一万打記念小説

※Sクラプリンスと春歌(瓶底眼鏡ちゃん)が幼馴染だったらパラレルです。









放課後ロマンティカ-3-






あれからトキヤと他の幼馴染の所まで向かった春歌は
トキヤの時と同様に今日あった事を色々と聞かれて苦笑してしまった。
自分はそんなにしっかりしていない様に見えるのだろうか。
確かに頼りないかもしれないけれど。

「レディ、眼鏡はどうしたの?」
「あ、すいません…その…先程邪魔で外してしまいまして」
「まさかお前、教室では外してないだろうな」

Sクラスの誰もいない教室で女子一人を取り囲んでの光景は事情を知らない
ものからしてみれば違和感ばかりが募る光景である。
後ろから春歌の髪の毛を弄りながら翔は少しだけ慌てた様に問いかける。

「…?大丈夫ですよ。外したのはトキヤくんと一緒の時だけです」

眼鏡を強要する意味を春歌は分かっていないのだろう、三人は春歌を一度見て
小さく溜息を吐き出す。この幼馴染は昔から何処までも鈍感で向けられる
恋心になんて一ミリも気づいてはいないのだ。
自分の魅力になんて全く興味が無ければひたすらの音楽馬鹿なところがある。
危機感が薄いのも問題だと眼鏡を提案したのはトキヤだった。
不思議な色合いをした大きな目やサラサラの髪、長い睫、庇護欲を誘うその仕草。
幼馴染の贔屓目にしたって心配である。

誰もが予測しなかった事態でクラスが別になってしまったと知った瞬間は
ほんとに何の悪い冗談なのかと思いもした。むさくるしい男だけが一緒のクラスで
当の春歌だけがAクラスだなんて。しかもAクラスには寮で同室の一十木音也がいるのだ。
何故だか入学当初からこの男には劣等感を感じてしまうというか、負けたくないと
思う自分がいて。そんな男と春歌がよもやパートナーを
組むなんて想像しただけで
居ても立ってもいられなくなる。ライバルは音也のみではないが。

「レディ、本当に大丈夫なのかい?君一人きりっていうのはどうにも心配でね」

膝に乗せていた手を何時の間にか取られてまるで童話の王子様がお姫様にする様な
その仕草に流石の春歌でも少々恥ずかしくて目を伏せた。
三人とも自慢の幼馴染で、皆かっこいいと認識する春歌ではあるけれど、やはりいつまで経っても
免疫なんて付きそうにない。あえていうならば、顔に少しは慣れているという位だろうか。

「本当に大丈夫ですよ、あの…やっぱりまだ上手くは話せませんが皆さんその…優しいですし」

伏せていた視線をレンへと合わせると、春歌はしっかりとその瞳を見つめて
心配しないで欲しいと必死に言い募る。レンは重ねた手をきゅっと握られた事に
らしくも無く頬を紅潮させると、そうじゃないんだけどねぇと苦笑しながらもその指を撫でる。

「何時までそうしているつもりですか、レン」

首を傾ける春歌にトキヤは少しだけ溜息を零してさり気なくその手を払いのけている。

「虐められたらすぐ俺に言えよな!すぐお前の教室に飛んでってやるからさ!」

その後ろからは翔が拳を突き上げてやる気だけは満々だ。
ポンポンと頭を撫でられるのは嬉しいけれど、何だか遣る瀬無い、そんな気がして。

それからも暫く今日あった出来事を語り合い、気づけばすっかり日も暮れていたので
慌てて別れを告げて寮の自室へと引き上げた。



***



寮は二人で一部屋。要は相部屋なわけだが、春歌は自室の前でゴクリと息を飲んだ。
自室なのにノックをして扉を開く。
部屋には明かりが灯っていて、中からはガサガサと物音が聞こえる。

「あ、おっかえりー!随分遅かったじゃない、春歌」
「あの、ただいまです、えっと友、ちゃん」

同じクラスの渋谷友近が春歌の部屋でのパートナーだ。
錯乱する段ボールの奥から聞こえる声に思い切って返事を返せばひょこりと赤毛がのぞいた。
今まで友達という友達がいなかった自分だけれど、そんな自分に気兼ねなく話かけてくれる大切なお友達。
けれど未だにその距離感に慣れない。ちゃんと笑えているだろうか。

「遅いから心配したよ!っていうか、まだ片づけ終わんなくてさぁ、お腹すかない?」

まだ片づけの終わらない友近は段ボールから物を取り出しながら春歌に問いかける。
友近はアイドル志望だ。自分とは違って華がある容姿についつい見とれている時に声をかけてくれた。
まさかその時は同室になるとは思わなかったけれど、こうして彼女が同室だったのは自分にとっては幸いである。

「手伝いましょうか?お腹…そういえばペコペコです」
ニコリと微笑む春歌に、友近は一瞬目をキョトンとさせて次の瞬間にはありがとね、助かるよと微笑んだ。
「じゃあ先にご飯食べにいこーか!学食でいい?」

その問いにコクリと頷くと、二人で学食へと向かった。







up2012/05/30




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