だからあなたが嫌いです



「御幸先輩が嫌いです」
「…はい?」
「だから、僕は御幸先輩が嫌いです」


常に飄々としている彼がほんの一瞬目を見張った。
珍しいと思ったが、御幸はやはりすぐにいつものポーカーフェイスを取り戻した。
キャッチャーの役柄にこれ以上ふさわしい人はいないんじゃないかってぐらいのつくろいの速さ。
さすがだとは思う。尊敬もしている。
でも。

「はっはっは、そーかそーか」
「はい」
「ちなみに今後の参考として聞いとくわ。理由は?」

問われて口を開き、すぐに止めた。
後ろからパタパタと軽快な、特徴のある聞き慣れた足音。
直球で答えるつもりでいた答えと別の答えを探し出し、今度こそ口を開く。


「…あなたはズルイ」

そう言ってこれ以上言うことはないと言わんばかりに目を伏せた。
きっともうすぐ彼の声がかかる頃だから。




「あーっ!ここにいやがった!探したんだぞ!」




いつだって、僕ではなく、彼に。





(だからあなたが嫌いです)
(ちょ…シカトすんなって降谷!)
(え……僕?)
(たりめーだろ!クリス先輩が俺らを呼んでんだよ!ほら早く行くぞ!)




*****
恐らく御幸さんは(いろんな意味で)面食らった顔でいるんじゃないかと(笑)






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