(学パロ)
ガヤガヤガヤ、煩い店内でヴァルバトーゼの白くて長い指が一つの数式を指差した。
「良いか、この問題にはこの式を使うのだ。分かったか?」
『いや全く』
「……」
せっかく教えて貰ってるのに悪いけど本当に全く分からない。頭の上にクエスチョンマークだよポカーンだよ。
「…貴様に数式を覚えさせるのは骨がいるようだな」
『本当に…申し訳ないと……思っている…』
私が恥を忍んで挑戦したジャックバウワーのモノマネを、見事にスルーを決め込んでトマトジュースを飲むヴァルバトーゼ。せめて何かリアクションをして。お願いだから!
だけどそんな私の心の中など分からないヴァルバトーゼは、ズズッと最後の一口を音を発てながら吸った。行儀悪いぞアンタ。私もよくするけど
『あ、』
「ん?」
ちらり、ガラスの向こうを見ると衝撃的な物が視界に写った。まるで鈍器で後頭部をガツーン!と殴られたようだ。
なんか胸の辺りがざわざわして落ち着かない。
『見て見てヴァルバトーゼ、あそこ!』
「む、何処だ?」
『ほら、本屋の前のカップル、手、繋いでるよ!!』
しかもそのカップル、隣のクラスの愛ちゃんと、同じクラスの中山君。あの二人、付き合ってるって噂されてたけど、本当だったんだ。
中山君と手を繋いで、恥ずかしそうにほっぺたを染めて笑う愛ちゃんの笑顔は向日葵みたいで、中山君もほっぺたを染めていた。
なんか、なんか、ああいうのって、
『いいなぁ…』
「は、」
『ん?あ、ごめん何でもない。勉強しよっか』
「…」
ノートの上に置いていたシャープペンシルを握ると、その上から白い手にぎゅう、と握られた。何この状況。可笑しくないか?なんで、ヴァルバトーゼが、私の、手を握ってるの。
『あの、』
「なんだ」
『問題が解けません』
「それはいつもの事だろう」
『いやそうなんだけど違うっていうか、あの、その、』
「ハッキリ物を言え」
『じゃあ言うけど、なんで私の手を握ってるの?』
生まれてこの方、パパ以外の異性と手を繋いだ記憶が無い私のほっぺたは、さっきの愛ちゃんと中山君だ。
「あいつらが羨ましいのだろう?」
『そうなんだけどなんか違う。っていうか、付き合ってもいない私たちが手を繋ぐのは変っていうか、』
「ふむ、ならば付き合えばよいのだな?」
『え、』
「付き合おう、名前。ずっと、好きだった」
ちゅ、と私の手に唇が落とされた。
顔が、熱い。キスされたところが熱い。触れ合ってる手が熱い。心臓が、熱い。ちょっと、いくら節電だからってもっと温度下げなさいよ。こんなんじゃ、体中あつくて融けちゃいそうだ