re ハッピーアニバーサリー


※「アンチ アンハッピーアニバーサリー」続き





三年ぶりに聞いた沢村の声は案外あの頃のままで。
もうちょい低くなってるかと思ってたんだけど、それが逆にあの頃を彷彿とさせた。
無機質の携帯から伝わった、微かに震えた声はもう何度となく俺が望んでいたもので。
驚きと愛しさと不安と気まずさと懐かしさと。
訳分かんねぇくらい感情がぐちゃぐちゃになって、どう言葉を紡げばいいか戸惑って。
沢村以上に震えた声で、どうにかして現住所を伝えた。



…あれから30分、未だ右手は携帯を握り締めたままカタカタと震えている。
全く、情けないったらありゃしねぇ。
気を紛らわすように付けたテレビには何度も自分のヒーローインタビューが流れる。

「……ははっ、ひでぇ顔」

気を紛らわすどころか滅入っちまった、と嘲笑うように吐き捨てる。
と同時にインターフォンが鳴った。
煩わしいテレビを切り、ゆっくりとリビングを出て肌寒ささえ感じる廊下を進む。
震える右手をなんとか動かして、カチャリと鍵を開けた。
足がすくみ冷や汗が流れる。
ホント、情けねぇ。


いつも以上に重く感じたドアを開けば、三年ぶりの懐かしい姿が。
余程急いで来たのか肩を上下させて息をしている。
ああ、沢村らしいな、なんて思ったままお互い動かず動けず。
だってあれから三年も経った。気まずくないハズがない。





…それでもいつだって強いのは沢村で、いつだって臆病なのは俺で。
今回だって状況を打破したのは沢村で。




「ひでぇ顔」…と小声で呟かれたと思ったら、相変わらず自分より小柄な身体が体当たり。
勢い余ってそのまま玄関に倒れ込む。
思わず痛てぇ、と漏らせば回されていた両腕の力がギュッと強くなった。
そうしてようやく見た三年ぶりの沢村の顔は、


「……お互い様、だろ?」


笑いながら眉を八の字にして、目に大粒の涙を湛えていた。
ああもう、ほら、泣くんじゃねーよ。俺まで泣けてきただろうが。
抱きとめた沢村を精一杯抱き返して、その温もりに俺も眉を八の字にしながらも笑って泣いた。
いい大人が二人して開けっぱの玄関先でなに号泣してんだ、なんて気にも留めずに。




ああちくしょう、俺今すっげー幸せだ。





(re ハッピーアニバーサリー)
(もう二度と離すもんか)





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