※キャラ総崩れのギャグで構成された話になっております。
プリンスに夢がある方は回れ右でお願い致します。




◆春歌の写真集事件編◆





それは普段と何ら変わらない日常に突然起きた出来事である。



「お疲れ様でした神宮寺さん、今日は有難うございました」

ST☆RISHの写真集の撮影現場。
ピンショットの撮影を最後に迎えたレンは撮影が終わると軽く溜息を吐いた。
今度の写真集は何も初めてではないけれど一人一人の
日頃の素顔も取り入れるという事で大分力が入ったものになっている。
ステージ衣装から部屋着から水着まで、
まだまだ残されている撮影にけれど以前よりも力が入るのにはワケがある。
年々仕事が増える事は喜ばしい事ではあるのだけれども
順調すぎて怖い位だなんて自分らしくもない事を考えてレンは苦笑した。

「お疲れ様、じゃあもう上がるよ」
スタッフに撮影の終了を告げられ、丁寧に掛けられていた上着を
肩にかけてスタジオを後にしようとしたレンの目にふと、見覚えのあるものが映る。

「…これは……」
「あ、それですか!実はもう撮影は終わってはいるんですけどね、
もう少し発売は伸ばすって…神宮寺さん?」
休憩スペースに置かれたそれをレンは無意識の内に手に取っていた。
スタッフの声が聞こえているのかいないのか。

「これ、貰っていっていいかな?」
レンの手に握られたのはまだ未完成のサンプル品だと分かる写真集だ。
ジャケットを見た瞬間、無意識の内に手に取っていた。無意識に、だ。
問題はサンプルか完成品かではない、ここに映る被写体である。
「え…いいですけど、そんなのどうす…」
パタン。
まだ話の途中だというのに気づけば何時の間にか扉は閉められて
レンの姿は消えていた。
その様子にスタッフは首を傾けるけれどそれに気づく者は他には誰もいなかった。




☆☆☆




所変わってここはST☆RISHの楽屋。
先に撮影を終えたメンバーは誰を待つでもなく楽屋に集まっていた。
時間帯もいい時間になっている。今日の仕事はこれで終了だ。
けれど各々集まったまま中々帰らないという事がこのメンバーにはよくある事で。
時にはそのまま皆で食事になどという事もあるけれど
最近は立て込んだスケジュールにそれもままならないのが現実だ。

今日も今日とて六人での歌番組の収録が数本、
各々の仕事を数本とハードスケジュールをこなしての撮影だ。
椅子にだらりと腰掛けて溜息を一つ二つ吐く位許されてもいいだろう、
とそう翔が思った時だった。
バタン、と突然扉が開かれて驚きのあまり椅子から転がり落ちそうになってしまった。

「何だよレン!びっくりさせんなよな、っていうか撮影終わったのか?」

突然彼らしくもなく勢いよく部屋へと飛び込んできた
その姿に他のメンバーも驚いている様で、
音也は大きな目を更に大きくしてその様子を見守っている。
のんびりお茶を飲む真斗は興味がなさそうに読書に夢中だ。

「やぁおチビちゃん、撮影は無事に終わったよ。
それよりも凄いものを入手してしまってね」
「だから俺はチビじゃねーって言ってんだろ、何だよ、凄いもんって」

手に持ったものをヒラヒラとさせてレンは微笑む。
翔は何処にそんな元気が残っていたのか、立ち上がって長身のレンに吠えかかるけれど、軽くあしらわれる。
まぁまぁと那月が何時もの様に後ろからひょっこりと姿を現せば
いよいよ何時ものパターンだと言える。

