か細い声と共に開かれた扉から姿を見せたのは、渦中の人物だった。

「じゃ〜ん!七海春歌ちゃんで〜す、実はまだ極秘だけどうちの事務所に移籍する事になったのよ〜!」


「お休み中の所すいません…まだ少し先になりますがこちらの事務所でお世話になる事になりましたっ…なな、七海春歌です…よろしくお願いします」

遠慮がちに林檎の後ろへと立っていた細い両肩を押す様にして林檎に前に出された春歌は零れそうな大きな瞳を
緊張で少し潤ませてやっとの事で挨拶の後にペコペコと頭を下げる。
大方強引にここまで連れてこられたに違いない。
如何にもアイドルといった感じで白いひらひらとしたまるで花の様なワンピースを纏った彼女はまるで人形の様だ。
一瞬ここにいる誰もが見惚れたに違いない。

「っておおい、音也!!こいつ、目開けたまま失神してるぞ!」

真斗の隣で先程の状態のまま石像の様に固まる音也を翔が一生懸命揺すっている。
それもその筈、先程まで散々会いたい、
サインが欲しいと喚き散らしていた憧れの人物が突然目の前にいるのだから。
それをまるで空気の様にスルーして林檎は話を続ける。

「春ちゃんの事務所ね〜色々と問題があって、
それでシャイニーが彼女を預かる事になったの、先輩として皆仲良くしてあげて頂戴ね」

ウィンクつきでそう言われて、皆それぞれ反応はしているものの、
心ここにあらずといった感じだ。
それぞれ仕事で一緒になった事があるといってもそこまで深く会話したわけでもなければ彼女は今売れっ子のアイドルだ。
その彼女が自分達の事務所に来る事は大変喜ばしい事ではあるけれど、
ライバルにもなり得るわけで。

「よろしくね、レディ」

一番最初に我に返ったレンが座ったまま春歌へと声をかけるけれど、
春歌本人はと言えば、何故だか少しだけ部屋の奥へと視線をやったきりソワソワとしている。


「これから一緒の事務所なんて本当に嬉しいですねぇ」
小さくて可愛いものが好きな那月は今すぐにでも抱きつかんばかりの勢いで喜んでいる。

「…これから大変になるとは思いますがお互い頑張っていきましょう」

無愛想なトキヤらしからぬその言葉に、皆が唖然としている中で、
春歌は少しだけ頬を染めてあ、有難うございますと返事をやっと返している。
これだけ大勢の男性陣に囲まれれば多少緊張はするだろうものの、
少しだけ様子がおかしい様な気がする。

それに続いて翔も言葉をかける。

「き、昨日はサンキューな!これからその、よろしくな!」

少しだけ前に踏み出して春歌の腕を軽く叩けば、春歌はほんわりと微笑んで。
「翔君!き、昨日はこちらこそ有難うございました、
あの…これからよろしくお願いしますっ!」







up 2012/03/05






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