※幼稚園パロディです。トキヤは春歌先生が好き。




「腕の中」



麗らかな日差しの昼過ぎ、
普段であれば子供達の賑やかな声が聞こえる園内は
今はシン、と静まりかえっている。聞こえるのは鳥の囀りくらいのものだ。
広い敷地に信じられない位の設備で建てられたこの早乙女幼稚園は
芸能関係の職に携わる者の子供たちが通う幼稚園である。


「おお、さっすが春歌!寝てる寝てる」

中々眠らない園児を漸く寝かしつけた友近は自分が担当するクラスの
教室を後にして廊下へと足を進める。
そこには隣のクラスを受け持つ自分の同期の七海春歌の姿がある。

春歌の腕の中、藍色の髪の子供がピスピスと寝息を立てて眠っている。
その小さな背中をポンポンと規則正しく叩いてあげれば
ぐずる様に肩口へとぐりぐりと髪を押しつけてくる。
小さな手がまるでぎゅっとしがみつく様にしているのを見て友近は苦笑した。
まだ眠りが浅いのだろうか先程まで少しばかり泣いていた
今は伏せられた眦にはまだ渇ききらない涙の跡がある。

「友ちゃん、すいません他の子を任せてしまって」
「仕方ないって〜その子、あんたじゃないと寝ないんだもん」
「…トキヤ君は少し神経質な所がありまして…」

腕の中で眠る子供の名前は一ノ瀬トキヤという。
某有名アイドルの子息というのはここではトップシークレットらしい。
子供ながらに気難しいタイプ、というよりは一人でいる事が好きな子供だ。
それは家庭環境がそうさせる所がもしかしたらあるのかもしれない。
兎に角、春歌が来るまでは子供にしてはクールで現実的というか
とても現実離れしていた。
今年の春からクラスを受け持つ事になった春歌も最初はどの様に
接すればいいのかは分からなかった。
けれどある時を堺に、春歌にだけは心を開いてくれている。

「まぁここの子はいろいろあるからね、その子もあんたが来てくれてからは少し素直になったというか」

腕の中の子供を見つめる。眠っている顔は本当に天使の様で、
春歌はもう一度ポンポンと背中を叩くと
腕の中の子供が微笑んだ気がした。





up 2012/06/24

こちらもチャットで盛り上がって書いたのに少し加筆加えたものになります
葵紗さんリクエスト有難うございました^^





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