天使の裏切り




「あなたの曲を私にください」
「……ごめんなさい、それは出来ません、出来ない、んです」

自分よりも少し低い位置にある頭。下を向いたままの彼女の顔は見えないけれど、少しだけ震えている。
聴いた瞬間に焦がれて、焦がれ続けて喉から手が出る位欲しいのにそれを望む立場は許されない。その細い足に縋って欲しいというその様は無いもの強請りの子供に違いないのに。

「では、何故私に歌ってほしいとっ…私の歌が……」
聴きたいのだと。そう言って涙を流した君が。
諦めきれない夢だった。自分を偽り続けても歌いたかった。自分自身を殺し続けて。
そんな中で見つけてしまった小さな光に縋る自分は滑稽で何て愚かなんだろうか。
遅すぎた時間を取り戻す事は出来ないというのなら、

「…ごめんなさいっ…ごめんっ…なっ…さいっ…」

傾いたまま涙を流す彼女を抱きしめて、涙を零す。
体はこんなにも温かいのに、零す涙が冷たくて、心まで冷えていく様な心地がした。

「あなたの曲を…歌いたいんです…」



あなたとあなたの音楽に、恋をした。



up 2012/02/14





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