様子が変だと思っていた。と言っても、彼女の様子は至って『普通』で、その表情筋をぴくりとも動かさないような、酷く乾いた顔からは、罪悪感や焦燥感などは全く感じられなかった。だが、昨日のことだったか、風もないような生暖かい夜だった。彼女は行為が終わった後に、一言「自由が欲しい」と言った。「自由」?彼女の言う自由とは何だ?普段俺と共に過ごしている空間や時間のどこに不自由がある?時間や場所を制限されることなく好きな場所へ行け、自分の好きなものを好きなだけ食べられる生活に、何が不足している?彼女の欲しいものを全て与えているはずなのに。自由が欲しいと言われる俺は『何』?彼女の何かが変わり始めている。でなければ、そんなことを言うはずがない。一体何が、誰が彼女を変えようとしている?彼女の鼓動は未だに寂しそうに鳴っていると言うのに。

ねえ、神楽

「神楽はさ、わかってないよ。神楽のすべてを解ってるのは俺だけなんだよ?神楽の隙間をほんとうに埋められるのは俺だけ。きっと、すぐに判る。神楽が最近外で一緒に遊んでいる誰かは、遊んでいる時だけの関係。それ以上でも以下でもない。誰かはその内神楽を置いてどこかへ去って行く。絶対にね。でも俺は、どこへも行かない」

雨の降らない場所で雷は鳴らない。彼女は雷を恐れているが故に、雨の降らない場所を求めて俺から逃げている。だがその雨が、彼女の孤独や欲望を洗い流しているということを、彼女はいずれ知るだろう。












2012.05.23. misa
dreams


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