※ホラー要素(擬き)あり
※色々注意
「最近、ずっと誰かに見られているみたいで…」
溜め息を吐きながらそう言う黒子くんは、憔悴しきっているような顔色で。
ご飯はちゃんと食べられているのだろうか。元々少食な黒子くんが更に食欲が落ちたら、身体を壊してしまうかもしれない。そう思うととても心配で、私は思わず口を開いた。
「大丈夫だよ、黒子くん。私がなんとかするから」
「ありがとうございます」
それにしてもただでさえ見付けにくい黒子くんを付け回すなんて、バスケ部の伊月先輩のような眼を持たないと出来ないんじゃないだろうか。
顎に手を当て、どうしたものかと考える。これからウィンターカップを控えてる大事な時期に、余計なことで集中できないなんてことになったら大変だもの。
わたしが、なんとかしなきゃ。
「貴女…だったんですね」
そう言って私を睨む黒子くん。周りには誠凜バスケ部メンバーが揃っていた。
何のことだろう、と首を傾げる。
私の態度が煮え切らなかったのだろうか、バスケ部の先輩が苛立たしげに口を開く。
「黒子がいつも感じる視線が今あって、この周辺で俺の眼に引っ掛かるのは君しかいない」
「お前がうちの後輩を付け回したんだな。きっちり落し前つけてもらおうじゃねーか」
「日向、日向、クラッチタイム入ってんぞ」
先輩方は何を言っているんだろう。私はただ、黒子くんの力になりたかっただけなのに。
「最近、ずっと誰かに見られてるみたいで…」
「はぁ?なんだよそれ」
「もしかしてストーカーってやつじゃないのかな?」
「ストーカー?やべーじゃんそれ!」
「俺達に出来ることがあったらなんでも言ってくれよ!」
「ありがとうございます」
先日、黒子くんが部室で話していた会話を思い出す。そうよ、それを聞いたから私は怪しい人がいないかいつも以上に見回っていたのに。
誤解だと、勘違いだと、弁解しようと口を開こうとした時、私よりも先に黒子くんが声を発した。
「ところで――貴女は誰なんですか?」
あるところにひとりのしょうじょがいました。
そのしょうじょはとあるひ、がっこうのとしょしつでであったしょうねんにひとめぼれします。それからというものの、しょうじょはそのしょうねんにあうためにとしょしつにかよいました。
いいえ、しょうねんをみるためのほうがただしいかもしれません。
なぜなら、しょうじょはただのいちどもしょうねんにこえをかけたことはないのですから。
顎に手を当てて考える。そういえば黒子くんと出逢ってから結構経つけれど、言葉を交わすのは初めてかもしれない。それじゃあ今日は記念日だね。
私は、黒子くんにそっと微笑みかける。
「大丈夫だよ、黒子くん」
と
あ
る
少
女
の
純
愛
物
語