『エミーゼルさん』
「……、名前…」
悪魔も眠る丑三つ時。私とエミーゼルさんはお城の庭にある木の下で会っていた。子供であるエミーゼルさんにはこの時間帯は眠たいはずなのに、毎日無理をして私に会いに来てくれる。今日も、眠い目を擦って会いに来てくれた。
『こんばんは、エミーゼルさん』
「うん……」
『眠たいんでしたら、お屋敷に戻られてくださって良いんですよ?』
「だい、じょうぶだ…」
こくりこくり、と半分船を泳がせながら言われても説得力は無い。この前も、此処で寝てしまったらエミーゼルさんのお父さん、つまりは魔界大統領に2人して怒られてしまった。
「名前は、眠くないのか…?」
瞼を半分閉じている目が私を見据える。
『そうですねぇ、私の種族は夜行性なので。その代わり太陽に滅法弱いのです』
「ふーん、」
木の幹に身体を預け、素っ気ない返事を返すエミーゼルさんに苦笑する。これは完全に寝落ちフラグでは無いか。
『エミーゼルさん、無理しないでお部屋で寝てください』
「んー…」
『……もー』
身体を揺すっても反応はほぼ無しで、顔を覗きこむと瞼は完全に閉じられていて、スースーと規則正しい寝息まで聞こえてきた。
『(また、大統領に怒られちゃいます)』
怒られるのは嫌だけど、気持ち良さそうに寝るエミーゼルさんを起こす気にはなれない。エミーゼルさんが余計眠くなると分かっていて頭を撫でる私は、エミーゼルさんに甘いのかもしれない。