焦る気持ちはあるんだけど
言葉にする事ができないんだ。

70


僕と花子は中学からの付き合いだ。
今年で24歳になる彼女から出た言葉は「結婚したいな」だ。
思わずお茶をふきだしてしまった。

久しぶりに自室でくつろいでいたらまさかのコレだ。
何を求めているかは分かるが今言わせる気なのかこいつは…

仮にも僕と言う恋人がいるんだから「結婚したいな」じゃなくて「結婚いつしようか?」にすればいいのに。
彼女に言わせようとしている僕は凄くずるいと思う。

「あたし本当は20歳で結婚したかったんだ」

「ふぅん」

「4歳も過ぎちゃった」

「それは残念だね」

「何でだと思う?」

「……僕が言うのを待ってるから」

「ちょっと違うかな」

何が違うんだよって意味を込めて睨むとふにゃと笑って花子は僕と向かい合う形で正座した。
突然こんなことを言い出したのは多分アルコバレーノにでも急かされたのだろう。
余計な事をしてくれるよ。せめてこっちの心の準備も出来てから言えってーの。

それに僕は花子とこのままの関係でいいと思ってる。
長い間一緒に居たから既にお互いの事を知り尽くして居て…それって夫婦と同じことだろ?
結婚したらもっと花子を危険な目にあわせてしまうのが嫌なのもあるんだけどね。
僕が君を守るって言っても仕事で手一杯で守れなかったなんてそんな事があったら嫌だ。
それほどまでに僕は君を愛しているんだよ。

「雲雀がいいからだよ」

「…当たり前でしょ」

「全然分かってないなぁ」

「花子が説明するの下手なだけだよ」

「もおーっ。雲雀にちゃんとあたしが奥さんがいいって認められたいの!」

頬を膨らましてそっぽを向いてしまった花子を抱きしめた。
僕とは正反対で花子は素直だ。
涙目になっているのは僕が君を奥さんにしたくないんじゃないかと思って不安だったんでしょ?
ずっと一緒に居るから僕も油断してたよ。

「花子以外僕の奥さんはありえないから大丈夫」

「だ、だって雲雀は…っ」

「僕の奥さんになったら花子が危険な目に会うことが多くなると思って言えなかったんだよ。…花子はそれでも僕の妻になってくれる?」

「な、なる!なるっ!」

眼に涙を一杯ためて笑顔で抱きついてきた花子を受け止める。
やっと言えたけどムードも雰囲気もなかったな。


(雲雀と一緒なら怖くない)
(お化け怖い癖によく言うよ)
(それとこれとは別!)
(じゃあ僕と一緒なら幽霊も怖くないの?)

(……恐い(咬み殺す)
(だって怖いもん!)




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