子供の頃は、目を瞑れば宇宙が見えた。真っ暗闇なんてものは自分には存在しなくて、いつも手の届きそうなくらい近くに、小さなきらめきが幾つも幾つも浮かんでいた。黙ってそれを眺めていると、黒くてチカチカした空間の中に、段々と懐かしい映像が浮かび上がる。風が入ってゆらゆらと揺れる、自室の白いカーテンと小窓。憂いを帯びたような横顔の、知らないはずの少女。稽古場の窓から射し込む太陽の光、近藤さんの広い背中、姉上の華奢な手。いつの間にか、見えなくなっていた。血塗られた戦場や書類に埋もれた机やセピア色と化した城下町の中に、溶けて無くなってしまった。
いつから?

「…なんかお前、今日暗くネ?」

太陽が丁度頭のてっぺんに来る午後。いつもの公園のベンチで一人物思いに耽っていると、見慣れた少女の影が足元を覆った。自然と溜め息が溢れる。今は、誰とも喋りたくない。…かと言って、ここから動くのもめんどくさい。

「…うっせーチャイナ、ほっとけ。今日の俺ァちょいとセンチなんでィ」
「せんち?せんちって一センチ二センチのせんちアルカ?」
「うるせーあほー」
「あほじゃネーあほー」
「ちげェやい、センチメンタル ってやつでさァ」
「へー、お前の口から横文字出てくると思わなかった」

で、せんちめんたるってなにアル?
もうほんとこいつと喋んのやだなァめんどくせえ。シカトしようと決め込んでも、小さな手で隊服の袖をそれはもうガッチリと掴んでゆさゆさと揺さぶるもんだから、このまま無視することもできない。はいはいわかったからやめなせェ、と適当におだてて黙らせておく。そういえば、なんで俺は子供の頃(それも、確かな記憶なんてほぼないくらい昔)のことなんて考えてたんだ?きっかけが思い出せない。なんでだっけ。

「今日もあっちーアルナー」

隣に腰掛けるチャイナ服は、小さく三角座りをして、傘の影にすっぽりと体を隠している。白い首筋につう、と流れる汗の滴が、襟元を少しずつ濡らしていく。どこを見るわけでもなく宙に放り出された視線は、乾いた地面をぼんやりと捕えていて、頼りない。ふいに、あどけなさを残す少女の横顔が、いつか見た瞼の裏に映し出されたものと重なる。似ている。ひどく、似ている。

「…お前、」
「…あ?」
「…いや」
「なんだヨ、もしかしてアイスでもおごってくれるアルカ?」
「…」
「…なんだヨ、しけてんナー」

…気のせいか。こんなガサツなメスゴリラが、あの可憐で儚げな少女なわけない。でもなんだか、胸の奥がざわざわする。さっきまでは普通だったのに、隣に座る少女を見ると、段々と顔が熱くなってくる。太陽のせいか?でも、なんか俺

(こいつのこと、好きかもしれない)










2012.05.18. misa
いみわかんないし総悟が気持ち悪い
とりあえず総悟が昔のことを思い出したのは神楽ちゃんの横顔を見たからです
いろいろとご想像にお任せします
説明放棄すみません(>_<)
というかまた季節が真夏…
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