-love beat-



「行くぜー!!野郎共っ!!!」

広いドームに響く蘭丸の声に一瞬にしてその箱に絶叫が響き渡る。
待ち焦がれたドーム公演の今日は初日だ。
頭から飛ばして行くぜ!そう言った蘭丸に皆が皆頷いた日は記憶に新しい。
薄暗い中で照明がまるでビームの様に交差する。
目立たない最奥で何時もならば想像も出来ない様な露出度全開の真っ黒なワンピースを着て力の限りキーボードをかき鳴らす。
会場と一つになっているこの一体感が春歌は大好きだ。
胸をも焦がす歌声とそれを支えているのが自分の音楽だなんて。


マイクスタンドが壊れるんじゃないかという位左右に揺らせて嶺二が力の限り歌う。
その横には心臓にまで響くのではないかという位に重低音を鳴らす蘭丸が
更にその反対側にはギターを凄い速度で弾く藍が
自分の大よそ近くでドラムを叩くカミュも今日は何時もみたいに余裕の表情は無い。

蘭丸がピックを放り投げると同時に、後ろへと掛けてきた藍が
自分の隣にピタリとくっつくと、会場の大画面が切り替わる。

(そ、そんなにくっつかないでくださいっー!!!)

切り替わる画面には藍が春歌へと絡んでいる場面である。演出上サポートで入っている人間は仮面をつけているとはいえ、これでは晒し者である。

背中を触れさせて、そしらぬ顔で顔を近づけてギターを弾くその姿は見惚れるものにかっこいい。けれど今日は後輩だって見にきているのだ。

蘭丸の歌声に嶺二の声がミックスされて力強いものへと変わるそれに更に世界観を広げるのはカミュの声だろう。コーラスでギターを鳴らす藍は音がぶれない。(だけどせめて所定の位置に戻ってください!!)

先程から脇に張り付いて時たま絡んでくる度に会場から黄色い悲鳴が上がる。絡むならば私ではなくカミュさんにして下さい。仮面の下で汗を掻きながらも春歌はキーボードを弾き続ける。横から伸びてきた長い腕がたまに連弾の要領で加わってくるのは楽しいけれど。








***










「んっ…藍、くんっ…」

ステージ裏の藍だけに与えられた控室。
もしもプログラムの不調などが見られた時のために用意された
部屋に休憩になった瞬間に春歌を引き摺り込んで藍は春歌を抱きしめて。
貪る様な口づけは彼らしくもなく、強引で長い。
チュプリと響く唾液の音はこの場には不似合いだというのに、
ライブで燃える様な体に更に熱を灯す。

この後にはライブの後半戦が待っているというのに自分達は何をしているのだろう。
背の高い彼に口づけられると足が浮き上がる。
不安定な、それも何時もよりも露出の高い服で彼に蹂躙されるのは何だか背徳感が増してしまう。
年下なのに自分よりも大人びて、そしてまるで成人男性の様なしっかりした体。
けれどまだまだ未成熟な心を持ったこの恋人が春歌は大好きなのである。

「は、あっ……」

露出した真っ白い太腿を撫ぜる指に息が上がる。口づけが苦しくて顔を逸らすものの
またすぐに塞がれたそれに頭が真っ白けになってしまう。

「…ねぇ、あんまり煽らないでくれる」

短いスカートから伸びる日焼けを知らない足に、何時もならばあまり露出を好まない春歌の
豊満な胸とその谷間。まるでそれを強調する様な服に。
それを皆に見られている事に嫉妬と、そして理性を失いそうな自分がいる。


「僕は我慢なんてしないよ」



抱きしめられる腕が腰へと添えられて、
春歌は一つ息を吐くと、そっと目を閉じた。





up 2014/03/07

日記でキリンさんに捧げるために書いたのをまとめました!
先輩春ちゃんの中で一番藍春ちゃんが好きかもです。







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