ストロベリー☆ナイト




「あーもう!!超かわいい、マジでかわいいっ!!!」
音楽番組の収録を控えたST☆RISHの楽屋で、
本番前はそれこそ好きな事をして過ごすのが当り前になりつつある楽屋で
静かに本を開いて精神統一していたトキヤのそれを遮るかの様に横の音也がファッション雑誌を広げて
騒ぎ出したのを、横目でチラリと視線をやって
「煩いですよ音也、少しは静かにしてください」
キッパリとした口調で窘めるのは何もこれが初めてではない。
最近熱を上げているアイドルがいるのは知っているが、自分がアイドルだという事をこの男はもしかしたら
忘れかけているのではないだろうか。トキヤは溜息をつくと、持っていた本をパタンと閉じて静かな時間を諦める。
だってだってーと余計に煩くなるから始末に負えない。

「超かわいいんだよ、トキヤも見てみなってば、春歌!」
「あ、俺知ってるぜ昨日番組一緒だったし」
「え、なんだよそれっ!翔だけずるいよー!!」

まるで学生時代の様に騒ぎ出す2人を尻目にその雑誌に目を通せば、ギターを片手に華やかな服に
身を纏った少しおっとりした様にも見える少女がそこには写っていて。

「ちょっとだけ話したけど、すっげーいい奴だったぜ!」
「翔、サインは!?サインはぁああ!!」
「馬鹿、そんなの頼めるわけねーだろうが!」
「騒がしいねぇ、一体何なんだい?」
あまりの騒々しさに、今までイヤホンで耳が塞がっていたレンまでも興味深そうに開いた雑誌を覗いてくる。
「あぁ、レディなら今度一緒にCMを…ってイッキ?」
「何で俺だけ春歌との仕事が回ってこないんだよ〜!!」
レンの一言にまるでこの世の終わりだとでも言う様に床に膝をついて項垂れる音也に、
翔もトキヤも呆れた視線を投げる。アイドルは恋愛禁止だという事を忘れかけているのではないだろうか。
「レン、そのCMとは先日言っていた女性用の化粧品のCMですよね?」

のの字を書いている音也は放っておいてトキヤは隣に腰かけたレンへと話題を振る事にする。
「ルージュのCMらしくてね、俺が彼女の唇にそっと」
指で唇をなぞる真似をしたレンにトキヤは鳥肌を立てながらそうですかと返せば。

「遅くなりました〜!」
「すまない、少し長引いてしまったな」

先程から話の腰が折れまくりであるが、能天気な声と共に開かれた扉から中に入ってきたのは
不在だった那月と真斗で。
珍しい組み合わせでのバラエティー番組の収録に那月は何時も通りの笑顔だが、真斗の方は少しだけ疲労が見れる。
「マサ〜!聞いてよ、俺だけ春歌との仕事が回ってこないんだよー!!」
大方毎日話を聞かされているであろう真斗は今のセリフだけで何の話か分かっているのだろう。
椅子に座る間も無く音也に泣きつかれて何時もよりも騒がしい楽屋に音も無く溜息を吐く。




up 2012/03/03





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