上げた。
俺の腕を掴んで立たせると、さっきまで座っていた椅子に宮地さんが腰を下ろしてあれよあれよと膝の上に乗せられてしまった。
対面で座るこの体勢は心臓に悪い。今日は特に。
学ラン姿だから感覚が麻痺してしまいそうだ。
「んっ」
この格好で足を広げて座ると布地が直接肌に触れる。
ぐちゃぐちゃに汚れたスカートはそのままに俺と宮地サンの性器は見えない。
けど勃ってる。
「んぁ、…はぅ」
長い指が尻を掴むとそのまま指先で孔の入口を何度も擽る。
触らなくても分かる。
ヒクヒクと肉が動き早くナカに触れて欲しくて仕方ない。
内壁がもう熱いものを欲している。
俺は何も言わずに抱きついて自分から腰を浮かせた。
「もっ、これ…ほし…」
「っ、加減してやんねーぞ、この馬鹿」
「ぅあっ、…〜っ、ん」
腰を掴まれたと思ったら勢いよくナカを貫かれ声すら出ない。
一瞬あまりの快楽に頭が真っ白になったが何とか持ち堪え首に腕を回した。
呼吸を整えるより先に下から突き上げられ本当に加減なんて言葉を知らない。
「んぁ、ゃああっ…あ」
内部を擦る熱と結合部がひりひりと熱かったけどそれよりも興奮した頭と身体は迫り来る波に飲み込まれないように、それでも自分から捕まりにかかるよう必死で腰を動かす。
性器がスカートに触れてそれすら気持ちよくて。
前立腺を何度も突かれ声を上げる度、内壁を擦る宮地サンの熱が大きくなっていく。
それが普段より鮮明に感じて俺は強く学ランを掴んだ。
「みゃじ、さ…みゃーじさんっ、ぁあ、ぁ」
「くっそ、お前、可愛すぎるんだよ。殴るぞ」
殴るより酷く力を込めて腰を打ち付けられ俺も自ら気持ちの良い箇所に当たるようにと必死で動く。
下から突き上げられるとスカートも動き先端が刺激される。
内からも外からも擦り上げられて声を抑える事すら知らず宮地サンにしがみついた。
「んっ、ぁああっ」
「いって、っ、ぅあ」
「ひあ、あつ…ぁ、あ…ゃあ」
俺が達した時にナカを思い切り締め付けたみたいでひと呼吸も置かず内側で熱く飛散した精液にイったばかりの敏感なそこは小さな刺激を拾い上げてしまう。
「ぅ、……はぁ、おい、生きてっか」
「死に、ました」
ぽんぽんと優しく背中を叩かれ俺は宮地サンの肩に額を押し付けた。
なんか痛いなと思ったらヘアピンが取れかかっていて今にも髪から落ちてしまいそうだ。
そう言えばこんなものもしてたなーなんて気だるい身体と思考。
繋がった箇所から溢れる体液と精液が混ざり合ったものが隙間から溢れ落ちる感覚は何度やっても慣れない。
つーか制服、すげー汚れたんだけど。
「宮地サン、今日は早かったですね」
「お前に言われたくねーわ」
「宮地サン、コスプレ好きなんですね」
「お前限定でな」
「ごめんなさい」
ばっかじゃねーの。あぁもう本当に何なんだよ。
俺限定で好きとか今日の宮地サン俺をときめかせて殺す気か。
本当は女装した俺を見て別の反応が見たかったけどこれは、これで…良いことにする。意外にヤキモチ焼きで独占欲強くって特に真ちゃんに対して怒りやすい宮地サンのこの反応が見れただけでこの格好した意味って合ったんじゃねーのかな。なーんて。
あと学ラン姿が見れて本当に良かったと言うか。
今だって腕を緩めて顔を見合わせれば少し前と変わらない宮地サンがそこにいる。
「へへー」
「いきなり笑うな。気持ちわりーよ」
「いてっ」
叩かれ慣れたと言えば聞こえは悪いけどスキンシップなのだから俺は嬉しくてもう一度抱きついた。
「高尾、なぜジャージなのだよ」
「ちょーっと色々合って?」
ぐちゃぐちゃに汚れた、それも精液で汚したなんて真ちゃんには口が裂けても言えなくて俺は今着慣れたジャージ姿で廊下を歩き目立つ緑色に近付いた。
本当は学ランに着替えようかと思ったけど面倒だからこのまま。
午前中で当番を終えた真ちゃんも制服に着替えていてそれはそれで少し残念だ。
もう少し笑いたかったんだけどな。
宮地サンは大坪さん達と一緒に先生たちの所に行くって言って別れたばかりだ。
俺は携帯を取り出し画像フォルダを開く。
そこにはさっき撮った宮地サンの学ラン姿があって今度また着てもらうのも有りかもしれないと一人口元を緩めた。
ま、今日の服装もかっこよかったですけどね!
言ってやらねーけど。

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