「きみって、いつも怒ってるね」
隣でそう笑ったシュウの声は穏やかだった。何度やっても完璧になることのない化身の合体に俺はこんなにも辟易としているのにシュウのほうは余裕綽々で、それがまた俺の中の苛立ちをどうしようもなく掻き立てる。
「…お前はこんな時でもへらへらしているんだな」
「そう?」
「自覚もないのか」
ボールに向き直ってからシュウへと冷たく一瞥をくれる。けれどもそれが俺の望んだ効果を示すことはなく、彼は「焦らないでいこうよ」と気の抜けた声で笑った。その喋り方が嫌いだ。
「…俺はお前にもっと焦ってほしいんだが」
「僕に?」
「俺達に残されている時間が限りないという訳ではないんだぞ」
「…そっか、そうだね」
それからシュウはゆっくりとした動作で立ち上がった。なにもわかっていない。どうしてこいつと一緒でなければならないのだろうか、化身合体が一人きりでも完成するものだったらよかったのに。わざとらしく溜息をつけば、シュウはまた俺を見て笑った。
「また怒ってる」
「…誰のせいか、わかっているのか」
「ごめんごめん」
かつてここまで心の篭っていない謝罪を聞いたことがない。苛立ちをこめて強くボールを蹴り飛ばす俺の後ろで、シュウが独り言のように呟いた。
「…僕はその怒りを無くしちゃったから、きみのそれがとても愛おしいんだよ」
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120318