※本誌ネタバレあり
「和成ー」
呼ばれた自身の名前に、シュートモーションを止める。振り返ればそこには、ドリンクとタオルを手に持ったクラスメイトの名字が居た。
名字が投げて寄越したドリンクとタオルを華麗にキャッチして、キャップを開けて喉を潤す。これまで約3年、変わらない俺好みのドリンクの味に自然と口角が上がる。
「そろそろ水分補給が必要だと思って」
「ナイスタイミング!丁度ドリンク飲みてなーと思ってたんだよ。さっすが名字だよなー」
ドリンクも美味いし、と褒めれば、3年間誰がマネジメントしたと思ってるの、と得意げに名字は笑った。
そう、名字とはクラスメイト以前に中1の頃からバスケ部員とマネージャーとして交流している。かなり出来たマネージャーで、仕事裁きに関しては右に出る者は居なかったように思う。かく言う俺はレギュラーで、まぁそれなりに実力もあったと自負している。まぁ俺には鷹の目もあるしな。
でもそんな栄光も今や過去の話。俺達は、数ヶ月前にバスケ部を引退している。
「こんな受験シーズン真っ只中でこういうことしてる3年生って私達くらいだよねー」
「だよなー。ってか俺はスポーツ推薦だから多分大丈夫だろうけどさ、名字は俺に付き合ってて大丈夫なわけ?」
「大丈夫だと思うー?とりあえず家帰ったら寝る間惜しんで勉強だよー」
笑いながら軽く流す名字に一瞬ボトルを持つ手に力が入る。夏の大会後バスケ部を引退してからも、俺の自主練習は続いていた。それも全て、と或る一つの目的の為に。
そして俺と同時期に部活を引退した名字は、何故か気付いた時には隣にいて、バスケ部時代と同じようにドリンクやら何やらサポートをしてくれている。
「…名字さー、無理して俺に付き合う必要ねーんだぜ?」
「何バ和成…頭沸いた?」
「ちょ、ヒデェ!!」
余りの対応の悪さに名字のこと心配してんのに、と大袈裟に話せば余計なお世話だと尚の事一蹴された。え、なんで俺こんな扱い悪いの?
「和成は彼に勝つために、こうやって練習してるんでしょ?」
彼、と言う言葉に緑色が脳裏を過ぎる。
忘れもしない、中三の夏の全国大会予選。俺達の青春は全国大会まで届くことなく潰えてしまった。
帝光中学校―キセキの世代。10年に1人の逸材が5人も集まった奴らの総称。
その中のナンバーワンシューターと呼ばれる男、緑間真太郎に俺は手も足も出ずに敗北した。
あんなにも大差を付けて負かされたのは初めてで、それがとても悔しくて。彼を倒したいが一心で、俺は部活を引退した後も練習は欠かさずに続けていた。
「部活にいた頃の夢だった全国大会優勝は叶わなかったけど…和成があの緑間真太郎を倒すことが今の私の夢だからさ。私に気を使いたいんだったら――」
絶対、勝ってよ。
そう言って笑う名字。本当に頭が上がらねーな、と内心ごちりながら俺は名字に笑みを返した。
「見てろよ?ぜってーその夢叶えてやるからさ」
いつか君とみた夢
(そして俺達があの緑色の彼とチームメイトとなり交流を深めていくのは)(決して遠くない未来の話)
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高尾くんが偽物すぎる…orz
中学時代いつ高尾くんが真ちゃんに負けたのか、公式戦か練習試合かも分かりませんが、個人的に中三最後の夏の大会で負けた…とかだととっても美味しいと思います(じゅるり
最近チャリアカー組が好きすぎて生きるのが辛い。
20120918