其れは遠い昔話



「めだかとは全く似てないねお前は」


幼い頃からずっと言われ続けて来た言葉。
私の片割れであり妹である彼女は、天才という言葉では言い表せないくらいなんでもできる子供だった。

それに比べて私は、先に生まれたにも関わらず何も突起した特技もなく、全てにおいて妹に劣っていた。
勉強も出来ない、運動も出来ない、要領だって悪い。どんなに頑張っても妹のめだかに追いつくことは疎か、人の平均すら下回る。そんな良いとこなしな私が妹に対して劣等感を抱くのは必然で。


“母のお腹の中で、良いところを全部めだかに盗られた”


そう思うことで私は不安定な精神を紙一重のところで保っていた。
でもその反面で、私の胸の内に蠢くどす黒い炎は消えることなく、月日が経つにつれて少しずつ育まれていったのだ。

そして、膨らみ続けた憎悪の炎は小さな私の身体では御することが出来るはずもなく、やがて爆発するのは最早必然。

なぜなら、この黒神家にいる天才は妹だけではないからだ。
兄である真黒兄様も姉であるくじら姉様も、人より逸脱した能力の持ち主だった。人より逸脱して秀でている兄妹達。その中でたった一人、人より劣っている私。


私を壊すには十分な環境だった。


「全部全部全部全部全部全部めだかがいけないんだ!ひめから全部盗っちゃうからっだからひめを誰も見てくれない!お父様もお兄様もお姉様もめだかしかみない!全部全部全部めだかがひめから盗っちゃうからっ、ひめが人より劣っているからっ…だからひめは愛されないんだ!誰かひめを愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛してよっ!ひめを見て!もう嫌だひめなんて役に立たないひめなんて愛されないひめなんてっ


消失えちゃえばいいのに!!!!」



そしてその日、私は黒神家から消失えた。



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