『殿下ぁ〜』
コンコン、と扉を叩く音がしてラハールが返事をする前にガチャリと開かれる。
気の抜けた声がラハールを呼ぶ。
「…返事する前に部屋に入るなと、何度言ったら分かるのだ貴様は!!」
『あ。はい、すいませんー』
今までに幾度となく注意した事。しかし一向にそれが直る気配は無い。今だって、間延びした返事には反省の色が見られない。
無意識のうちに出てしまった溜め息に、ラハールは眉間を押さえる。
「……で、一体なんの用だと言うのだ。くだらん用だったら許さんぞ」
名前にこれ以上言っても無駄だと、話を促す。
『あー、殿下にとってくだらない…?いや、そんな事ないかな…』
「良いからさっさと言え!オレ様は腹が減ってかなわん!」
『ご飯、出来ましたよ』
ダルそうに告げる名前にラハールの目が輝く
「貴様、そういう事は早く言え!」
行くぞ!と赤いマフラーを翻して部屋を出て行くラハールに、名前は相変わらずダルそうに着いていく。
「うむ、やはり名前の料理は美味いな!!プリニーの否ではない!!」
ガツガツと名前が作った料理を食べるラハールに、側にいたプリニーが涙目で「酷いっス〜…」と呟いたのだが気にした様子は無い。
名前はと言うと、無関心でお礼を言うだけだ。
「……」
ガチャンと音をたててナイフとスプーンを置くラハール。これには名前も小首を傾げる
「…おい名前」
『はいー?』
ムニッと両頬を掴まれて驚く名前に、ラハールは不適に笑う
『どーひたんれふか』
上手く言葉を発音出来ない名前にラハールが噴き出す。
「ッハハ!酷い顔だな!!」
『…うるはいれふよ』
自然と眉間に皺が寄る。それを見たラハールは名前の頬をぐにっと上に上げる。
「…お前、少しは笑ったらどうだ?」
真剣な顔をしてそんな事を言うラハールに名前は目を見開く。
『…殿下がそんな事言うなんて、どうしたんです』
離されたほんのり赤い頬をさする
『…フロンさんの影響ですか?』
「あんな愛マニアと一緒にするな!!」
怒鳴るラハールに名前は苦笑する。
『…殿下ー』
「なんだ」
『殿下が言うなら、少しだけ笑ってみますね』
薄く微笑む名前に、ラハールは赤い頬を隠すようにそっぽを向く。
「ふん。オレ様の家来なのだからオレ様の言うことを聞くのは当然だろう」
『はは、そうですね』