「なんだこれ……ってええっ!!!!」

一番前にいた翔は態々身長に合わせる様に目の前へと翳された
それが何なのか一番最初に気づいた様で見るなり目を白黒させている。

「あ、春ちゃんですね、とっても可愛いです、でもこれって…」
「そうさ、これはレディの今度出る筈の写真集、
ちなみに例のあれのせいで発売日は未定らしいけどね」

「春歌の写真集!??!」
寝耳に水といった感じで音也は座っていた椅子を蹴り飛ばす勢いでこ
ちらまで駆けてくる。皆体力は有り余っている様だ。

「でもこれって……」
ジャケットの写真を見て翔は顔を赤らめる。サンプルと記されたその表紙には、
笑顔の…そう、笑顔の春歌の水着姿の写真が…。


「なかなかのナイスバディだと思うけど、諸君はどう思う?」

レンはその目を何だか怪しげに細めて面々を見渡す。
二十歳を過ぎぬメンバーばかりの中で学生時代ですら無かった
エロ本を回し読みする男子の心境だ、正に。

「こんな、は、破廉恥なものを神宮寺…っ、お前と言う奴は!」
ガタタタと、椅子を鳴らして立ち上がる明らかに動揺を隠しきれない
真斗は少しだけ頬を染めて目を逸らすけれど、ハッキリ言って逸らしきれていない。
「相変わらず考えが古いな、聖川。これはこれから発売される
列記としたレディの写真集だろ、先に俺達が見ておくのは先輩として当たり前」
「めちゃくちゃすぎます、レン」

何時の間に移動したのか、無茶苦茶な言い分のレンを呆れた表情で
見ながらも最近はこういった事に積極的に参加している節がある
トキヤはそう言いつつもそれをじっくりと検分している。

「春ちゃんて細いのにお「わーっ!!馬鹿、それ以上言うな、絶対言うんじゃねーぞ!!」

ニコニコと微笑んでそれを見ていた那月が突然口走ったそれに
翔は何となくその先が想像出来て後ろから飛び上がりその長身の口を塞いだ。

「ほうちゃん、くるふぃよ〜!!」

口を塞がれたままジタバタとする那月を後ろから羽交い絞めにする
翔を置いてメンバーは先へと会話を進める。
レンは何ともなしに次の頁へと指を滑らせる。
何だろうか、自分達の写真集を初めて開いた時よりも緊張する。
手に汗握るとはこういう事を言うのだろうか。

「ああ、これはいいですね彼女の魅力が引き出されています」

開いた瞬間に姿を現したのは真っ白なワンピースを纏い、
羽のレプリカをつけた春歌だ。
髪はふわふわとカールが掛けられていて、まるで天使の様なその姿に
皆が甘い溜息を吐き出す。
瓦礫の上に腰掛けるその写真は儚くて、けれど彼女の存在感を現しているようで。
ファンにとっては堪らないワンショットに違いない。例に違わずメンバーも。

「でもこれはスカートが短すぎやしないだろうか?」

何時の間にか机の真ん中に広げられた写真集を広げてじっくりと見つめる中で
、真斗はその写真を見るなりやはり目を逸らしつつもチラチラと見ている。
普段のクールな様子からは想像出来ない位に挙動不審である。

「最近の流行が分かってないな聖川、三首見せろっていうだろ、
こんなに細くて綺麗なレディの足を見せない手はないだろ」

レンは手を離れた写真集をけれどゆっくり眺める様に椅子に腰かける。

「しょうひゃん、苦しいでひゅって〜!」
「もう絶対言うんじゃねーぞ、お前マジでファンに殺されっからな!」
「わかりましたよ〜もう翔ちゃんてば酷いです」
「お前のために言ってんだよ!」

後ろでは漫才に一区切りついたのかハァハァと息を切らして椅子に
腰かける翔の姿が見える。那月は今しがたのやりとりが嘘の様に
平然な顔をしてニコニコとそれを眺めている。

「次いくぞ、次」

一息ついて、それでも写真はちゃっかり見ていた翔の声に合わせて
次の頁へと写真が捲られる。
次は一体どんなショットが出てくるのだろうか、
一同がそわそわと頁に目を向ける。そして開かれた次の瞬間。

「見るなぁああああああ音也!!!!!!!!」
開いた瞬間にけれど今度は後ろから凄い叫びと共に両手で視界を塞がれた
音也は何も見えなくなった目の前にただ手をジタバタさせる事しか出来ない。
「うわぁっ…翔、何だよっ!何も見えないよ…っ!!!」
「見えない様にしてんだよっ!!!」
「こ、れはっ……」
しっかりと塞がれた視界の横、そこには先程までトキヤがいた筈だ。
その場所から何だかとっても不穏な、というか動揺する声が上がった。

「……これはどうやら凄いのを持ってきてしまったみたいだね」
その横からまたレンの珍しくもウキウキとした声が聞こえる。
「俺は何も見ていないぞ、断じて何も見ていないぞっ!」
更にその横からは真斗のまるで自分にでも言い聞かせるかの様な声が聞こえる。

