その笑顔は綺麗すぎた ※先生×生徒続き



「……倉持先生ぇー」
「あ?次はここか?」
「っス」
「バーカY移項してどーすんだ。余計面倒になるだけだろ。……ここはXを移項してこの公式に代入してだな」
「あっ!そっか!」
「分かるの遅ぇよバカ。一問解くのにどんだけ時間かける気だよ!」
「いでっ!」
「こんぐらいで痛がるな。ただのデコピンだっての」
「ペンでのデコピンはレベルが違う!」
「ヒャハ。タメ口禁止デコピーン」
「あだっ!…ちょ、次の問題解けないっスからストップストップ!」


沢村が生意気にも俺からペンを取り上げて補修プリントに取り掛かりだす。
すぐさま口を尖らせながらうーうー唸り出すのに苦笑しつつ足を組み替えた。
確かにコイツは筋金入りのバカだけど集中力は人並み以上だ。
分からない問題にもこうして全力で取り組んでいる姿を見るのは正直悪くはない。
俺一応教師だし。


「お前さー、もうちょっと今の集中力をいつもの学習に発揮出来ない訳?」
「無理っスよ!先生なら野球部のハードさ知ってますよね!?」
「まぁな、俺ここのOBだし。でも孝査前にゃちゃんと勉強して赤点は回避してたぜ?」
「うっ……」
「補修してたら練習量減るだけだろ?ったく、お前も良く毎度嫌いな先公の補修を受けれるよな」


取り上げられたペンを取り上げ返し、くるくると器用に回す。
頬づえをつきながらなんとなく沢村を見れば不思議そうに首を傾げていた。


「へ?」
「……あん?」

「俺、倉持先生のこと好きですよ?」

「………は?」


あっ!スパーリングは嫌いですけど!なんて言いながらバカみたいに沢村が笑った。
それがあまりにも綺麗だったもんだから、思わず返す皮肉が見つからないどころか手にしていたペンを床に落としてしまう。
だっせー俺、高校生相手になにしてんだよ。


「倉持せんせー?」


沢村がずいっと身を乗り出してこちらを伺う。
ああ、天然ってのはこーゆーヤツを言うんだな…つかこいつ結構目大きくね?
…なんて頭の隅でぼんやりと思ったのはとりあえず御幸のせいにしておこう。
つか絶対御幸のせいだ。
じゃねーと高校生、しかも男子にこんなこと思うはずねーよ、うん。


「っ。なんでもねーよバカ!さっさと終わらせるぞ!」
「いだっ!暴力あるから補修ヤだったんスよ先生のりふじん!」
「うるせー理不尽ぐらい漢字で書け!」




(その笑顔は綺麗すぎた)
(ああちくしょうなんだよコレ)
(少しだけ御幸が沢村をかまう理由が分かった気がする、なんて)






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