※ 流血や若干グロめな描写あります
  了承の上、スクロールお願いします。











-天使と悪魔-


「やっと…見つけましたよ、春歌っ…」

逃げ惑う人々で溢れた緑の大地。
炎に包まれたそこは正に地獄絵図と言えるだろう。
目の前で黒い翼を幾重にも広げて、残酷な笑みを浮かべる者の姿に
春歌は信じられない思いで目の前の人物を仰ぎ見る。

「ト、キヤ…君っ……」

漆黒の闇の様な翼で自分を包み込み、
まるで虫けらでも見るかの様な目で辺りを見やるとニコリと微笑んだ。

「あなたが何時まで経ってもこちらに来てくれないので、迎えにきました」
辺りに充満する何かの焼け焦げた匂いと、広がる真っ赤な。
「…何で、どうしてこんな事っ…!!!!」

次々と地へと足をつけた黒い翼を持つ悪魔は白を赤に染めていく。
悲鳴と怒号とが入交るその傍らで、逃げ行く最中に突然後ろへと強い力で引かれ
春歌はその場へと倒れ伏した。

「何で……?それをあなたが言うのですか……?」

ペロリと舌なめずりをして自分を見下ろす恐ろしい程に美しい悪魔に
春歌は目を逸らす事が出来ない。

「私は言った筈ですよ、選べと」

鮮やかな程に微笑んで倒れ伏す春歌へと覆いかぶさる様に膝を折る。
掴まれたままの腕が軋む。折れんばかりに握られたそれに顔を顰めると
まるで憎い者を見る様に鋭い眼光で見つめられて、春歌は蛇に睨まれた蛙の様に
地面へと縫い付けられた。

「…だ、けど…でも…」

それに緩く頭(かぶり)を振り後ろへと後ずされば、自分へと引き寄せる様に
引きずられて、地面へと這いつくばる様に倒れこむ。

出会うべきでは無かったのだ、この人と。
―あの日、悲しげに歌う彼の声に惹かれて足を踏み入れた地は、
本来であるならば白い翼を持つ自分は足を付けてはいけない領域だった。
それでも好奇心から足を踏み入れた先には彼がいて。

互いの孤独を埋める様に寄り添った。彼の腕の中は心地が良かった。
自分以外はいらないと言ってくれた彼の、けれど愛し合う事はお互いの立場が許さなかった。
黒い翼を持つものは、天から落とされた者の烙印。
白い翼を持つ自分は本来であるならば口を利く事すら許されるものではない。
けれど彼は優しかった。言い聞かされてきたそれとは信じられぬ程に。


けれど今知る、彼がどんなにか危うく恐ろしい存在であるかを―



「もう私は十分に待ちました…選べないと言うのなら、あなたの大事な物を全部壊せばいい」


―あなたが私しか選べないように


「…………ひ、あっ、あああああああああああああああああああああ……!!」

耳を劈くかの様な高い悲鳴が辺りに響いた。
背を向ける春歌の翼をそのしなやかな指が鷲掴む。
背へと根を張るそれは少し掴まれただけでも痛いのに、まるで握り潰す様にされて
息が止まる程の苦痛が押し寄せる。
地面へと縋りつく様に手を伸ばすけれど掴むのは土ばかりで前へと進む事が出来ない。

「…嗚呼、こんなものがあるから、君は私の元へ来てくれない、本当に忌々しい…っ!!!!」

クスクスと微笑みながらまるでおもちゃを壊す子供の様にあどけない微笑みで
無体を働く彼が恐ろしくて、体がガクガクと、痛みと恐怖で震える。

「……ひっ…やめて、やめてくださっ……」
溢れる涙が頬を伝う。
か細い悲鳴に、けれど力は弱められる所かより一層強くなって、そして―


「………………あ、あああああああっ……ひ、あっ…ああああああああああああああああああああああああ!!!」


メキメキと軋む音と共に毟られていく翼、残酷な程に白いそれが剥がされていく。
地面へと押しつけられたまま一枚一枚毟り取られてゆく様は目を逸らしたくなる程に残酷な光景で。
ビクビクと痙攣する小さな体を抱きしめて、トキヤは涙を流しながらその痛々しい背に口づける。
真っ白な背中は血に塗れ、小さく息を零す春歌はもうトキヤの名を呼ばない。






up 2012/06/04

チャットでえったんさんと盛り上がった話を断片的に書いてみましたー!
えったんさんこんな感じでいいですかね(^^)






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