臆病者のラブソング(黄瀬)


※黒子←ヒロイン←黄瀬前提


「テツくーん!」


好きな人の名前に思わず反応して振り向けば、そこには私の好きな人――黒子テツヤくんと桃井さんが居た。
二人仲良く歩く姿にチクリと胸が痛む。桃井さんは美人で、成績も良くて、バスケ部の凄腕マネージャーで、完璧な人。平々凡々な私がそんな彼女なんかに敵う訳もないのは分かってる。テツヤくんと桃井さん、二人がお似合いのカップルだって分かってる。


でも、胸が痛い――苦しいよ。


視界がぼやけるのを感じて慌てて目元を拭い、片想いの彼達を尻目にその場を離れた。これ以上その場に居たら泣いてしまいそうだったから。
初恋は叶わないって誰が言ったんだろう。全くもってその通りだけれど。私の初恋は叶わない、私は彼の隣に並べない。分かり切ってることなのに、何処か期待を捨てきれずにいる私が滑稽で笑った。

きっと全部投げることが出来たら楽なんだろう。この恋心も痛みも全部投げ捨てることができるのならば――でも私には出来ない、出来ないはずだったのに、


「俺じゃあ…駄目っスか?」


目の前に居るのは帝光中のアイドルである黄瀬くん。雑誌のモデルもやってて、女子に絶大な人気を誇っている。
なんでそんな凄い人に私は告白されてるんだろう。彼とは何度か会話をしたことがあるけれど、そこまで仲が良いという訳ではなかったのに、


「名前っちが黒子っちの事好きなのは知ってるっス。でも、それでもいいんス。なんだったら忘れるために利用してくれても構わないっスよ」

「…っ、ど、して……」

「名前っちが好きだからっスよ…だから、忘れるためでも、オレの事好きじゃなくても、隣に居られるならいいっス」


黄瀬くんは一体、どんな気持ちで言ってるんだろう。
好きな人に告白することが、ましてや失恋すると分かってる相手に想いを告げることが、どれだけ勇気がいることか私は知ってる。
だって私は、それが出来ない臆病者だから。

きっと今から私がする選択は誰も幸せにはならないんだろう。目の前のこんなにも優しい彼を、いっぱい傷付けることになる。
それでも、自分が楽になるためにこの道を選ぶ私は――


「……本当に、私でもいいの?」

「名前っちが、いいんスよ」


なんて、卑怯なんだろう。



臆病者のラブソング
(願わくば私に、)(天罰が下りますように)



-----------
表記を黒子夢にするか黄瀬夢にするか迷ったけど、落ちが黄瀬なので黄瀬夢にしてみました。

この話を書いた後にこの子達が中学生だってことに気付いた(笑)
こんな達観した中学生が居たら怖いわww

しかし個人的に黄瀬くんはこういう不憫な役回りがとても似合うと思(ry


title by 確かに恋だった


20120617

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -