どうしてこうなった、と薫は頭を押さえた。
ルフィという少年と処刑台の前で知り合い、海賊王の話に花が咲いた、そこまでは、良い。
だがしかし、これは、これは……

「これが海賊王の見た景色っ!」
『コラ君っ!今すぐそこから降りなさい!』

世界政府の管理下にある、処刑台の上に登るだなんて。
この少年はなんと非常識なのだろう。
常識の無さに頭が痛くなるが、同時にその常識の無さが面白い。
半笑いで、「降りてきなよ」と言おうとした。
それが声にならずに喉で押しとどまったのは、隣に居た警部がこん棒で殴られ倒れたから。
びっくりして飛び退けば、そのこん棒を振り回すのはなんと、“絶世の美女”………そう呼ばれてもなんら不思議ではない、美しい女性。

「探したよルフィ……!久しぶりだね。まさかアタシのこの顔を忘れたわけじゃないよね…?」

どうやらこの美女はルフィの知り合いらしい。
しばし美女に見とれたが、この美女が警部を殴った事を思い出した。
慌てて駆け寄るが、出血はあまり大したことはないみたいだった。
舌を噛んでしまったようで口の中も多少怪我をしているが、これぐらいならばなんの問題も無い。
………しかし、薫は背負っていたバックから包帯を取り出し、警部の顔へとぐるぐる巻き付けていく。
加減が分からないのか、ただひたすら包帯がなくなるまで巻いてしまい、警部は顔だけミイラ男のようになってしまっていた。

ふぅ、と一安心した薫は立ち上がる。
その時、

「ハデに死ねェーっ!!!」
「うわあああっ!」

穏やかではない声と共に聞こえたのは爆破音。
壊れた噴水の破片が、薫と美女へと向かってくる。
危ない!そう叫んだのは薫になのか美女になのか、それは分からない。

薫は飛んでくる大きな破片に向かって拳を構えた。
なにも武器を装備していない、ただの拳だ。
―――コイツ馬鹿か!?
誰もがそう思ったとき、薫が瓦礫に拳をぶつけた。
すると、普通コンクリートを殴った時には聞こえないような破裂音が聞こえ、薫に向かっていた大きな噴水の破片は粉々になって、さらさらと風に飛ばされていった。














第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -