要は量より質だと


「間に合って良かったね、入学式」
「頑張って走り回った甲斐があったなー」

なんとか無事に入学式を終え、その後は流れ解散となり、適当に見つけた学生ホールで二人してジュースを口にする。
買ってから少し経った炭酸は気が抜け始めているのが気になるが、入学式で緊張した為酷く渇いた喉は十分潤せた。
栄純君はオレンジジュースを早々に飲み干している。



――ふと気付けば辺りは入学式後とあってか随分と騒がしく、こちらまで声が反響していた。
一々確認せずとも分かる。恐らく同級生達の物だ。
それに気付いて一気に気まずくなり、思わず「…あ」と溢せば不思議そうにこちらを見る栄純君とかち合う。
妙に目力のある大きな瞳に一瞬言葉に詰まるも、口を開いた。

「あのさ…栄純君は、良かったの?」
「ん?何が?」

あっち、と指を差さしたのは早速気の合う友人を見つけたであろう同級生の姿。
それを視界の端に捉えつつ、再び良かったの?と尋ねる。こんな所にいて、と。
二、三度瞬きをした後に自分が言わんとしていることが分かったのか、栄純君がああ…と呟く。

「いーよ、別に。友達なんて急いでつくるもんじゃないだろ?その内自然と出来るって!」
「…でも…」

喉が渇いたからジュース飲まない?とここまで引っ張って来てしまったのは自分だ。
そうでなければ栄純君の性格だから今頃沢山友達をつくっていただろうに。

(もっと早く気付いてれば…)

故意的ではないとは言え、栄純君が友達をつくる機会を潰してしまったのには変わりない。
誘う前にそこまで頭が回らなかった自分の無神経さを悔やむ。
しかし当の本人と言えばあっさり自分と居ることを取ったのだ。



「だってもう春っちが友達になったじゃん。それに俺も喉渇いてたからさー。むしろ誘ってくれてありがとな!」

屈託の無い笑みを向けられて反射的に頷く。
栄純君がここに来て初めて出来た友達で良かったかも、と思いながらジュースを飲み干せば、完全に炭酸が抜けきったことなんて気にならなかった。



  
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