「うわぁ〜ハルちゃんてばとっても大胆ですね」
その更に横からはのほほんとした、けれどとっても気になる発言をする那月の声。

「何なに、何なの!?どうして俺だけ見せて貰えないのっ!!」
相変わらず視界を塞がれたままの音也はジタバタとするけれど翔の手は意外と強くて中々振り切れない。

「お前こんなの見たらまたどうせ気絶すんだろうがっ!」
「まぁ確かに翔の言う通り、見ないのが賢明でしょう…
こんなに凄い春歌は他では見れないでしょうけれどね」

クス、と笑い声が聞こえた気がした。隣に悪魔がいる、音也はそう確信する。

「そんな事言われたら気になって夜も眠れないよっ…!!いいから見せてっ…!」
「うあああっ、おい音也っ……!!!」
我慢も限界を迎えた音也は強引に翔の手を振り切ると、
今まさに目の前に開かれたその頁へと目を走らせる。

「あっ……」
トキヤが、レンが、真斗が、翔が、ニコニコ微笑む那月が声を漏らした時には、
すでに音也は固まっていた気がする。

「だから言わんこっちゃ無いのに」とは誰の言葉だろうか。
「あ〜見事に気絶していますねこれは」
チョンチョンと指で突いて那月が確かめるものの、見事に固まったままの音也はうんともすんとも言わない。

「まぁ当然だろうね、レディの…手ブラ写真なんてイッキには刺激が強すぎるからね」

その写真は、はにかんだ春歌がどういう設定なのだろうか下は短パン一枚で上半身裸。上は胸を両手で隠しているだけという、所謂手ブラという
男にとって見ればロマン的な一枚写真で。
何時の間にこんなのを撮影したのだろうか。
海外ロケに行ってきたと言ってお土産を貰った事を思い出してなるほどと頷いた。

「全く不甲斐ない男です、まぁ直視出来ない気持ちは分かりますがね」
トキヤは横の音也を見やってまた溜息を吐き出す。
「…っていうか、これマジで発売すんのかよ…次の頁なんて…これ下着っていうか…」

翔が次の頁を恐る恐るといった感じで捲れば、勿論服は着てはいるものの、
何だか布の面積が極端に少ないランジェリーにも見えるそれが。

「春ちゃんは何を着ても可愛いですけど、でもこれはちょっと過激ですよねぇ〜」
ニコニコと微笑む那月の目が怖いのは気のせいだろうか。
白い肌に細く括れた腰に、小鹿の様な足。駄目だこれ以上直視出来ない。
一瞬沈黙が走るその場に、けれどパタリと閉じた写真集を片手に
立ち上がったレンはそれを持ったままドアへと手をかける。

「お疲れ様、俺はちょっと用事を思い出したから先に帰る事にするよ」
「あ、ちょっと…おいっレン…!」


翔の呼びかけにも返る声は無い。
じゃあ、と手をヒラヒラと振っていた神宮寺レンの目が笑っていなかったのは
きっと気のせいではないだろう。

「あいつ、どうする気なんだかっ…まぁ想像はつくけど…」
小さく息を吐いた翔は固まったままの音也を突つき回した。
許せ、春歌。
こうして結局撮影されたものの、その写真集は一部を変えられて
数ヶ月後に発行される事になる。


「まぁ、これならば問題は無いでしょうし、春歌は純粋に写真集を喜んでいましたからね」
「僕が見ましたよって言ったら春ちゃんとっても恥ずかしそうにしててとってもかわいかったですよ〜」
「お前それはただの鬼畜の所業だろ」
「俺は見ていないぞ、俺は…」
「…春歌〜春歌〜」

今日も今日とてST★RISHの楽屋は平和である。
神宮寺レンが一体どんな権力を使ったのかは未だ謎であるけれど、こうして春歌の平和は今日も守られている。











 up 2012/09/02

オフで発行したpinkboxの短編の一つになります。
これにてpinkboxの再録は終了させて頂きます。
アイドルなので写真集位出すだろうという妄想から始まった暴走話だったのですが
書いてて凄い楽しい話でした(笑)
A○Bの手ブラを思い出したので春ちゃんにも是非にと!!
まぁプリンスが黙っちゃいないだろう事は想像つきますがね。





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