01



「渚くんっ!」


掛けられた声と同時に来た後ろからの衝撃に、前に倒れそうになったけれどすんでのところでなんとか持ちこたえる。
こんなことをするのは一人しかいない、と頬に集まる熱を誤魔化しながら後ろを振り返れば、にこにこと笑みを浮かべる彼女に毒牙を抜かれてしまい溜め息を一つ。


「おはよう、渚くん」

「…おはよう、笹原さん。」


笑顔で挨拶を交わす彼女は、クラスメイトの笹原壱さん。
E組にくる前同じクラスだった笹原さんは、確か頭がとても良くていつも学年上位の成績を修めていたように思う。品行方正でもあるし何故E組になってしまったのか、何度かそれとなく聞いたけれど毎回はぐらかされてしまい、詰まるところ僕は理由を知らない。


「渚くん今日もかわいいね!」

「いやかわいいって言われても嬉しくな…笹原さんも相変わらずだね」

「いやぁ、それほどでも」

「(…褒めてる訳じゃないんだけどな)」


内心ごちりながらも、変わらず笑顔を浮かべている笹原さんに脱力する。
常日頃から彼女には反論したいことがたくさんあるのだけれど、笹原さんのにこにこと効果音が付きそうなくらいの笑顔を見ると、まぁいいかと思ってしまう。
……あれ、僕もしかして感化されてるのかな?


「日直、一緒だからよろしくね」


そう言われて黒板を見ると、僕の名前の隣には笹原さんの名前が並んでいて。 こちらこそよろしくと返し仕事の分担を考える。幾何か話たあと号令は僕から交互にかけることとなった。
時計を見上げれば、長針は5を指している。そろそろ先生が来る頃だとみんなが着席をし始めたので、僕も倣って着席すると、机の中に入れておいたゴーグルを装備して先生が来るのを待つ。
ガラリ、と扉の開く音がして先生が教壇に立った。


「ホームルームを始めます。日直の人は号令を」


先生の催促の声に、若干吃りながらも口を開く。
それは、僕等が先生に銃を向ける合図。


「き…起立!!」


クラス全員の銃口が一斉に先生へと向けられる。

さぁ、今日も一日の始まりだ。



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