memo


アンハッピーアニバーサリー
2010/05/01 15:25



御沢小説
珍しく報われない












何かある度に涙を見せていた沢村の最後の涙を見たのは、ちょうど三年前。
「別れよう」と泣きながら言われた。
別れよう、御幸。俺はアンタをダメにしたくないんだ…と。
よりによって卒業式にそんな冗談はよしてくれ、と思った。
冗談だと、心から思いたかった。
でも沢村が泣いてたから。
…そうだよな、嘘つけるほど器用なヤツじゃないよなって。


沢村のためならプロ入りだって簡単に投げ出せた。
でもその沢村に「俺をダメにしたくないから別れたい」と言われたら投げ出すこともできなくて。
自分のためじゃなくて相手のために別れるなんて。
それこそ沢村らしいな、なんてあの時思わずにちゃんと引き止めていればよかった。
ちゃんと俺の傍にいろと、言えばよかった。


何が「俺をダメにしたくない」、だ。




「お前にフラれたせいで俺はダメになっちまったじゃねーか…」


ギリ、と噛み締めた唇から広がる鉄の味。
沢村と別れてからちょうど三年。
どうしてこう、毎年同じ日にあの時のことを夢で見るんだ。





(アンハッピーアニバーサリー)
(俺が唯一泣く記念日、なんて)






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