そして動き出す


「沢村」
「はい?」
「お前…こっちに来ないか?」
「え、こっちって…まさか…」
「ああ、青道大だ」
「青道大ィ!?」

まだ高さの残る声が大ボリュームで響く。
それにすっかり慣れたクリスはさして気にする事なく続ける。

「お前…このまま自分の才能を潰す気か?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよクリス先輩!才能も何も俺、ちゃんとした音楽教育受けてないんスよ!?」
「知ってる」
「楽譜読めまないんスよ!?」
「…知ってる」

「じゃあなんで…」
「お前の音を無駄にしてほしくない。まともな知識が無いからこそ、お前独自の音が生まれる。俺はそれが好きだ」
「…クリス先輩…」
「それにちゃんとした場所で弾いてみたいんだろう?もう一度聞く。こっちに来ないか?」



大きな瞳が反らす事なくひたすら見つめてくる。
そこに見えた僅かな、されど確かな歓喜と期待の感情。
それを見てクリスは沢村に気付かれぬ様ひっそり微笑んだ。



 
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