※先輩と春ちゃんが同期です、春歌が溺愛されてます俺得設定なので
ご都合主義やそういうのが苦手な方はリターンお願いします。



SWEET☆DREAM



「聴いたか?また先輩達の曲オリコン一位だって」

控室の椅子に体の向きも反対にだらしなく腰掛ける金髪の小柄な少年、
手元に持った一枚のCDを見ながら側へと座るこちらもギターを持ち神妙な
顔をする少年に語りかければその手を止めてこちらへと向き直る。

「見たよ、見た見た!昨日のソングステーションも出てたし超かっこよかったよね!」

まるでアイドルのファンの様にニコニコと微笑んで浮かれる目の前の少年に
金髪の少年は溜息を一つ吐いた。こいつは自分もアイドルだという自覚はないのだろうか。苦労を重ねてここシャイニング事務所に何とか在籍出来た、ヒット曲が無いわけではない。だけど何か物足りなさを感じる事は贅沢な悩みなのだろうか?
他のメンバーはそれぞれ自分の仕事で出払っていてここにいるのは自分とギターを
片手に何かをするもう一人のメンバーだけだ。
今日の仕事はこれにて終了の二人なわけなのだけれど、昨日見たTVを思い出すと
どうしてか落着けない自分がいる。
大人の恋をテーマにした新曲。CDショップの一番目が付く場所に陳列されたそれを見つけた時、目が離せなかった。
自分達の先輩にあたるアイドルユニットが人気なのは
何も今に始まった事ではない。けれど前にもましてその楽曲は聴いた者に
訴える何かがある気がする。眩さを増していく様な、そんな輝きがある。

シャイニング事務所のエリート集団とも言われるその人物たちをけれど
翔はTV越しでしか見た事はない。まぁ売れっ子とあらば事務所にいるなんて事は
あり得ないんだろうけれど。自分の境遇と比べると空しくなるのでなるべく考えたくはないのだが。

「今度の新曲も良かったよね〜!歌がいいのは勿論なんだけどさぁ、曲がなんていうか、俺の好みっていうか」
「……そうなんだよな〜前に社長に聴いてみたら上手くはぐらかされたけど」

何時ものあの調子で窓を大破させながら去っていったのを思い出して顔が引きつる。

「…う〜ん…何かトキヤも気にしてたみたいだけど誰も知らないんだよね」
「…あいつでも他人が気になったりする事なんてあるんだな」
「あはは、珍しいよね!あのトキヤが真剣な顔でレンと雑談するなんてさ」
「…うん、まぁ…そうだな。」
こちらは学生時代の事を思い出して顔がひきつる。

今ここにいる二人の他に四人、全部で六人のメンバーだ。
若手の新人アイドルST☆RISHというグループユニットで、
ここシャイニング事務所でも期待の新人として謳われているから責任は重大である。
まぁこうして暇を持て余す事もあるけれど充実した生活を送っている。
けれど最初は無かった余裕が少しだけ生まれれば自ずと見えなかったものが
沢山見えてくるのが現実だ。上には上がいるのは分かっているし、努力したって
叶わない事もある。理想と現実は必ずしも一緒では無いのも知ってる。
だけどまだまだ自分達は頑張っていける筈だ。ユニットを組んだ時に誰にも
負けない事を誓ってここまでやってきた。
最初はバラバラだった自分達に絆が生まれたからこそここまで這い上がってこれた。

「くそー!!負けたくないぜ、絶対に!!」

メンバーで一番男気に溢れていると言えば聞こえはいいが、熱血体質の自分には
刺激的な事が多すぎて、もはや見えない敵と戦う日々が続いている気がする。
立ち上がって机をバンと叩くと、音也はニコニコと笑いながらそれを見つめている。
メラメラと燃える何かを持て余したまま翔は手に持ったCDを割りそうな勢いでぎゅうっと握りしめる。


コンコン、コンコン、

けれど突然空気を割って聞こえる微かな音がこの楽屋の扉からだと気付いた瞬間、
音也がはーい!と大きな声で返事を返せばそっとまるで様子を伺うかの様に扉が
開かれて中へと入ってきた人物に目を瞠る。

淡いシャーベットカラーのワンピースにカーディガンという可愛らしいと形容するのが
一番しっくりするだろう、けれど全く身に覚えのの無い女性が沢山何かを
抱えて入ってきたのだ。

「…失礼します!…ってあれ!?誰もいませんっ!!」

(いや、正確には二人もいますけど彼女には自分達は見えていないのだろうか?)

