ブラブラと、投げ出した足の爪先を見つめる。周りはまだ少し白らんでいて、霧だか靄だかがかかっていてこの公園内から外は私には見えない
もともと夜行性の私は、ラハール達が寝静まった頃に活動し始める
そのせいか、私が城に帰ってから寝るまでの朝にしか皆に会うことは出来ない
それはいつも通りだし、なんて事はない。プリニーだって夜中起きている奴も居る。暇じゃないし、不便に感じたことは無い。でも、なんか、
『(ラハールとフロンちゃんが、ねぇ…)』
可笑しく思うところは、無い。フロンちゃんはラハールにくっついていたし、ラハールは一度堕天しているとは言え、天使にも関わらずフロンちゃんを側に置いていた
思えば、ラハールが素直でフロンちゃんが自分の感情に敏感なら、もっと早く両思いになっていたんだろう
聞いたわけじゃない、見たわけじゃない。ただ、そう、言うなれば、雰囲気やオーラが、いつものそれとは違った気がした。伊達にあの三人より生きては居ないし、クリチェフスコイ様の弟子はしていない
『これは…愛、か?寂しい?悲しい?』
私は、きっといつの間にかラハールを好きになっていたんだろう。幼い頃から知っている彼を。今まで私が一番近くに居たのに、と嘆くような女々しさは私には無いけど、この心にぽっかりと空いたような穴に風がヒューヒューと抜けて寒い。胸の痛みを誤魔化すように、腕を擦ったりつねったりしているが、効果はいまいち現れない
嗚呼、これが愛すると言う事なのか、それとも寂しいのか悲しいのか。どれも悪魔になってからは感じたことの無い感情だ
酷く長い間欠落していた感情で、この胸の痛みがどの感情なのかは定かでは無いが、フロンちゃんはいつもこんな感情を抱いていたのだろうか。自分の為だけにじゃなく、他人の為にも。だとしたら、私は天使なんかにはなりたくは無い
私がこんな気持ちを抱く相手は、自分やラハールだけで充分だ。他人に気を使う余裕なんてありはしない
まぁ、今ラハールを想うこの感情は邪魔くさい物意外の何物でも無いのだけれど。
でも、まだ、この感情は忘れたくは無い。悪魔らしからぬ、このどこか愛おしい感情を
邪魔はしない、いつも通りに接すれば良いさ。それが無理なら、家出をしよう。
確かアクターレは別魔界に居るらしいし、そっちに行くのも良いかもしれない
『ぶらり一人旅なんてのも良いかもなぁ…』
「オレさまは勝手に出ていくのを許した覚えは無いぞ」
いきなり声が聞こえ、霧の中からぼんやりとラハールの姿が見える。気付かないなんて一生の不覚だ
『ラハールがこんな時間に起きてるなんて珍しいね?』
「ふん、オレさまだって起きたくて起きた訳では……って、そうじゃない!旅とはどういう事だ!!」
『いつかの話だよ、行くとは決まってないし』
こうして話していてもいつも通りに振る舞えるなんて私は本当に根っからの悪魔体質なんだろうか。そういえば、冷めてると言われた事があったかも知れない。何千年と前なので曖昧だが
「いつか、でもオレさまは許さん!お前はオレさまの家来…な、のだからな!」
『はいはい』
こういうのは昔から変わらない。そうだ、それで良い
『そういえば、何か私に用があったの?』
「……貴様は」
『…』
「貴様はそうやって飄々としながらオレさまから離れていくのか?」
『ラハール?』
一体どうしたと言うのか。まさか、さっきの私の発言を気にしてる?いや、そんな筈は、ない。だってラハールは私の事なんてただの家来にすぎなくて…、
ラハールの青い髪と赤いマフラーが、風に揺れた
「愛マニアに影響された訳ではないが、オレさまは名前を“愛”してるらしい」
『、』
「好きだ、名前。どこにも行くな」
ベンチに座っているせいで私より背の高いラハールが私を抱き締め、剥き出しの胸板に顔を押さえつけられる。外気に触れていたそこは、少し冷えていたけど心地よくて、少し心臓の音が早かった
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ラハールとフロンちゃんを違うと感じたのはフロンちゃんが無理矢理ラハールからヒロインちゃんへの気持ち聞き出してアドバイスしたりとかしてそんな感じ