一万打記念小説

※Sクラプリンスと春歌(瓶底眼鏡ちゃん)が幼馴染だったらパラレルです。









放課後ロマンティカ-4-






「春歌は何にする?えーっとあたしはサラダとパスタと〜」

食堂へと足を運べば人はまばらでポツリとしか生徒の姿は見えない。
夕食のピークは越えたとはいえ、ガランとした風景がよりここの
広さを強調している様で。本当にこの学園は広さも規模もとんでもない。


「えっと…じゃあ私は…」

そんなにお腹がすいていない事もあって量的にも少な目なグラタンなどを注文してみる。
すぐに出てきたそれを受け取ると、傍で待ってくれていた友近に並んで空いている席を探す。
と言ってもほとんどガラ空き状態だったので隅へと二人で移動する。
窓から見える空はすっかり暗くなって学園生活一日目の夜だと思うと何処か不思議な感覚だ。
こうして自然に友達と食事をとっている自分に、どうしてだか驚いた。

「それにしても随分と遅かったじゃない、練習でもしてたの?」
席に座るなりサラダをフォークでつつきながら向い合せに座る友近に問いかけられて
春歌はキョトンと瞬きをする。

「あ、違うんですっ…その、幼馴染に呼ばれて…」
「幼馴染!?まさか、Sクラスとか……?」
大きな目を更に大きくして興味津々な友近に、はいと返事をすれば
男の子なのか女の子かと聴かれてしどろもどろしてしまう。
しかも幼馴染は三人もいるのだ。一体誰の事から話せばいいのか。
目を爛々と輝かせる友近から後ずさる様に椅子の背もたれにピタリと貼りつく。

「ふむ。じゃあ、春歌はアイドル目指す幼馴染のために曲を作りたいって思って
作曲家目指してんのね!仲いいじゃん」

「そ、そう、…かなっ…でも理由は他にも…あって」
「…理由は兎に角、頑張ってここに入学したんだもん、一緒にがんばりましょ」

ウィンク付きでそう言われて、何だか少し頬が熱くなる。
同性の友達、しかもこんなに美人な子が自分と仲良くしてくれるなんて本当に春歌にとってみれば喜ばしい事で。


と、そこへ見慣れた男性が一人複数の女子生徒と食堂へと入ってくるのを春歌は視線の先へと捉えて
思わず顔を逸らした。彼はとても目立つのだ。出来れば今は気づかれたくない。噂をすれば何とやらであるが本当に偶然とは恐ろしい。
人は少ないとはいえ、席は隅だ。きっと気づかれないだろう。
顔を少し引き攣らせながら、
尚も問いかけてくる友近へと返答を返す。

「…ん?どうかしたの、春歌」
「いえっ!何でもないですっ!えっと、早く食べてお部屋に…」

そう言いかけた所で、またしてもとんでもない人物を視界の隅に捉えて
今度こそ机の下にでも隠れたくなってしまった。

「あれ〜あんまり人がいませんよ、翔ちゃん!寂しいですねぇ〜」

背の高い、金髪の男の人にまるで引きずられる様に入ってきたのは、
もう一人の幼馴染だ。
(レンさんの次は翔君まで…っ!)

春歌は心の中で泣き出したくなった。ここで平凡に過ごすというのはあくまで難しいかもしれないけれど、
平和な学園生活を過ごすためには幼馴染との交流が回りに知れ渡るのはよくないと思うのだ。
そうでなくてもアイドル候補生だというのに、女性徒の幼馴染がいるなんてあまり印象はよくないのではない
のだろうか。そうグルグル考えた所で、未だに翔君の首根っこを掴んだまま引きずっている
長身のその人と目が合った。それはもうバッチリと。


「あっ…!!!」

目が合った瞬間に、突然大きな声を出されて春歌の体がビクリと跳ねる。

その間にも、翔君を連れたままその人が足早に近づいてくる。

「ちょ、おいっ那月離せってえぇぇ!!!!」
ズルズルと引きずられるままの翔君には何も見えていないのだろう、叫び声が響く。
背が高いからか歩幅が広く、あっという間に席に自分達の席の前までやってくると、
その人は眼鏡をかけている事が分かった。優しげな瞳をしているなと、少々近距離で
見つめられている事も忘れてじっとその瞳を見ていると、突然懐かしそうな目で見つめられて。

「エリザベスっ……!!」

突然自分には大凡関わりの一生無いであろう名で呼ばれると同時に、
大きな手が二本伸びてきて、
まるで大きなカーテンの様に自分を囲おうと、する瞬間に。

思わず驚きにギュッと目を瞑った瞬間―

突然、横へと引っ張られて一瞬フワリと体が浮いた様な気がした。
サラリと揺れる髪が頬を掠める。
抱きとめられた腕が逞しくて、ドキリとする。

そっと、そっと目を開けるとそこには見知らぬ…否、何処かで見たような顔が…。

「あれ〜?真斗君も食堂に来てたんですね」

「四ノ宮、少しは落ち着いたらどうだ、彼女が驚いているではないか」
「すいません、つい実家の犬に似ていたから」

まさかの犬に似ているという理由で抱きしめられそうになったのは正直
どう反応していいのか分からないけれど。

低くて、甘い声が自分の頭上から響いて。
(あれ……何だか、とっても懐かしいような……)
何処か落ち着く様なその声に聴き覚えがある様な気がしたけれど、
それよりも何よりも知らない男の人の腕の中にいる、そんな現実が信じられなくて。
抱きしめられたまま、伝わるぬくもりに、顔が熱を持っていくのが分かる。
ドキドキと鼓動が早くなるのはどうしてなんだろう。

「ってえええ!!離せよ那月!!って、春歌!?」

ようやく那月に掴まれたままだったフードを翔は奪い返すと、目の前にはポカンとしたままフォークを持って固まっている女生徒に、ニコニコと微笑む同室の四ノ宮那月の姿。
そして、見知らぬ男の腕の中にいる、幼馴染。
少しだけ頬を染めているその姿に全くわけも分からないまま、一瞬固まる。

「…大丈夫だったか」

突然腕の中、問いかけられて春歌は我に返る。
そっと上を向けば、ジッと切れ長のけれど何処か優しい色をした瞳が自分を見つめていた。
未だ腕に抱きしめられたままの状態で、コクコクと首が折れそうな程に振れば
そうか、と安心した様に腕が緩められて。
有難うございます、そう言おうとした瞬間。
それにかぶさる様に聞こえた声にハッとしてそちらを向けば。
少しだけ自分にしか分からない程にイラついた表情をした幼馴染の姿があって。


「その手を離してもらおうか、聖川」

何時もとは違う雰囲気を纏ったその姿を見て、春歌はゴクリと息を呑んだ。








up2012/06/07

段々話がややこしくなってくるの巻




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