少女の空想庭園(球磨川)


※空想IF(第一章ネタバレ)
※夢主とは別に逆ハートリップ主が存在



この時間を繰り返すのは何度目だろう。一万を越してからは数えるのをやめてしまったけれど、なじみちゃんに聞いたらきっと教えてくれるに違いない。
私はもう果てしないくらいこの時間を繰り返しているのだ。それこそ、私以外の人物の台詞を一言一句間違えずに言えるくらい。

それなのに、


「さてはあんた転成トリッパーね!主人公の双子に産まれるとか超卑怯!あんたみたいなブス、禊くんに相応しくないわっ」


てんせい?トリ…?目の前の女の言うことが理解できない。そもそも、この女を私は知らない。果てしない時間の中、この時に、この女と私は会ったことがない。

それにしても主人公って……まぁ確かに、めだかは主人公体質だけれど。でも卑怯って何。私だって好きであれと双子になった訳じゃない。あれのおかげで私が黒神家でどんな思いをしたか何も、何も知らないくせに…!!


「『名前ちゃん…』」

「なぁに?禊くん」

「『僕、この子に一目惚れしちゃった』」

「…………え?」


聞き間違い?そう思って禊くんを見上げれば、あの女に熱っぽい視線を向けていて。何?何なのこれは。めだかじゃなくて、こんなぽっと出た奴なんかに…?
醜く笑う女の顔が視界に入って心底気分が悪くなる。気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い


「ふふっ、逆ハー補正がある私に勝てる訳ないじゃない!」

「ぎゃくはー、ほせい……」

「神様から貰ったのよ!アンタと違って、私は神様に愛されてるもの!これさえあればみーんな私のモノよ!」

「……そっか…あは、あはははははは」

「な、何が可笑しいのよっ!」


ひとしきり笑って目尻に溜まった涙を拭う。“ぎゃくはーほせい”というものがどんなスキルか分からないけれど、それが私の禊くんを惑わしているのであれば、

そんなもの、消失してしまえばいい。


「ちょっと、何か言いなさいよこのドブス……カハッ」


腹部に螺子が刺さり、血を吐きながら無様に転がる女を蔑む。
現状を今ひとつ把握仕切れていない女は、その痛みに呻いた。


「『可愛い可愛い僕の名前ちゃんにドブスだなんて…』『鏡見ろよドブス』」

「な、なんで…私に一目惚れしたって…」

「『君、ドブスな上に頭までおかしいのかい?』『いくら僕が惚れっぽいからって、君みたいなドブスに一目惚れする訳ないだろ?』『僕にだって選ぶ権利があるさ』」

「…っ!アンタ、一体何したのよ!!」

「名前はね、貴女のいう“ぎゃくはーほせい”っていうのを消失しただけだよ?」

「何を…そ、そんなこと出来るわけないじゃない!高貴くん助けて…!」


女は禊くんがダメだと判断したら、今度は生徒会のメンバーに助けを求め始めた。でも、もう遅いよ。私から、禊くんを盗ろうとしたお前が悪い。


「えっと…君は一体誰だい…?」

「な…んで……」

「あとね、貴女がこの世界で積み上げた時間も、ぜーんぶ名前が消失しちゃった」


私を見上げる女と目が合う。先程まで私を見下していた瞳は一転、恐怖に染まっていて。
その様子はなんとも無様で愉快だけれど、もうやめてなんてあげない。


「まさか…アンタ、最強設定…」

「名前は最初から最後まで、貴女の言うことがよく分からなかったなぁ。あ、なじみちゃんに聞いたら分かるかな?」

「や、やめて……許し……」

「一時の夢、楽しかったね?」


鈍色に光る挟みを女の眉間目掛けて振り下ろす。咄嗟に払いのけた女の手によって、私の手にあった鋏は後方に飛んでいった。その隙に女が逃げだそうとしたので、そのまま女を跡形もなく消失し去る。
私、言わなかったけれど鋏なくてもスキル使えるんだ。鋏はただのパフォーマンス。
…残念、だったね?


「バイバイ、名も知らないモブキャラのひと」



少女の空想庭園
(ね、禊くん)(なんだい?名前ちゃん)(あのね、だーいすき)(ふふ、僕もだよ)

(…って、あれ、そういえば僕達何してたんだっけ?)(もう、禊くんたら。理事長室に行くんでしょ)(嗚呼、そうだったそうだった)



(一瞬だって、禊くんの中に存在させてなんかあげない)



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琥珀様からリクエストいただきました「ネタ帳の空想に逆ハートリップ主投入で、ひめが逆ハー主を潰す話」でした。他は好きなようにしていいとのことだったので、趣味全開で本当好き勝手しちゃいましたが……だ、大丈夫だったでしょうか;;

本当は戦挙戦をさせたかったのですが、短編という都合上逆ハー主には登場後即刻退場してもらう形に。
それにしてもこの逆ハー主、他にも人いるのにベラベラと喋りすぎである(笑)


20130716 (5万打企画)

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