シュウ←白竜+カイ







 シュウと白竜がただのチームメイトという言葉だけで括れる関係ではないという事は、なんとなく気づいていた。二人の間にはなんだか普通の男同士にはあってはならないような不思議な空気があって、もしも空気に色がついていたのならば、二人の間を行き交っているそれの色はピンクだっただろう。そういう事には聡いほうなのだ。
だからこそ、あの島を離れて白竜がシュウを失ってからも、白竜が依然としてサッカーを続けていた事には驚いた。いや、サッカーを続けていた事が驚きなんじゃなくて、たいして凹む様子もなく平然と練習に現れた事が驚きだったのだ。

「サッカーをしてるとさ、シュウのことを思い出したりしないの」
「…それが何だ」
「辛くならない?」

俺がそう言うと、白竜はまるで訳がわからないとでも言うように眉間にシワを寄せた。

「どうして辛くなる必要があるんだ」
「どうしてって…」
「約束したんだ、シュウと。ちゃんと前を向いていくと」
「…白竜って泣いたりしないの」
「しない。シュウに会って強くなれたんだ、もう泣く必要などない」

それはちょっと違うんじゃないの。そう思ったけれど、思っただけで口にはださなかった。もしも言葉にして白竜の機嫌を損ねてしまったら面倒だからだ。
悲しい時に涙を流さないでいったいいつ流せばいい。白竜が嬉し涙を流せる日がいつ来るのかだなんて、それは誰にもわからないというのに。その日まで白竜はどうするんだよ。別に白竜の生き方に口を出す理由はないのだけれど、それでも俺はこのまま彼がこのままどこかで折れてしまうのではないかと心配なのだ。
こんな時、シュウだったらいったいどんな言葉をかけるだろう。どこまでも真っすぐな奴だ、シュウはよくこんな奴とそういう関係に踏み切れたもんだと関心してしまう。こんな馬鹿正直なやつと付き合いきれる人間、この世界にはそうそういない。

「…白竜って結構強い人なんだ。もしも俺が大切な人をなくしたら一ヶ月は立ち直れないね」
「それはお前が弱いだけだ」

それに、と白竜は付け足すように呟く。

「…あいつには遠く及ばないさ」

きっと白竜は独り言のつもりで言ったのだろう。だから俺も聞かなかった事にしておいた。

こんな馬鹿正直なやつと付き合いきれる人間、この世界にはそうそういない。だからこいつにはやっぱりお前が必要だよ、シュウ。お前が白竜を泣かせてやらなければならない。じゃないと白竜の涙腺がそのうちパンクして壊れてしまうかもしれないだろ。
誰かじゃなくて、お前じゃなきゃ駄目なんだ。


120312

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