彼女の言う「ほんとう」は、いつだって「真実」という意味を孕んでいた。大人たちはその問いかけに気付けないし、彼女はそれを気にしない。俺はそれを知っているけど、彼女はそれを気にしない。

「お前のその子供のフリ、いつまで続けんの?」
「ハイ?」
「そのまんまの意味でィ。子供のフリ」
「…なに言ってるアルカ」
「しらを切んなァやめなせェ。俺はずっと知ってる。お前はそんなガキじゃねえ。お前は旦那やメガネが思ってるより、ずっと“大人”だ」
「…ふぅん、あっそ」
「…」
「…」
「…つかお前のその可愛くないのって、」
「ずっとヨ」
「ハ?」
「子供のフリ。ずっとするアル。オトナになってもずっと。私は子供だから」
「…」

意味は、解らなくなかった。だから俺は沈黙する。桃色の綺麗な髪が日陰でさらさらと揺らめいている。憂いを帯びたような、だけれどもあどけない表情は、何もない宙をただ眺めていて、美しい。俺は何も言えなかった。

「お前は優しいのネ」
「…え?」
「優しくて、弱い」
「…俺は弱くない」
「弱いヨ」

俺の何を知って、彼女がそう言っているのか。もうなんだか、自分の情けなさに泣きたくなってくる。俺より四つも年下のくせに、生意気な女だ。そして少女は静かに口元だけで微笑んで、俺をじっと見詰める。

「…わたしも、弱いのヨ」

なあそんな悲しそうな顔をしないでおくれ。今の俺はお前のことを何も知らないし、お前のすべてを知ろうとなんて考えてない。ただ、伝えたかったんだ。お前を理解したいんだと、俺は愚かな大人達とは違うから、お前のほんとうを解ってやれると。でも、そうだろうか?所詮は俺もこいつのことをませた“クソガキ”だと思ってたんじゃないか?ああ、なんて声を掛けていいのか。お願いだ、これで諦めて、心を固く閉ざしたりしないでくれよ。



















2012.09.08. misa
同じような文しか書けない悔しい
文才くだしゃい
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