「最近どないしとんの?」

「ツアーがこの前終わったわ。オルハはどうなん?」

「相変わらずや」

「ほうか」



久しぶりにオルハに連絡したらえぇよ、なん言われたから馴染みの店で呑んどる最中。

ここな、全室個室になっとるから話ながら呑むのに丁度えぇねん。

人に聞かれたら困る話とかする時は特に、な。


グラスを持った手をかき混ぜるように振れば、中の氷がカラン、と音を立てる。

「ツアー、盛り上がったん?」

「当たり前や。来るなら次の時パス出すで」

俺がそう言えば、オルハは自らを嘲るかのように軽く笑った。

「…止めとくわ。いつ仕事入るか解らんしな。ありがとな」

「忙しいんか」

「や、今はそうでも無いわ。でも先ん事は読めんからなー」


そんまま戯いの無い話をしとったら
そういえば、とオルハが何かを思い出したかのように言葉を紡いだ。

「前の任務が途中で中止になってん。そん時に面白い奴見つけてなぁ」

「…へぇ」

「お前んとこの澪雅みたいな紫の髪しとったんよ。そいつの発言も行動も…まるで俺の嫌いな太陽のような奴やったわ。」

「……」
ゾクリと背中が粟立ったのがわかる。
原因なん解っとる。…オルハから発せられた殺気や。

別にオルハのやっとる仕事に抵抗なん無いけど(誰かがそんな仕事もせな治安悪くなるしな)ほんまスイッチ入ると恐いんやな、って。







「…何考えとんの」

「怒らせたら恐そうやなと思って」

「ライブ中に雷出すような奴に言われとないわ」

「ふは」

そのまま2人で笑って、呑んで。
何時ものように別れて帰路に着く。





暗闇の中ぽっかりと浮かんどる月をぼんやり眺めながら歩いとったら、人の気配がして。

しまったと思った時には遅かって、思いっきりぶつかった。


「あ、すんません。大丈夫ですか?」

「俺の方こそすみません!ちょっと急いでたから…」

走っとったんやろうな、息が上がっとる青年と目があった。

月の明かりに照らされた紫の瞳、と…髪。
思わず目を見張った。


「あの……どうかしたんですか?」

「、」
声を掛けられて現実に引き戻される。

「あぁ、すんません。綺麗な髪色しとりますね」

何や俺、女口説いとるみたいやんけ。

「あ、ありがとうございます!貴方も金髪似合ってますよ!」

にこっとした笑顔は、さっきオルハが話しとったような「太陽」そのもので。

「はは、ありがとうございます。ほな、ぶつかってもうてすんませんでした」

軽く会釈して歩き出す。










―…あの人がそうなら確かにオルハ嫌いそうやわ

まぁ、俺には関係無いねんけど。
そっちの「世界」ん事なん自分から首突っ込まんに限るわ。



「…阿呆らし」
はよ帰って寝よ。




20120123




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