今日も、渚くんは可愛いです。まる。
草木に身を潜めながら野球ボールで先生の暗殺を目論む杉野くんと、そんな杉野くんに情報を提供して暗殺を見守る渚くん。そして、そんな二人を木の上から双眼鏡を使って見守る私。
この様子だと渚くんに危険は及ばないだろう。対先生用のBB弾を埋め込まれたボールは、先生が払おうとすれば触手は破壊されてしまう。なら避けるか、何か別の物を使ってキャッチするかの二択だ。跳ね返ったボールが渚くんに当たる…なんて心配はない。
「(でも油断は禁物だから、最後まで気をつけなきゃ…)」
あの渚くんの身体を張った暗殺を見てから早数日。あの日以降私はまた渚くんの身に危険に及ばないように見守っていた。
渚くんが朝家を出て登校してから、授業が終わり家に下校するまでずっと。その甲斐もあってか、今のところこの間のように渚くんの身に危険が及ぶことはない。放し飼いにされていて渚くんに襲い掛かろうとした獰猛な犬も、渚くんの容姿を見てカツアゲしようとする輩もみんな、二度とそんな気が起こらないようにしてあげたからね。
しかし、残念ながら私にも限度がある。渚くんが外にいる間は私が守ってあげられるけど、家の中で危険なことが起こらないとも限らないもの。
嗚呼、ネットで注文した盗聴器と小型カメラ早く届かないかなぁ。
暗殺に失敗して教室へ向かう二人に、私も木から降りてそっと二人を追いかけた。
◆
「渚くーん!」
後ろから勢いよく抱き着けば、頬をやや赤く染めながら可愛らしく怒る渚くん。いい加減慣れてもいいのに本当可愛いなぁ…癒される。
「渚くんは課題もう出した?」
「ううん、今から殺せんせーに提出しようと思って」
「私もこれからだから一緒に行ってもいい?」
いいよと了承を貰って二人並んで廊下を歩く。ふと窓の外を見ると、杉野くんと先生が話しているのが見えた。
私の視線に気付いたのか、渚くんも私に倣い外を見遣り二人の姿を目視する。
「先生と杉野…何話してるんだろう」
「なんだろうね。昨日の暗殺のことかな?」
「まさか昨日のこと根に持って絡んでたり…」
「そんなまさか…」
そんなことを言いながら角を曲がれば、先生の触手に雁字搦めにされている杉野くんの姿が――
「思ってたより絡まれてる!!」
話してた意図と少しズレているものの、絡まれてる杉野くんを助けに慌てて駆け寄る渚くんを私は後ろから見守っていた。