晴れのちハンバーグ(ナギ)




「名前ー。ねぇー名前ってばー!」


作曲に勤しんでいた手が止まる。
私を呼ぶ可愛いらしい声。声の主が分かったため一度はスルーしようとしたけど、一向に呼ぶ声が止まず仕方なしに振り返る。


「……ナギ、私が今何してるか分かる?」

「何って作曲でしょー?そんなことより、僕お腹すいたー。ご飯食べに行こうよー」

「そんなことって、貴方達の新曲だけど…?…私今手離せないから、一人で行ってきなよ」

「えー。一人じゃつまんないじゃーん」


じゃあ瑛一達と行ってきたら?と提案すれば、瑛一はバラエティーの収録、綺羅も雑誌の取材で不在らしい。だからって、なんで仕事中の私のところに来るかな…。
内心溜め息を吐きながらナギを見遣る。行こう行こうと駄々をこねる様は本当年相応で可愛いけれど、彼の我が儘を受け入れてばかりではきっと、将来碌な大人にならない。

此処は大人である私が、心を鬼にしなくては。


「ダメなものはダメ。どうしても一人が嫌なら、他の人誘って」

「…名前は、僕より仕事の方が大事なんだ…」


何処の彼女の台詞だ。そう突っ込もうとしたら、涙目になって私を見るナギと目が合った。上目遣いのそれに思わず息が詰まる。


「名前は僕のこと嫌いなんだ…だからそうやってご飯の誘いも断るんだ…」

「そ、そんなこと言ってないでしょう…!私がナギのこと嫌いなんてあるわけないじゃない」

「じゃあ…僕のこと…好き?」


涙目上目遣いな上に小首を傾げてそう言うナギ。彼にそんなことを言われて嫌いと言える人はいるのだろうか。いや、いない。


「だから…嫌いなわけないって…」


話終わる前にナギにぐいっと顔を覗き込まれた。至近距離となったそれに熱が集まるのが分かる。いくらいつも一緒にいて見慣れてても、こんな至近距離で美少年の顔を見たら私だって照れる。


「好きって…言ってくれないの?」

「……は?何を、」

「僕は、名前のこと好きだよ。ねぇ、名前は…?」

「……っ、わ…私も好き、だよ…HE★VENSの、作曲家だし…」

「…じゃあ一緒に、ご飯行ってくれるよね…?」

「勿論……………あ」


気付いた時にはもう遅く、ケロッとしてるナギが両手を挙げていた。またやられた…とその場に崩れる。分かってた、演技だって分かってたけど…!分かっててもあれを振り切るなんて無理だわ…!

それにしても、最初の頃はただの泣きまねだったのに、どんどんグレードアップしてるわナギの演技。相手は13歳だと言うのに、掠れた声に色気を感じてすごくドキドキした……ナギ、本当恐ろしい子。そのうち私が、うっかりショタの扉を開いたらどうしてくれるんだ。
あ、因みに私のタイプはアイドルの日向龍也です。大人な男性って素敵だよね。


「ねー名前ー、早く行こうよー」

「はいはい、今片付けますよー」

「あ、僕ハンバーグが食べたーい」

「じゃあいつものとこにしようか」

「…うん!」


嬉しそうに駆け出すナギの姿を目で追う。
…鬼になるのは、また今度からでいいか。



晴れのちハンバーグ
(で、また甘やかしたと)(これで何度目だ?)
(……いつものこと…)
(……返す言葉もございません)


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ナギくんが余りにも私好みのショタだったので、キャラ掴めてないのに勢いだけで書きました。…勢いだけで書きました(大事なことなので二回ry)

ナギくんの好きな食べ物なんでしょうね。個人的に、年相応に子供が好きな食べ物だったら可愛いなぁ…と思ってハンバーグをチョイスしました。
これでフォアグラとかだったらどうしよう…(笑)ほら、帝って名字なだけに…(偏見)


20130609

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