自分達を見つめて一瞬固まるその女性は赤毛と称するには少し独特の髪色の
ショートヘアーを揺らすと部屋の中をキョロキョロと見回している。

「えっと、誰か探してる…?」
先に口を開いたのは音也だった。
「あ、あのっ…すいません部屋を間違えてしまったみたいで…?」

おかしいです、間違えてる筈が!呟きながらスマフォを指でタッチする彼女は
場所の確認でもしているのだろうか、じっと画面を見つめて、部屋の番号を確認、そしてまた携帯の画面を確認している。天然なのだろうか、まるで小動物の様な動きに翔も音也も事を見守りつつけれど未だ腕に抱えたままの大量の楽譜だろうか?
そちらへと目を向ける。

「えーっと…作曲家の人だろ?誰の作曲家なんだ?」

普段は敬語を使うけれど、年が近いのかもしれないと砕けた口調で話しかければ
携帯を追いかけていた目がこちらへと向いて、ハッとした様に突然頭を下げられる。

「申し遅れました、私は七海春歌といいましてこちらの事務所でアイドルユニットの専属作曲家をさせて頂いてます!」

深々とお辞儀をされて、釣られる様に翔も音也も頭を下げる。
「専属作曲家って凄いね!ねぇ、何処のグループの作曲家さんなの?」

何時の間にか隣に立つ音也は得意のアイドルスマイルで七海春歌という少女に
まるで前からの友人の様に尋ねた。

「えっと…実はユニットはユニットなのですが名称という名称は無くてですね」
「…え、名称が無いって…?」
「普段は個人で活動されているんですが、最近になって急にユニットでという社長のお言葉で」
「…まぁあの社長ならあり得るな…」
困った様に眉を寄せる少女に翔は苦笑を零す。
きっと色々振り回されまくっているに違いないのだ。

「あ…」

うんうんと頷いていると突然高い声が上がり、翔はビクンと体を跳ねさせた。
けれど少女は当たり前の様にニコリと微笑んで。
「その曲、聴いて下さったんですね有難うございます!」

顔をまるで花の様に綻ばせて微笑む少女に一瞬で二人とも頬を染める。
けれど「その曲」という物が一瞬なんなのか翔には分からず、けれど未だ手に持ったままの存在を思い出して、ハッと意識が引き戻された。
まさか…?

「…まさか、専属作曲家って…」

翔は先程見た作曲家の名前の部分を思い出す。「7」
何時も決まって自分が好きだなと思う楽曲の作曲家の部分に名前を連ねている、
7という文字。正確な名称が、「なな」なのか、「セブン」なのかは分からなかったけれど今その疑問は解決する。

七海、ななみ…七、の文字を捩って『7』
なんて単純なんだろうと思うけれど、作曲家はてっきり男だと勝手な想像を
抱いていた自分には衝撃的すぎる、何もかもが。
こんな小さな少女があの曲を作り出してきたのかと思うと驚きに鳥肌が立つ。

「はい、そちらの4人組のユニットとソロの専属をさせて頂いてまして」
よろしくお願いしますね。また頭を下げられて、こちらこそ!と土下座しそうな勢いで
お辞儀合戦をしていれば、突然春歌の携帯の着信音が部屋に鳴り響く。

「はい!七海です!」

表示された名前を見た瞬間に顔を青くして即座に携帯を取れば携帯なのに
さらに頭を下げる春歌に、二人は未だ起こっている事態に頭がついていかずに
茫然とそれを見守るしか出来なくて。

「はい、今すぐに向かいますので、ごめんなさい蘭丸君…!!」

何だか凄い名前が飛び出している様な気がするけれど、
電話口から漏れる声はヒートアップして色々な人物の声が漏れ聴こえている。
もはや修羅場だろうか。

「え、大丈夫ですから!お迎えは結構です、今から行きますので!すぐに!」

慌てた様にジタバタする目の前の少女は自分達とそう年が変わらない様に
見える。むしろ幼い位なのにその正体は今を時めくヒット曲連発の作曲家なのだ。
これが驚かずにいられるだろうか、否無理に違いない。

電話が終わったのだろうか、一瞬シンとした室内にけれど、春歌は慌てた様にもう一度楽譜を抱えなおすと、もう一度頭を下げた。

「お騒がせしてすいません…!!急ぎますので、またお話して下さいね!!」

携帯を鞄にしまうと二人の返事も聞かずに来た時と同じ様に
ピョンと楽屋を飛び出していく。台風一過。そんな言葉が頭をよぎったけれど
二人はその場で暫く言葉を発せないまま立ちつくしていた。







携帯での会話(日記で書いたものになります)

「おい、お前今何処だ!?」
「…あ、蘭丸君…それがですね、部屋を間違えてしまいまして違う方の楽屋に…」
「何やってんだ馬鹿っ!部屋番号送っておいただろうが、」
「…部屋番号は確認しましたよ?2220って蘭丸君が…」
「間違えたのは蘭丸でしょ、早く春歌迎えに行ってきて」
「てめ、何で俺が!」
「春ちゃ〜ん、春歌ちゃ〜〜ん!」
「うるせぇな、黙ってろ嶺二!」
「愚民の分際で、つべこべ言わずに10秒で連れ戻してこい」

up 2012/08/10



初めてDebut的な何かを書いてみました!これ続きがあるので次こそは
先輩を出したい所存です。先輩と同期の春ちゃんいいじゃないー。
エリート集団の春ちゃんに憧れるプリンス…いいじゃないー!
天然でドジな春ちゃんを構い倒す先輩…いいじゃないー!!








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