∵いろめきだつ


野球部のマネージャーって、たまに、歪んだ性格をお持ちの方々に

「男目当てでマネージャーとかきついよね〜。」

などと言われる。

いや、ただ純粋に野球が好きなんですが。ずっと野球やってきたけど、女の子の野球部がないんだよ。
ハンドボール部もない。

そしたら、せめてサポート回りたいだろうが!!!

だいたい大変なんだよ。
洗濯したり、ドリンク作ったり、スコアつけたり!

男に色目使ってる暇なんかねぇよ。

「明野!」

『あ、山本。』

山本は時間の無い中で私が必死に色目使ってきた野球部員、そしてその野球部のエースだ。
は?さっきの前振り?

うるせえ、こちとら乙女なんだよ。色目くらい使うわ、ボケ。

「明野?」

『あっ、いやいや。
えーっと……何か用?部活のこと?』

「あ、そうだ。
明日の休日なんか用あるか?」

ドキっとする。
まっ、まさか、デート!?

『うっ、うん。
なんもない!!』

一気に上がる私のテンション。
良かった!、と山本は笑った。
私はキュンと胸を弾ませた。

「明日な、水野の練習につき合うんだけどさ手伝ってくんね?」

自然にガクンと床に崩れる。
私のテンションもガクンと下がった。

「ん?
どうした?」

『い、いや……。』

私はよろよろと立ち上がりスカートの汚れを払った。

『……良いよ、手伝うよ。
手伝いってか普段のマネの仕事してれば良いんでしょ?』

山本は「おう、頼むなー」、と言いながら去って行った。私は軽く落ち込んだ。


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次の日私は並中の校庭にいた。
何故か沢田や小里君も来ている。

しかも、誰だ、あの可愛いポニーテールのおなごは。

「三浦ハルです!!」

と頭を下げる三浦さん。どういう関係か聞きたくて山本の方をチラリと見ると心なしか三浦さんを熱っぽい目でみているような………。
おいおい、まじかよ、私がお前に色目使った時間返せ。
しかも、私のいる意味なくね?

『………。』

悲しくなる。
いや、山本には幸せになってもらいたいけどね………。
因みに三浦さんが呼ばれた理由は水野君のあがり症を直すためらしい。


「ウチの綱吉さんがお世話になってます………」

と沢田に頬を染め寄り添う三浦さんを見て私は慌てて山本を見た。
嫌だ、分かんないけど山本悲しそう!?

『みみみ、み、三浦さん!!
沢田から離れてください!!さ、沢田は私とドリンク作らなきゃいけないんです。
ほら、小里君も行くよ!!

水野君は……、休憩しててね!

あの、三浦さん………。』

「は、はひ?
何でしょう???」

『山本を……お願いします。』

いや、まじ色んな意味で。

私は山本に親指を立ててから小里君と沢田を引きずってドリンクを作りに部室へ向かった。
ドリンクをなるべく時間かけて作り、グラウンドに戻る。視界に入った楽しそうに談笑する山本と三浦さん。

私は更に悲しくなり、また惨めな気持ちになった。
いや、口では山本が幸せになってくれればなんて言っちゃうけどね、んなわきゃない。私だって幸せになりたい。

私って本当にがめつい女だ。それに比べて三浦さんの純粋な笑顔。今時敬語で会話する女子なんか初めて見たわ。清楚だ。

『……ごめん、沢田と小里君。
ドリンク運んどいて。』

と、2人に頼み私は部室に引き返した。だって、あれ以上あの場にいたら自分の浅ましさとかその他もろもろを三浦さんと比べてしまう。今よりテンションは下げられない。
だってみんな楽しそうなのにKYなことできない。

『さて、部室の掃除でもするか。もうついでに私の心も掃除したい。』

部室の扉を開けるといつもの汚い景色が広がって思わず苦笑。
さて、始めますか。

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片付けが終わったころには、もう外は暗くなっていた。

『あ、やべ。』

みんなを探しに急いでグラウンドに向かったが誰もいなかった。

『………ですよねー。』

私は泣きそうになった。山本は私が居なくなっても気がつかないで帰っちゃったわけか、もしくは気にならなくて帰ったか。

どっちにしても泣くしかない。

『もう色目はやめよう。』

今日三浦さんという山本の好きな人(仮)に出会ってみて、私の浅ましさがはっきり分かった。自分の存在が嫌になる。

『なんかなぁ………。』

ぼんやりとグラウンドを眺めていると肩をポンポンと叩かれた。
振り向くとほっぺに突き刺さる指。

「引っかかったのなー。」

山本………、おめっ、

『……待っててくれたんだ。』

「おう!」

私は曖昧に笑うしかなかった。喜んで良いのか分からない。

『三浦さん、可愛い人だったね……。』

「ん?」

『私が居なくても平気そうだったし、なんか逆に邪魔しちゃったみたい。
次からは三浦さんに来てもらいなよ。

私がいてもいなくても、三浦さんがいれば大丈夫でしょ?』

「……。」

胸が締め付けられる。悔しい。こんなことしか言えない自分が。
こんなこと言いたいわけじゃないのに。

『……ごめん、変なこと言って。
帰ろっか。』

「俺な、お前以外のマネージャーには声かけてないのな。
この意味分かるか?」

『…私が一番使いやすかったから?』

私の返事に山本は、眉を寄せて笑った。

「ははっ、お前は確かに一番仕事が早いのな!
でも、」

山本の表情が真剣になる。

「それだけじゃ無いんだぜ?」

『…………、』

「明野はぶっちゃけ、野球部の奴にモテるのな、
やっぱり盗られたくないだろ、好きな女は。」

『え、おい、待て。』

「俺も必死なのな、明野に見てもらおうと。
やっぱり俺みたいな浅ましい奴嫌か?」

『まじかよ………。』

私はいきなりのことに嬉涙も出ない。
口があくだけだ。

「ま、とりあえず帰ろうぜ。」

山本は私の手を握り、校門へと歩いて行く。私も若干引っ張っられながらそれに続く。

『好き。』

山本に聞こえないように言ったつもりなのにしっかり届いてしまった。

「へへっ。」

山本は嬉しそうに笑って、「俺も!」と言ってくれた。
良かった、山本に色目使ってきて。


なんてまた、浅ましいことを思ってしまった。
でも、その結果がこうなんだからこの思考回路も捨てたもんじゃないでしょ?
私は山本の手をしっかり握りしめた。



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本気でハルに嫉妬ぶち
かまして携帯握りしめ
た馬鹿です←
ごめんなさい。ほんっ
と涙出そうになってし
まいました。
6700Hitおめでとうご
ざいます!これからも
訪問させていただき
ますね!
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