風はいいよなあ。いつも呑気に自由そうで考える事も悩む事もなく吹き続けて自分のやりたいようにやってけんだかんな。愛銃の手入れをしながらこんな事を考えるなんて俺らしくもねぇな。窓何か開けんじゃなかったぜ。風が部屋の中に入ってきて俺のボルサリーノを飛ばしやがったからだ。この俺の帽子を飛ばしたんだ。人間だったら額に風穴が出来てるんだよ。だけど風をいくら撃ったって的がねーんだから当たるわけがねぇ。弾の無駄と余計にストレスがたまるだけだかんな。…ストレス?
「リボーンって無表情を作ってるけど実際感情まるだしだよ?」
「何言ってやがんだ。花子の前だけだぞ」
「ば、ばかものっ!」
物を投げるな馬鹿。お前のが馬鹿だこの大馬鹿者。そんな赤い顔して照れたってなあ、物を壊したら許さねーからな。と言おうとした矢先に花子が投げたクッションが花瓶にあたりガチャンと良い音を立てて落ちて割れた。
「ご、ごめん、なさいっ」
「…はあ。少しは慣れろ。そして学習しやがれバカ」
涙目+上目使いとはつくづく卑怯な奴だ。おまけにさっきの言葉に照れて顔が赤いままだったしで怒るにおこれーねーじゃねえか!いつから俺はこんな甘くなったんだ?ツナが俺の言葉にビビって転んで置物を壊したときはすぐに脳点めがけて撃つのにこいつには何故かできねえ。確かにツナは避けるって確信があるからできるのかもしれねえがこいつも一応ヒットマンで避ける事はできるだろう。なのに俺はこいつに銃を向けること自体が嫌で一度も向けた事がねえ。想像しただけで悪寒が走る。こんなに愛しすぎていいのか?
「慣れないよーっ。だってリボーンが言うんだもん」
多分違う女が体育座りをしていじけ始めたらそく捨てる。じめじめした奴は嫌いだ。マフィアは女に優しくなきゃいけねえから泣かせはしねぇが二度と口をきく事はなくなるだろうな。
「好きな人にそう言われたら嬉しいし恥ずかしいもんなんだよ」
お前こそ平気な顔でその言葉を言えることに俺は不思議でしょうがない。聞いてるこっちが恥ずかしいじゃねーかっ!俺のストレスがわかった。こいつが風みたいに俺がどんなに愛してると言ったってそれを跳ね返しちまうからだ。さりげなく言ったって直球で言おうがこいつはサラッと流して受け止めて倍返しにして俺に打ち返してきやがる。守ってやりたいのにその必要がなくて逆にこいつは俺を守ろうとして、調子がくるうんだよな。まあ、お前が俺を必要としてるんだからいいか。
(え!?私が風?リボーンじゃない?)
(なんでだ?)
(掴んでないとどっか行っちゃいそうじゃん)
(じゃあ、花子は俺の事を掴んでるのか?)
(うん。もうガッチリとね!)