∵後悔まみれ




「キャンキャンうるせぇぞお!」

「どう考えてもアンタの方がうるさいよね!」


もしも一度だけ過去に戻れるとして、俺が彼女にこの気持ちを伝えていたら何か変わっていたんだろうか。彼女は俺のことを好きになってくれたんだろうか。こんな未練がましいことを思ってしまうほど俺は後悔している。"あのときああしていれば、こうしていれば"そんなこと思っても、もうすべて手遅れなのには変わりないはずなのに。アイツの隣で笑っている彼女を見ているとそんな思いは跡を絶たないんだ。


「もし俺が今好きって言ったらどうする?」


冗談ぽくそう尋ねたら彼女は少し考える様子を見せてから困ったように柔らかく笑った。きっと彼女は俺の質問を本気だなんて疑いもしていないんだろう。どうかこんな卑怯な俺に気付かないで。「あたしさ、」と少し恥ずかしそうに頬を赤らめる彼女が心底愛しく思えた。手を伸ばせば簡単に抱きしめられる距離なのに、絶対に触れることができない。


「昔ディーノくんのこと好きだったんだ」


"聞くんじゃなかった"という後悔と"彼女は俺のことが好きだった"という事実に対する喜びが俺の中で複雑に絡み合っていた。でもきっと、いや確実に前者の方が大きいに違いない。彼女のまるで思い出話でもするかのような雰囲気にどうしようもなく胸が締め付けられた。彼女から発せられる言葉は全部、過去形。当たり前だ、彼女にとってはそれは"過去"のことでしかないのだから。


「あたしそろそろ行くね」


もう一度微笑んで彼女は立ち上がり俺に背を向けた。きっと今引き止めないと俺はこの先今以上に後悔することになる。言わなければ、伝えなければ、そんな焦燥感が俺を突き動かせ、気付いたら彼女の腕を掴んでいた。情けないけれど俺の腕は震えている。彼女にそれを悟られていないことを祈りながら俺はゆっくりその言葉を、昔言えなかった伝えたかった言葉を紡いだ。


「……好きだ、」


絞り出すように出した俺の声は弱々しくて掠れていた。きっと俺は今どうしようもないくらい見っとも無い顔をしているだろう。彼女は僅かに驚いた様子で俺を見つめるとまた、俺の好きな柔らかい笑顔を見せた。


「あたしも、好きだよ」


するり、と俺の手から抜けていく彼女の腕。離れていく彼女の背中を見つめ、思わず自嘲のような乾いた笑みが零れた。心の真ん中がすっぽり抜けたような感覚。知ってるんだ、彼女の"好き"と俺のそれはまったく違うことぐらい。わかってるんだ、彼女の目には俺なんてもうまったく映ってないことぐらい。今更こんな告白しても意味なんてないことぐらいわかっていたはずなのに。本当に俺は大馬鹿だ。


「………さよなら、」


後悔に埋もれた俺の恋心。



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跳ね馬で切愛書いても
らっちゃいました!
ディーノかっこよす!
舞羽のご意見を聞いて
いただきありがとうご
ざいます。おまけに相
互してくださり感謝。
嬉し過ぎて、ずっと
ジャンプします←

これかもよろしくお願
いします。
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