始まって2時間、宴の盛り上がりは最高潮。食べる食べる、そりゃあこんなにも男が集まれば食べる。酒も入って、周りのテンションは可笑しいほどに上がっている中、おれは、アイツを探していた。



さっきまで、確かに、おれの隣にいたよな?



甲板を見渡す。山積みの皿を背景に、未だ尚、骨付き肉にがっつく奴もいれば、ウイスキーを静かに飲んでるやつもいる。大声で歌ってるやつもいる。




あ、



「お前は、早く、悪魔の実の使いこなせねェとな!」

「うう、それはそうなんですけど…」

「お前のって、なかなか強ェしな〜」

「がんばりま、わわわっ」



見つけたと思ったら、こんなところで、なに、野郎に酌してんだ。笑顔撒き散らしやがって。クソ…ムカつくけど可愛いじゃねェか。けど、ムカつく。


談笑中、おなまえの腕を掴んで席を立たせ、歩き出す。驚いた彼女はちょ、ちょっと!エース?!なんて混乱してるけどおれは知らん振り。おいおい、連れてってこれからなにすんだー?なんていう周りの冷やかしも無視。










騒ぎを抜けて、見張り台に着いた。そんなに飲んではないが、酔いを冷ますには丁度心地好い風が吹いている。手を離し、彼女に背を向けたまま、そこに座る。隣へ座るように、ポンポン、と示した。



「来いよ、ほら」

「…し、失礼します」


おなまえが右手に持っているのは、さっきの男に酌すはずだった酒の瓶。中身はというと、ほとんど減っていない。開けたばかりだったのか。



海風に髪が靡いて、煩わしそうに耳にかける仕草が妙に大人びている。いつもは可愛いくせに、不意に綺麗だよなァとしみじみ思う。しかも、その"不意"も、まさに良い"不意"で。



「どうしたの?」



目が合ったままなのに何も言わない無表情のおれを不思議に思ったのか、その大人びた柔らかい笑みをおれに向ける。





…やっぱりおれは、こいつのことが好きだ。



「その酒、なんで持ったままなんだよ」

「開けたばっかりだったし、これ、高そうだから勿体無くて」



確かに、あのとき瓶から手を離していれば、この酒の瓶は落ち、瓶は割れ、酒は床にぶちまけられていただろう。



「その酒、美味いのか?」

「分かんない。わたしは飲んでないから」

「飲んで教えてくれよ」

「? いいけど…。あ、お行儀悪くてごめんね」

「構わねェ」




飲ませて何かしようとかは考えていないし、ただ少し酔った姿が見たいと思っただけ。彼女はラッパ飲みすることに抵抗があったらしく、おれに一言謝ってから、酒を口にした。そんで、少し飲んだあと、おれに笑う。


「うん、美味しいよ」

「そうかよ」



「あっ」





その手中から酒の瓶を奪って、口に付ける。ゴクリゴクリ、と飲んだ。うん、いつものとは違う気がするな。無駄にアルコールが強いだけの酒とは違う。

腕で口を擦ると、目の前には赤くなる頬があって、それは明らかに酒のせいではなくて。



「か、間接きす…!」




間接キスどころか、そこから繋がる一番最後まで全てを網羅してるのに、なんで間接キスごときでこうなるんだよ。クソ、可愛いな!ウブというかなんというか、



「何を今さら」


「だって…エースとすることは、なんでも意識してしまうし、」




おれのツボをこんなによく知ってる女なんて他にいない。いるはずない。




「嬉しいから」




恥ずかしそうに顔を近付け、おれの頬に、リップ音つきの軽くキス。



「クソ…!」

「わっ!」


足を伸ばして座るおなまえの太ももに、頭を預け、ハットで顔を隠して寝転ぶ。膝枕だ。ちょっと、エース!って焦ったように言うけど、しばらくすると諦めて、おれの髪を触り始めた。いつの間にか眠っていて、起きたとき、目の前に可愛すぎる寝顔があって盛りそうになったが、さすがにやめた。






















「いんだけどさ、構わねェけどさ…なんでアイツには毛布がかけられてて、裸のおれには何も無しなんだ?いや、良いんだけどさ、それで良かったんだけど、何故おれに上着のひとつでもかけてやろうという気は起こらなかったんだ?誰だよ!…え、オヤジ?あ、そ、そりゃ、仕方ねェ、よ、な…」





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