「我慢できねえ」



おれは今、欲情している。








……エロいことを考えている。








船員同士の喧嘩を静めて、部屋に帰ってきたおれを待ち構えていたのは、彼女の眠る姿。


……なに考えてんだ。どんな敵襲よりもこっちのほうが何倍も厄介に決まっている。





外の騒ぎに気付くまで、おなまえはこの部屋で本を読んでいた。おれはぼーっとしていた。勿論、心地好い沈黙が流れ、同じ空間を共有していただけ。

怒号が聞こえてすぐ、絶対にここから出るな、という言葉を残し、甲板に急いだ。

結果、船員同士の喧嘩だったわけだが、すぐに落ち着き、各々、部屋へ戻った。



そして、冒頭に戻る。








おなまえはベッドに座って本を読んでいたのに、今は小さくなって寝ている。つーか、こんなうるせえ中で寝てたってどんな神経してんだ。



ああ、もうなんでもいいが、とりあえずエロい。

ぎゅっと小さく丸まって寝てるわけだが、それはもう、白いスカートから覗く白い太ももがだな、この上なくいやらしいわけだ。この際、キャラなんてどうでもいい。触りたい、いや、触ってやろう。


ベッドに座り、すう、と太ももに手を添わせると弾力。…少し太ったか。でも、女は多少は柔らかくねェとな。相変わらず、規則正しい寝息が聞こえてきて、無防備な彼女にため息が出る。他のヤツに見せたりしてねェだろうな…






何度体を重ねても、この体に触れることには、毎回、少し緊張する。さすがのこのおれでも。




「寝込みを襲うのは、初めてか…?」



いろいろなことをしてきたが、このシチュエーションは初めてだ。思えば、おれのわがまま聞いて、色々させてくれたな。



朝食だと呼びに来てくれたおなまえを朝から組み敷いたこともあり、メイドやナースコスもあるし、砂浜の大きな岩の陰に隠れて水着(もちろん黒のビキニだ)でしたこともある。おっと、この思い出たちについてはまた今度語ろう。

それにしてもいい思い出だ。





「んん、…エース?」




思い出に浸っていると、おなまえが起きてしまったらしい。まあいい。続けるつもりだ。





「この騒ぎの中、寝るか?普通」

「うう、ごっごめん!!寝るつもりなかったんだけど、怖くって、」

「で、小さくなって寝てたわけか」

「…うん…って、なんで太もも触ってんの!!」





柔らかい手がおれの手を払う。が、その手を掴んで、手首の辺りに吸い付く。なにしてんの!って声がするけど、気にしない。で、唇を離すと赤い印。




あっという間に押し倒して、下には頬を赤くしたおなまえ。


「ま、まだ、おひるだよ…」

「そんなのおれとお前に関係あるか?」

「ある!」

「ねェ」

可愛い声で、やめろおー!ばかばか!エースのばか!変態!とジタバタするのをキスひとつで抑え込むおれ。すげー、おれ。もちろん、威勢の良い彼女はこんなもんじゃ黙らない。



「え、なんで今、盛ってんの?!」

「お前が寝てるからだろうが」

「うう…」

「おれの勝ち。諦めろ」






どうせいつも、最後におねだりしてくるのはお前だろ?






変態!変態!エロ!スケベ!最低!野獣!エロ!変態!メラメラ!……と喚くのを無視して、髪を撫でる。大丈夫だ、疲れてはいないがなんとなく休みたい気分だからそれなりに手加減はする。ってか、最後のは、ただのおれの能力じゃね?





「ん…やっ…」





耳を舐めると、すっかり大人しくなったその姿に自然と口端が上がる。紅潮した頬を両手で挟み、唇を重ねる。何度も何度も角度を変える。薄く目を開けてみると、眉間にシワを寄せて苦しそうなおなまえが見えた。なのに、こんなに、欲しがるように求めてくる。


華奢な腕がおれの首に回され、首の後ろで組まれる、そんな感触がした瞬間。







「すすすすすすすいませんでした!!!!!」





閉め忘れて開きっぱなしだったドアから視線を感じて、そっちに向くと、二人の船員の赤くなった顔が覗いていた。



そして、下を見ると、ドアの方を向いて赤かった顔をさらに赤くした涙目の彼女がいて、



「エースのばかあああああ!!!」



無論、おなまえがおれを突き飛ばし、部屋からから飛び出して行ったことと、その船員二人に極めて厳粛な制裁を与えたことは言うまでもない。




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