徹夜明けになんて仕打ち



「マスターコース…」


私がですか?と目の前の上司基我が事務所の社長に聞き返す。
徹夜明けでいきなり呼び出されたと思ったら、「YOUにマスターコースを担当してもらうことになりマシター!」とこれまた突飛な話に目を丸くする。徹夜明けの眠気も一気に吹き飛ぶわ。

マスターコースといえば、事務所に所属した新人アイドルや新人作曲家が先輩と同居生活をして、様々な指導を受けるシャイニング事務所独特の制度のことだ。かく言う私も、新人時代にこの制度にお世話になっている。

当時付いて頂いた作曲家の先輩と私を比較すると、私に勤まるかとても不安だけれど社長が言ったことは絶対だ。それに、社長は破天荒な人で無理難題を言う人だけれど、決して出来ないことを言う人ではない。任せられると思ったからこそ、私に振ってくれたのだろうし期待に応えられるように頑張らなくては。…自信はないけれど。


「因みにその新人さんは何時来るんですか?」

「よくぞ聞いてくれマシター!新人が来るのはズバリ、今日なのよん」

「…………はい?」

「因みに他のマスターコースの先輩はもう寮に向かいマシター!」

「ちょ、なんでもっと早く言ってくれなかったんですか!?なんで当日!?」


忘れてマシターと悪びれもなく笑う社長にがっくりとうなだれる。そうですよね、この人はそういう人ですもんね。
担当するならマスターコース寮に引っ越さなくてはいけないのに、いきなり今日って…!


「YOUの荷物は既に運んであるので大丈夫デース!」

「ちょ、女の子の荷物を勝手に纏めて運ぶってどういう了見ですか!」

「心配ありましぇん、そこはちゃんと配慮して荷物は林檎さんに纏めてもらいマシター!」

「嗚呼、林檎ちゃんなら大丈夫…じゃないですよ!?確かに私よりずっと可愛いですけど彼歴とした男ですからね!?」


荷物全部纏めたってことは見られたくない物も全部見られてしまったんだろうか…主に下着とか下着とか下着とか。もしそうだったらどうしよう、私もうお嫁に行けない。
落ち込んでいる私を余所に笑う社長に軽く殺意が芽生えるけれど、勿論社長に直接ぶつけられる訳もなく。やり場のない思いの行き場所を一生懸命考えていたら、それじゃあ行きますYoと立ち上がる社長。

あれ、なんでだろう。嫌な予感しかしない。


「他のメンバーはもう集まってるはずデース。つまりYOUは遅刻。BUT、ミーと一緒に行けば間に合いマース!」

「待って下さいっ、社長と一緒にってもしかして…」

「はっはっは〜。行きますYo!」

「私一人で行きま…ちょ、米俵みたいに担ぐの止めて下さ、私今日スカートで、いぃぃぃやぁぁぁあ!!!」



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