クリスマス、という言葉にときめかなくなったのは、何歳からだっただろうか
クリスマス前、というよりは12月よりも前から町並みがピカピカいつもより輝き初めてカップルが多くなりツリーが飾られる。
恋人が居ない私には嫌味でしかなく、不機嫌オーラを全開にしながら街中を歩いたものだ。

しかし今年は、今年からは違う。恋人が出来たとか、そんなものじゃなく、世界が変わった。
まず、もうクリスマスイヴ当日だと言うのにこの家以外はクリスマスの面影も無い。

ふぅ、と生クリームが入ったボールと泡立て器を持って溜め息を吐く。後ろではフェンリッヒがぶつくさと文句を言いながらトッピングの果物を切っている

リビングにはツリーを飾り付けているフーカとデスコ、部屋中の飾り付けをフーカに命令されせっせと走り回るエミーゼル、我が物顔でソファーに座りながら優雅に本を読むヴァルバトーゼ。
アルティナは上司に呼ばれて天界に帰ってしまったが、用事が終わればすぐに来るという。
何かを手伝え、とヴァルバトーゼに文句を言いたいのだが、悪いのは彼ではなく彼の執事、フェンリッヒなのだから怒れない。フェンリッヒの過保護ぶりには困ったものだ、とヴァルバトーゼも言っていた。


『ヴァルバトーゼ!!』


名前を呼ぶと、彼とその執事が私を振り返る。ちゃんと集中しないと手を切るぞ、と心の中で注意をしてヴァルバトーゼに手招きをする


「どうした」

『ほら、料理出来たから机に並べてくれない?』

「あぁ、別に…」

「ダメです閣下!!」


予想通りというかなんというか、相変わらずなフェンリッヒに苦笑いをする


「いや、フェンリッヒ。俺もこれぐらいは手伝おう」

「で、ですが閣下…」

『もー、フェンリッヒは心配しすぎなのよ。ヴァルバトーゼだって子供じゃ無いんだから』


尚も睨んでくるフェンリッヒに諦めてボールと泡立て器を机に置く。


『じゃあ私はヴァルバトーゼを手伝うから、それなら仕事も減るし良いでしょ?』


フェンリッヒが口を開ける前にヴァルバトーゼにターキーを押し付け、私はサラダを持ってリビングへと足を踏み入れる


「フェンリッヒが悪いな」

『いや、別に大丈夫よ』

「しかし……」

『まぁ、そんだけアンタが大切なのよ、アイツは』


だと良いがな、と笑うヴァルバトーゼ。そうに決まってるだろう、と思ったが変なお節介は迷惑だろう


『あ、あとでプレゼント渡すからアルティナが来るまで帰らないでよね』

「…プレゼント?クリスマスという行事はプレゼントを他人にやるのか?」

『まぁ、本当は誕生日だしね、確か』

「ふむ……だがしかし俺とフェンリッヒはプレゼントなど用意してないぞ」


そんなの知ってるよ、という言葉を飲み込んでそれは残念、と肩を竦めておいた。あぁ、生クリームが溶けてしまう。と踵を返せば腕を掴まれる


『、なにヴァル……』

「メリークリスマス、だったか」

してやったり、と笑うヴァルバトーゼに頭が上手く働かない。いつの間に付いたのか私の口元に付いた生クリームをヴァルバトーゼが舐めとる。もう一度、私のそれとヴァルバトーゼの唇がくっついた










**********
元拍手ログ




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -