まどろみシュガー(安心院)


※空想番外


彼女と出会ったのは、本当にただの偶然だった。


“あなたはだぁれ?”

“僕かい?僕は――”


平等なだけの、ただの人外さ。





「………夢…か……」


嗚呼、なんだかすごく中二病的な目覚め方をしてしまったぜ。全く、何処かの端末(ぼく)じゃああるまいし。
内心溜め息を吐きながら、起き上がろうとして違和感。右手に絡まった熱、その先を目で追いかけて漸く直前のことを思い出した。そういえば一緒に昼寝してたんだっけ、と隣で気持ち良さそうに寝ている名前ちゃんを見遣る。


“あじむなじみ……なじみちゃんってよんでいい?”


先程まで見ていた夢を思い出す。
出会いは偶然…そして、必然だったとも言えるだろう。初めて会った時は十にも満たない幼子だった少女が、今ではあどけなさと色香を併せ持つ少女となった。
人類が生まれる前から生きてる僕からしたら、そんな月日は刹那の如くあっという間だったけれど。


「名前ちゃん」


そっと、彼女の滑らかな頬を撫でる。彼女の睫毛が揺れたので起こしてしまったかと思ったが、すぐに安らかな寝息を立て始めたため杞憂で終わった。
琥珀色の瞳に僕を映して欲しいと思う反面、あどけない寝顔を眺めていたいとも思う。


「なじみちゃ…」


僕の名前を呼ぶ声。見下ろすと名前ちゃんの目は相変わらず閉じたままで、起きた形跡はない。先程の声は寝言だと悟り、一体どんな夢を見てるんだかと寝顔を眺めていると、彼女は再び口を開いた。


「なじみちゃ……だいすき…」


そう言って眠る名前ちゃんはとても幸せそうに微笑んでいて。
自然と口角が上がる反面、胸の奥底に燻る何か。その正体に気付いた僕は脱力した。
全く――


「夢の中の自分に嫉妬するなんて……僕も焼きが回ったもんだぜ」


肩を竦め一人自嘲する。やっぱり起きてる名前ちゃんと過ごしたいが、寝ている彼女を起こすのも忍びない。

それならば、夢の中の名前ちゃんに会いに行けばいいだけのこと。

額にそっと口づけて、夢の中の彼女に会いに行くべく僕はそっと目を閉じた。



まどろみシュガー
(僕も、大好きだぜ)


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牡丹様からリクエストいただいた「空想で甘々」でした。相変わらず安心院さんが偽者な上、甘くなってるか自信ありませんが…少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

百合好きなので、この2人をいちゃつかせるのとても楽しかったです(笑)


20130915 (5万打企画)

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